愛しき面倒な者へ

希紫瑠音

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万と一

触れて、心を温めて(2)

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 キスでたったのは自分だけではない。

「そうか、万丈のもたっているのか」

 同じように感じてくれたことが嬉しく、そっとそこへ手を伸ばして触れた。

「ん、一ノ瀬さん、直に触ってほしいです」

 とズボンと下着を下ろして下半身を晒した。

 自分ので見慣れているはずなのに、万丈のだからなのか特別なものに見えてくる。

 ごくっと喉が鳴る。それに触れると熱くかたくなっていた。

「すごいな」

 指で確かめるように先っぽから裏を撫で、根へ向かい二つのうちの一つをツンとつく。

「ふ、一ノ瀬さん、俺も触れたいです」
「そうだったな」

 自分のを見せるのは恥ずかしいが、万丈は見せてくれたし触らせてくれた。これでは平等ではない。

 ズボンと下着を下ろして晒すと万丈の視線がそこへと向けられる。

 その途端、とろりと先から流れ落ちる。

「なっ」
「俺に見られて、喜んでくれたんでしょうかね」
「これは、すまない、今拭くから」

 はずかしい。向けられた視線に興奮するなんて。

「濡れていた方が、お互いに扱きやすいですよ」

 腕をつかみ引っ張られてバランスを崩した一ノ瀬は万丈の胸へと飛び込むようなかたちになる。

「俺の上にまたがってください」

 互いのものが触れる。

「首に腕を回して、そうです」

 目がちかちかとする。

「ふ、あっ、こんな、気持ちいいの、しらない」

 自分で処理をすることはある。高ぶる感情も、熱も、欲も知っている、はずだった。

 これは違う。体を貫かれて倒れてしまいそうだ。

「そんな言葉で煽らないでくださいよ」

 シャツの上から乳首をかまれる。

「万丈っ」
「ツンとして可愛かったので」

 シャツ越しに突起したものが主張をしていた。

「これは」

 まさかここまでたってしまうなんて。

「弄られたいといっていますね」

 そんなことはいっていないのに、体はそれを求めている。

「ん、ばんじょうっ」

 万丈に吸い付かれてびくんと体が揺れ、たまった欲は外へとはきだされた。








 数日後。

 可愛いお皿と可愛いぬいぐるみが万丈の家につい最近贈られてきた。

 過保護な従兄弟と友達からの贈り物だ。

「ばれているんですね、俺たちのこと」
「すまんっ、お前の住所を知るために十和田を頼ったからな」

 聞かれると思っていたので素直に答えてしまったわけだ。

「そうだったんですね」

 その時に十和田から聞かされたのだが、飲み会の時に酔った自分を万丈に送らせたのは、自分たち以外の友達を作らせようとしたためだという。

 万丈なら大丈夫。そう思っていたらしく、まぁ、実際、その通りになった。

 ただ恋人同士になるとは思っていなかったらしく、流石の十和田も驚いていた。

「十和田は人を見る目がある。あれがなかったら万丈と仲良くなることはなかっただろう」
「そうですね。上司と部下という関係のままでした。一ノ瀬さんという可愛くて素敵な人と恋人同士になれたのは十和田さんのおかげになりますね」
「そう考えると癪だが、あいつが喜ぶのは私たちが幸せでいることだ」

 万丈の手に触れて握りしめる。

「はぁぁ、素敵な従兄弟さんとお友達をお持ちですよね。そんなふうに思ってくれるのですから」
「過保護だけどな。これからは万丈もその仲間入りだぞ。百と十和田のセットはすごいからな。覚悟しておけ。円は可愛いぞ」
「はい。これから楽しみにしています」

 万丈と一緒なら緊張して眉間にしわが寄ることも減るだろう。たくさんのモノを貰い心が満ちる。

 肩に頭を寄せれば万丈が小さく笑い頭を傾けた。



【万と一・了】
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