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プロローグ

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 人間誰しも器に伴わない自信を持つときはある。
 カズミ・スミスのその時は十歳の時、『覚醒の儀』と呼ばれる儀式に参加した時であった。


「カズミ・スミス、君の適正属性は……。なんと四属性すべてじゃ!!」
 儀式を執り行うエルドランド教の司祭が目を丸くしてそう叫ぶ、覚醒の儀それは己の魔力を知る儀式。魔法とは、この世界で広く使われる力で、己の中にある魔力を糧に超常的な力を行使する技術である。
 魔力自体は誰しも持っており、学べば簡易的な魔法も使える。その中でも魔力を使う才能に長けた者が『魔法師』と呼ばれそれを使う職に就く資格を持つことになる。魔法の才を持たない者も魔力を魔道具と呼ばれるものに与えることで魔法と似たことができ、魔道具は生活する者の助けとなり広く普及している。


 そんな、技術の才能を俺は持っている、それも普通の人間なら一つ、二つ持っていれば才能ありと呼ばれる属性を四つ、人間が使うことができるという四属性すべての適性があるのだからまさに『神童』と呼ばれる存在であった。
 周囲の大人たちは騒めき、周囲に座る同世代はそんな大人たちを見て不安になる。
 俺はその光景を肌に感じ、自然と胸を張り、今思えば自分には過ぎた自信を持つことになった。しかしそんな高く伸び切った鼻は数日と持たず折られることになった。






 確かに、俺は四属性才能を持っていたが、俺には致命的な才能がなかった。
 魔法を行使するとき必須になる魔力を扱う才能、それが俺にはなかった。
 類稀な適正属性と豊富な魔力を俺は持っていた。しかし俺は魔力を体から引き出す能力が魔法を学ぶ誰よりもなかった。巨大なタンクも持っていてもついてるホースが細ければ効率よく使うことができない、ましては今後学び使うであろう高位魔法は大量の魔力を引き出しそれを糧に使うことになる。杖を使えば少しはマシになるらしいが失った時のリスクや杖を作る職人も少なく後継者もいなく高額なためその道も選ぶことができない、『神童』は瞬く間に『凡人』になった、そして魔法塾を卒業する二年間で中級魔法を使う人間だ出る中俺は四属性の初級魔法をやっと使うことが出来るくらいにしかならなかった。


 しかし、三年後俺は国の名門ガルラ二ュール魔法学校に入学することになる。




 魔法と機械が交わるこの世界で俺達は人生で最も濃く最も熱い四年間を過ごし、世界に深い爪痕を残すことになる。

 欠けた才能を持つものが集まり支え合い新たな《物語》が生まれた。



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