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第7話 五月編2 恋愛相談なんて無理だ!
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ゴールデンウィーク。
それは、4月からの新生活で慣れない環境に奮闘し心が荒んでいるところに射す一筋の希望の光である。なんと神々しい。しかし、天瀬紬にとってはそれでも不満だった。
『なにがゴールデンウィークだ、なにがゴールデンだ。ただの金メッキじゃねえか』
紬がそうLINEする相手は、紬の親友、糸織奏太である。
紬はこう続ける。
『どうした、天瀬』
『なんで5月1日に授業あるんだよ、意味がわからん』
『あー。サボっちゃった?笑』
ちくしょう。なにが?笑、だ。
『奏太、もう僕やる気無くした…』
『たった1回なんだからいいじゃん。それにこれを機にサボり始めたらもうずっと講義いかなくなるぞ、お前』
『そういうもんかなあ』
『そういうもんだ』
『まあ、天瀬は単位落とすなよ』
紬が奏太に連絡したのは、なにも講義をブッチしたことを報告するためだけではない。紬は今年の春ほど、多くの人の出会いや大きな環境の変化を経験したことがなかったのだ。だからこそ正直内心戸惑っていて、身の回りのモヤモヤを信頼できる人に話さずにはいられない。自力で解決するにはあまりにも紬は受動的な人間であり、判断を他人にあやかろうとしているのだ。今までそうやって生きてきた。
つまるところ、今日紬が奏太に連絡した目的は、相談とかボーイズトークとかそのようなものである。そうであれば、早速話を切り出そう。
『僕が単位なんて落とすわけないだろう。学費の無駄遣いだ。
それより、奏太。ちょっと話があるんだが』
『ん?珍しいね。なんだい』
『ああ。なんというか、奏太は彼女できた?』
紬は話の切り出し方が下手くそである。
『は?いきなりどした?』
『なんか、環境いきなり変わりすぎて戸惑うってか。今までこんなに』
『それは天瀬がインカレサークルに入っているから女子に出会うだけだ。だいたいうちらの学科の男女比率わかって言ってるのか』
インカレサークルとは、インターカレッジサークルの略で、複数の大学を拠点として人が集まっているサークルのことである。紬の通う大学の場合、女子が圧倒的に少なく単独では男女混声合唱団は成立しない。混声合唱をしようと思ったら、所縁のある女子大と協力しないと成立しないのだ。他の大学、また他の分野のサークルでも同様の事情によるインカレサークルがある。
また学科にもよるが、紬や奏太が通っている学科は女子が多いクラスで男女比が9対1である。生物学的にあまりにおかしく、もはや恋愛競争が発生し得ない。
『言われてみればな』
『ん~?あまがせく~ん、なんかあった~?気になる人でもできた~?ん~?』
話を振った自分も悪いけど、うぜえ。
しかしせっかく大学生になったもの、恋愛をしたい、青春をしたいという気持ちは本当に持っているが、特定の誰かを気になっている段階には至ってはいない。
『いいや、まだだよ』
『まだ、ね』
『ほっとけ』
『いいのか~そんな態度で。もう聞いてあげないぞ~』
このように、奏太は紬の扱いに慣れているのだ。もしこいつが恋愛対象の性別であったら、悔しいが惚れていただろう。
仕方ない、ここは素直に従っておこう。紬は謝罪のLINEを入れた。
『それは困る。糸織さま、すみませんでした』
『わかればよろしい。で、天瀬さま、続きは?』
真似しやがって。
『まあ、知り合った人で、もしかしたらもっと親密になるかもしれない人がいるかもしれないとなるとドキドキしないこともない』
『ふぅ~ん。で。誰?』
『は?』
『誰にドキドキしてんの』
『だからまだ決まってないって』
『まあいい。今はそういうことにしてやる。天瀬のことだ、どうせ同じクラスかサークルの人だろ。仲良くなったら話聞かせてな』
『君ねえ…』
『あ、デートプラン組んでやるよ』
『だからまだ決まったわけじゃないって』
『そうか。でも早いうちに決めとけよ。優柔不断にフラフラ浮ついていると痛い目にあうからな』
『まあ、その時になったらね』
『ああ、楽しみにしてるぜ』
『そっちもそういう話があったらいつでもな』
『まあ、その時になったらな。じゃあまたな、楽しめよ』
『そちらこそ。おやすみ』
既読をつけ、糸織奏太はスマホを置いた。久々に親友と長い連絡をとったのだ、楽しかった。しかも、紬はどうやら恋をしている、もしくはそれに準ずる青春生活を謳歌しているらしい。なんだよ、羨ましい。
しかし、奏太はそれどころではない。
(悪いがお前に、今恋愛を成就させるわけにはいかないんだ…)
親友である紬に隠し事をしていることに胸が痛くなるが、仕方がないのだ。奏太は紬にいつか真実を告白しなければならないが、今はその時ではないと判断した。
奏太はスマホを再び手に取り、今度は紬とは別の人と連絡を取り始めた。連絡相手は、鈴田雪穂。
それは、4月からの新生活で慣れない環境に奮闘し心が荒んでいるところに射す一筋の希望の光である。なんと神々しい。しかし、天瀬紬にとってはそれでも不満だった。
『なにがゴールデンウィークだ、なにがゴールデンだ。ただの金メッキじゃねえか』
紬がそうLINEする相手は、紬の親友、糸織奏太である。
紬はこう続ける。
『どうした、天瀬』
『なんで5月1日に授業あるんだよ、意味がわからん』
『あー。サボっちゃった?笑』
ちくしょう。なにが?笑、だ。
『奏太、もう僕やる気無くした…』
『たった1回なんだからいいじゃん。それにこれを機にサボり始めたらもうずっと講義いかなくなるぞ、お前』
『そういうもんかなあ』
『そういうもんだ』
『まあ、天瀬は単位落とすなよ』
紬が奏太に連絡したのは、なにも講義をブッチしたことを報告するためだけではない。紬は今年の春ほど、多くの人の出会いや大きな環境の変化を経験したことがなかったのだ。だからこそ正直内心戸惑っていて、身の回りのモヤモヤを信頼できる人に話さずにはいられない。自力で解決するにはあまりにも紬は受動的な人間であり、判断を他人にあやかろうとしているのだ。今までそうやって生きてきた。
つまるところ、今日紬が奏太に連絡した目的は、相談とかボーイズトークとかそのようなものである。そうであれば、早速話を切り出そう。
『僕が単位なんて落とすわけないだろう。学費の無駄遣いだ。
それより、奏太。ちょっと話があるんだが』
『ん?珍しいね。なんだい』
『ああ。なんというか、奏太は彼女できた?』
紬は話の切り出し方が下手くそである。
『は?いきなりどした?』
『なんか、環境いきなり変わりすぎて戸惑うってか。今までこんなに』
『それは天瀬がインカレサークルに入っているから女子に出会うだけだ。だいたいうちらの学科の男女比率わかって言ってるのか』
インカレサークルとは、インターカレッジサークルの略で、複数の大学を拠点として人が集まっているサークルのことである。紬の通う大学の場合、女子が圧倒的に少なく単独では男女混声合唱団は成立しない。混声合唱をしようと思ったら、所縁のある女子大と協力しないと成立しないのだ。他の大学、また他の分野のサークルでも同様の事情によるインカレサークルがある。
また学科にもよるが、紬や奏太が通っている学科は女子が多いクラスで男女比が9対1である。生物学的にあまりにおかしく、もはや恋愛競争が発生し得ない。
『言われてみればな』
『ん~?あまがせく~ん、なんかあった~?気になる人でもできた~?ん~?』
話を振った自分も悪いけど、うぜえ。
しかしせっかく大学生になったもの、恋愛をしたい、青春をしたいという気持ちは本当に持っているが、特定の誰かを気になっている段階には至ってはいない。
『いいや、まだだよ』
『まだ、ね』
『ほっとけ』
『いいのか~そんな態度で。もう聞いてあげないぞ~』
このように、奏太は紬の扱いに慣れているのだ。もしこいつが恋愛対象の性別であったら、悔しいが惚れていただろう。
仕方ない、ここは素直に従っておこう。紬は謝罪のLINEを入れた。
『それは困る。糸織さま、すみませんでした』
『わかればよろしい。で、天瀬さま、続きは?』
真似しやがって。
『まあ、知り合った人で、もしかしたらもっと親密になるかもしれない人がいるかもしれないとなるとドキドキしないこともない』
『ふぅ~ん。で。誰?』
『は?』
『誰にドキドキしてんの』
『だからまだ決まってないって』
『まあいい。今はそういうことにしてやる。天瀬のことだ、どうせ同じクラスかサークルの人だろ。仲良くなったら話聞かせてな』
『君ねえ…』
『あ、デートプラン組んでやるよ』
『だからまだ決まったわけじゃないって』
『そうか。でも早いうちに決めとけよ。優柔不断にフラフラ浮ついていると痛い目にあうからな』
『まあ、その時になったらね』
『ああ、楽しみにしてるぜ』
『そっちもそういう話があったらいつでもな』
『まあ、その時になったらな。じゃあまたな、楽しめよ』
『そちらこそ。おやすみ』
既読をつけ、糸織奏太はスマホを置いた。久々に親友と長い連絡をとったのだ、楽しかった。しかも、紬はどうやら恋をしている、もしくはそれに準ずる青春生活を謳歌しているらしい。なんだよ、羨ましい。
しかし、奏太はそれどころではない。
(悪いがお前に、今恋愛を成就させるわけにはいかないんだ…)
親友である紬に隠し事をしていることに胸が痛くなるが、仕方がないのだ。奏太は紬にいつか真実を告白しなければならないが、今はその時ではないと判断した。
奏太はスマホを再び手に取り、今度は紬とは別の人と連絡を取り始めた。連絡相手は、鈴田雪穂。
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