真実の裏

Zero

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第1章『真実の裏』

#1

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-1話-
取材日:12月24日
インタビュアー:白鷺 新一
インタビュイー:目黒 理
題材:10年前のクリスマスの悲劇


白鷺新一
 「では、当時の状況について教えてください」
目黒理
 「はい。その日は町の廃墟ビルで誕生日会をしていました」
白鷺新一
 「廃墟ビル…ですか?」
目黒理
 「当時の僕たちの秘密基地だったんです」
白鷺新一
 「なるほど、それはどなたの誕生日でしたか?」
目黒理
 「あ、僕のです。7歳の」
白鷺新一
 「となると、小学…」
目黒理
 「1年生です。」
白鷺新一
 「1年生ですか、…もっと詳しく教えてください。」
目黒理
 「途中、知佳はトイレに行くと言い」
白鷺新一
 「そのときに自殺を?」
目黒理
 「彼女は自殺なんかじゃない!」
白鷺新一
 「失礼しました。」
目黒理
 「皆、自殺じゃないと思ってます」
白鷺新一
 「…今、そのときのメンバーは?」
目黒理
 「毎年、その日に集まってます。」
白鷺新一
 「追悼ですか?」
目黒理
 「まぁ、そんな感じです。」
白鷺新一
 「そのメンバーにお会いしたいのですが」
目黒理
 「すみません。それは、できないです。」
白鷺新一
 「…そうですか。今回はインタビューにお付き合いありがとうございました。」
目黒理
 「いえ、」

-自宅-
とあるマンションの一室。
部屋の電気をつけ鞄をソファに置き、すぐにベッドにうつ伏せになった。

目黒理
 「はぁ…疲れたなぁ」

するとスマホの通知音が鳴る。
スーツのポケットからスマホを取り出す

メッセージには、友人の凛斗から
「明日、マンションの屋上な!」
と、一言。

-12月25日(理の誕生日)/マンションの屋上にて-

いつも一緒にいるメンバーと誕生日会をしている。

坂本凛斗
 「ハッピー!バースデー!」
目黒理
 「ありがとな、」
坂本凛斗
 「いやぁ、お前も17歳の仲間入りかぁ」
赤崎貴斗
 「凛斗はまだ小学生じゃない?精神年齢が、」
坂本凛斗
 「なんだと~!」

坂本凛斗…理の友人。普段から子供心を忘れない。
赤崎貴斗…理の友人。普段何を考えてるかわからない。

凛斗と貴斗のじゃれ合いは、いつも癒される。

目黒理
 「里奈たちもありがとね」
浜松里奈
 「あ、うん!おめでとう!」

 照れそうに祝う里奈は俺の幼なじみだ。
 俺は彼女のことが昔から好きである。

坂本凛斗
 「そうだ!今日の夜、肝試ししよ!」

凛斗は突然の提案をしてくる。

目黒理
 「肝試し?小学生かよ、」
坂本凛斗
 「青春の思い出作っとかなきゃ!」
目黒理
 「ったく、仕方ねぇな!」

 凛斗の「やりたい」という気持ちに負け俺は呆れながらも、その提案に乗った。

坂本凛斗
 「やった~!」
 
凛斗は嬉しいことや悲しいことがあるといつも声に出す。
感情的な奴で、俺はいつも彼の機嫌を損ねたくない。

浜松里奈
 「じゃあ!私たちも行く!」
佐倉日向
 「里奈ってお化けとか苦手だよね?」
志賀穂香
 「大丈夫なの?」
浜松里奈
 「う、うん!」
 少し不安になるも里奈は返事をした

佐倉日向
 「じゃあどうやって決める?」
浜松里奈
 「決めるって?」
佐倉日向
 「肝試しと言ったらペア作るのは当然!」

佐倉日向…友達の恋愛の話が大の好物だ

浜松里奈
 「へぇ、そうなんだ。」
志賀穂香
 「里奈っちと理っちはペア確定ね!」
志賀穂香…日向と同じで友達の恋の話が大好きだ

浜松里奈
 「え、なんで?」
志賀穂香
 「だって里奈、」

俺は穂香が里奈の耳元で何か呟くのを気になった

浜松里奈
 「え?なんで分かるの?」
 
 里奈は頬を赤らめ動揺を隠せない

佐倉日向
 「バレバレだよ~!」
志賀穂香
 「理っち~!」

穂香は凛斗たちと話していた俺に声をかけた。

目黒理
 「ん?」
志賀穂香
 「里奈とペアで良いよね~?」
目黒理
 「お前らに任せるよ、」
志賀穂香
 「オッケー!」

 「ねぇ、今日は何時までいるの?」

突然、聞き慣れない女性の声が聞こえた
俺は誰の声かをあまり気にせずに、

目黒理
 「どうする?」
俺は皆に訪ねる。

志賀穂香
 「里奈とペアだって言ったじゃん」
目黒理
 「違う、何時までいるかって話」
坂本凛斗
 「急に話ぶっ飛びすぎだろ、」
赤崎貴斗
 「まさか、早く帰りたいのか?」
目黒理
 「違うよ!誰か聴いたじゃん!」
全員
 「…」
数秒間 沈黙の空気に包まれる

どうやら皆にはその女性の声は聞こえてなかったそうだ。

坂本凛斗
 「何、訳分かんねぇこといってんだよ~」

からかうように凛斗は言う。

目黒理
 「本当に聞こえたんだよ、女子の声で」
坂本凛斗
 「怖いこと言うなよ、」
赤崎貴斗
 「…まさか、な、」

またもや沈黙の空気に包まれる。
おそらく皆は10年前のことを頭にしたと思う。

坂本凛斗
 「さっ、改めて、俺と組みたい人!」
女子
 「…」

 凛斗が盛り上げようとするも空回りする

目黒理
 「誰もいないじゃんか!」

俺はとっさにツッコんでも皆はシーンとしている。


坂本凛斗
 「…じゃあくじ引きで決める?」
佐倉日向
 「そうだね…」

A~Cを2枚ずつ書き、ひとつの箱に入れる
そして、
凛斗→日向→俺→穂香→貴斗→里奈の順に引いた

目黒理
 「俺はAだったよ」
浜松里奈
 「わ、私も!」
 里奈は嬉しそうに同じペアだと発言した

坂本凛斗
 「さすが!愛の力は凄いなぁ!」
目黒理
 「あ?何のことだ?」
坂本凛斗
 「さぁ、俺のペアは?日向か?穂香か?」
浜松里奈
 「…なんかフラグ立ってない?」
佐倉日向
 「私はCだよ~」
志賀穂香
 「やった~!私もC~!」
坂本凛斗
 「え?と言うことは?」
赤崎貴斗
 「僕だね、よろしく!」
坂本凛斗
 「…え~~~~!」

残念がる凛斗は、雰囲気を明るくしてくれた。

浜松里奈
 「見事にフラグ回収したね、」
坂本凛斗
 「なんでコイツなんだよ~」
目黒理
 「そりゃ同じ箱に入れたからね、」

「私のペアは誰?」
また、あの女の声が聞こえた

目黒理
 「誰だ!」

皆は急に俺が大声を出したことに驚いたと思う。

浜松里奈
 「どうしたの?」
目黒理
 「この声って、まさか、」

それはちょうど10年前に遡る

その日は俺の誕生日だった。
メンバーは俺ら6人と神童知佳を含めた全7人
場所は俺らが作った秘密基地、といっても
廃墟のビルだったんだけどね、
あのときは隠れんぼとかしてたかな。


知佳はトイレに行くと言ってそのまま帰ってこなかった。

暫くして警察がやって来て、色々聴かれた。
さらには、皆疑われたがビル付近に住む住民が
知佳が自ら飛び降りるところを見たと証言し、
この出来事は自殺として判断された。

それから毎年この日は6人で集まり、
俺の誕生日会に加え、知佳を追悼している。

そして現在に至る。

目黒理
 「この声は、知佳の声だ」
浜松里奈
 「…知佳はもう死んでるんだよ、」
坂本凛斗
 「その話止めないか、」
目黒理
 「ごめん、」
坂本凛斗
 「ったく気分悪い。…肝試しは中止だ!」

そう言い席を立ち屋上を出ようとする

目黒理
 「おい、どこに行くんだよ、」
坂本凛斗
 「自分の部屋だけど、」

そう言い残し彼は屋上を立ち去った。

目黒理
 「おい、待てって!」
赤崎貴斗
 「無駄だ、その事は凛斗への禁句だ」
目黒理
 「禁句?」
赤崎貴斗
 「覚えてるだろ、凛斗は知佳のこと好きだった」
目黒理
 「確かに、好きな人が死んだら悲しいよな」
赤崎貴斗
 「だから、今はそっとしておけ。」
目黒理
 「そうしたいけど、俺は謝りに行く。」

俺はあいつに謝りたい気持ちでいっぱいだった。

赤崎貴斗
 「1人で行ったら追い返される。俺も行く」
目黒理
 「ありがと、」

-102号室-/坂本凛斗の部屋

ピンポーン
理はチャイムを鳴らす

目黒理
 「凛斗~!話がしたいんだけど~!」

 部屋からは何も聞こえない

赤崎貴斗
 「凛斗~!話聞いてあげてよ~!」

 暫くして部屋のドアが開く

目黒理
 「凛斗?」

 凛斗の様子がおかしく思えた。あの話をしたから、
落ち込んでいるのか、それとも他のことなのか。

坂本凛斗
 「…けて、」

そう言うと、凛斗は涙を溢した。

目黒理
 「え?どうしたんだ?」

 凛斗は突然走り出した。行き先は屋上だ。
 俺と貴斗は急いで追いかける。

-屋上-
目黒理
 「待って、凛斗!」

浜松里奈
 「どうしたの?」

 里奈はこの状況を見て悟ったと思う

目黒理
 「凛を止めて!」

 しかし、もう遅かった。
凛斗は屋上の柵を軽々と飛び越え、
そのまま落下し、重々しい音が脳に響いた。

目黒理
 「なんで、」
浜松里奈
 「これって、知佳の呪いじゃ」
目黒理
 「…え?」
赤崎貴斗
 「何が呪いだ、馬鹿馬鹿しい、」
志賀穂香
 「本当に呪いだったりして、」
赤崎貴斗
 「あのな、呪いには科学的根拠がない!」
志賀穂香
 「藁人形とか占いとか何であるかわかる?」
赤崎貴斗
 「それはただの娯楽に過ぎないだろ、」
志賀穂香
 「違う!都合よくしたいから、」
赤崎貴斗
 「は?何が都合だ、馬鹿馬鹿しい!」

2人は言論し、息が上がってるように思えた

志賀穂香
 「…話が反れてる、一旦冷静になろう」
佐倉日向
 「一旦、救急車呼ぼ、」
目黒理
 「そうだな、携帯、携帯、」

俺は上着やズボンのポケットを探すかま携帯電話はなかった。

目黒理
 「携帯、部屋に置いてきたかも、」
志賀穂香
 「待って、私も、」

どうやら皆、携帯が手元になかったそうだ。

佐倉日向
 「皆、ないって、そんなことある?」
目黒理
 「ちょっと俺、携帯取ってくるわ!」
佐倉日向
 「うん、」

そう言い俺は屋上を出て、部屋に戻るも携帯はなかった。
そのまま戻ろうと思ったが住人の部屋のチャイムを鳴らす

しかし、誰もいない。このマンションには俺たちしか。
それどころか、マンションを出て、とある違和感を持つ。

目黒理
 「なんか、やけに静かだな。」

近所の人も、走る車も、
虫や鳥も、何もいない。

俺たちは一体、世界のどこにいるのだろうか。
ここは普通の世界ではないのかもしれない
何か嫌な予感がすることを悟った。
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