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八話 サイド誠

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サイド誠
僕は、小学生の時、大好きな女の子がいた、初恋と言うには、まだ、幼稚で、色んな事が見えなかった、だから、どんな事からも彼女を守れる、そう、思っていた。
でも、あの時、僕はあの子の頬つたうひとすじの涙を見た。
僕の胸の奥をぎゅっと握り絞められた、と同時にドロドロした何かが湧いてくる。
それを黒板の落書きに叩きつけ、彼女を連れて逃げた。
何にできなかった自分、何も言えなかった自分、何も言ってあげられなかった自分、そんな自分を許せない自分に怒りと落胆が、いり混じる。
それ以来何故か、彼女に声がかけられなかった。
そして、最後に彼女の姿を見たのは、小3の一学期終業式。彼女は、親の都合で夏休み中に転校してしまった。
僕はその後、初めて知った。
心に穴が開くと言う事、それは、もう、決して埋まらないのだろうと言う事、小3の二学期の始業式の日の夜、夕飯も喉を通らず自分の部屋で、頭から布団を被り泣いていた、溢れる涙は、止まる事をやめ、ただ、ひたすらに頬をつたう。
でも、止まらない、悲しみが、悔しさが、苦しさが、彼女の笑顔が、彼女の頬をつたう涙のあとが、僕に重たくのしかかる。
どんなに逃げても追ってくる、何処に隠れても、僕の心にのしかかる。
そんな物を抱えたまま小学校を卒業し、中学に入学した、その時には、あまり人と関わらない自分ができあがっていた、だが、幾人かの友人は、できたが、学校の中だけ、放課後を友に過ごす友は、いなかった。
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