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10:焼肉奉行

Question

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 ドアを開けた。
『こんばんはー』
「いらっしゃいませ。穂花さん、ヒナちゃん。お好きなお席をお使いください」
 なんですと?
 比奈子が、ヒナ「ちゃん」とか呼ばれてる。
 もしかして、私に内緒でお店に来ているのか?
「よなよなエール、ふたつお願いします。あと、」
「あ、ヒューガルデン・ホワイトの方がいい。ハーフパイントで」
 こいつ、ここに来たな?
「すみません、よなよなエールとヒューガルデンを一つづつ、両方ハーフパイントで。今日の日替わりは、なんでしょう?」
 パパが、ビールを注ぎ始めた。
「日替わりお料理は、キャンディー春巻になります」
「キャンディー? 何?」
 もうポップコーンを取ってきた比奈子が聞いてきた。
「来たらわかるから。キャンディー春巻お願いします」
「かしこまりました。よなよなエール、ヒューガルデン・ホワイト、お待たせいたしました。お料理は、お席にお持ちいたしますので、もう少々お待ちくださいませ」
 お金を払って、受け取ったグラスを片手に持つ。
 カクカクしたヒューガルデンのグラスは、比奈子が自分で持って、ローテーブルに向かう。
 看板猫の雪さんが、私たちの後を追いかけてきたので、しゃがんで撫でる。
 比奈子は、右手がグラス、左手がポップコーンの籠で塞がっていた。
 ふん、内緒でこのお店に来た罰だ。
 一頻り撫でて、席に座る。
『乾杯』
 ビールが美味しい。
「それで?」 
「え?」
 お前が、静かな所で相談したい、パパのお店がいい、と言うから連れて来たんだろうが!
「それが!」
 テンション高く、声を上げたら、雪さんは遠くに行ってしまった。
 落胆で、テンションも声も下げる比奈子。
「それで?」
 
 比奈子の話は、こうだった。

 サークルで知り合ったメガネ男子に、付き合ってくれ、と言われた。
 前から、ちょっとカッコイイな、と思っていたので、嬉しいが、軽い女に見られたくなくて、答えは保留中。
 でも、サークルでは、ついつい目で追ってしまう。
 そんな中、サークル全員で、バーベキューに行った。
 学生なので遠出はできないから、大学近所のバーベキュー可の河川敷で、塊肉など無理なので、スーパーで買った焼肉セットでだ。
 そこで、そのメガネ男子が、あまりに騒がしく、付き合っていいものか、心配になった。
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