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手紙、まで
オヤジ
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仕事に出るまで、まだ時間がある。
ビールも飲んで、お腹いっぱいなので、少し眠くなった。
でも、楽しかった場所、リビングから離れたくなくて、一階の六畳間から毛布を持ってきて、ラグの上に寝転んだ。
くっついてきた雪さんが温かい。
遠足の前日のような気分なのに、あっさりと僕は眠りに落ちた。
とても久しぶりに、前の実家の夢を見た。
僕の原風景は、小学生で引っ越すまで住んでいた家のようだ。
その後、より長く住んだ実家より、夢では、その家ばかり見る。
台所とお風呂場の間、細い廊下の突き当たりのドアを開けると和室だ。
その脇には、階段があり、夕方などは真っ暗で、この廊下を歩くのが怖かったものだ。
階段の上からナニかが降りてくる怖いテレビをチラっと視てから、更に階段を見ないようなった。
でも、その分、ドアを開ける前に漏れてくる、父親の声が好きで。
でも、その分、ドアを開けた時の明るさが好きで。
でも、その分、ドアを開けた後に溢れてくる、母親の料理の匂いが好きで。
楽しいのか、悲しいのか、懐かしいのか、嬉しいのか、寂しいのか、よく分からない気分で目が覚めると、もう遅刻確定の時間だった。
「よう、どうだった?」
遅刻したのを責めず、食事会のことを聞いてきた。
「オーナーのおかげで、ビール・サーバーを喜んでもらえました。でも、最後は量がギリギリでしたけど」
メンテ後の動作確認と称して、僕への引っ越し祝いであるケグをグビグビ飲んだことを、軽く責める。
「おお、ちょうどよかったじゃないか」
厚いツラ皮鎧は、軽い責めでは、傷をつけられないようだ。
「残り物で悪いですけど、料理もってきました。サーバーの件で、オーナーの話をしたら、お礼にならないけど届けてほしい、って言われましたので」
(卵焼きは入れていない)タッパーを渡す。
「ビールの一口で、嫌味言う小物とは、違うな」
嫌味ってわかってたことに、逆に驚き。
あと、あの量を一口って言うな。
調理スペースにある冷蔵庫にしまうのだろう、移動しようとして、
「そうだ、お前に紹介したい客が来てる」
「猫オバチャンって、呼んでねー」
カウンターに座る女性は、オバチャンと言うには若いが、責めてくる圧はオバチャン以上だった。
「猫、好きなんですか?」
猫嫌いで愛称に猫を冠さないだろう、と思いつつも、まずが無難な話題を振る。
「好き好き大好きー。猫好きすぎて、保護猫で猫カフェやっちゃったー」
え?
オーナーに視線を向けると、
「少し先にある猫カフェのオーナー・シェフだ」
オーナーだけじゃなくて、シェフ?
「ウチはー、本格フレンチが食べられる猫カフェなのよー。もちろんお酒もだすわー」
僕は疑問の浮かんだ顔をしたのだろう、猫オバチャンが教えてくれた。
「お前、興味あるんじゃないか?」
「え?」
オーナーの言葉に、思ったより大きな疑問符が出た。
でも、自分でも気づかなかったボンヤリした気持ちに、さっきまでの楽しかった時間、保護会の人が部屋に来たときの第一声などが、パタパタと組み合わさって、ナニかに組みあがった。
僕の目の焦点が合う、とオーナーが頷くように笑った。
まるで、父親のように。
僕はちゃんと、見守られていたんだなあ、と気がついた。
フラッシュが、僕の目を眩ませる。
「まるでー、親子みたいだねー」
猫オバチャンが、カメラのようなモノから、写真を取り出して、僕に渡してきた。
僕とオーナーが並んで写っていた。
「呼ばれてきたー、甲斐があったわー」
「ちっ、猫ババアは黙ってろよ」
初めて見たお客様だと思っていたら、どうやらオーナーが呼んだらしい。
僕のために?
「過保護な親だねー」
また、フラッシュ。
今度の写真は、オーナーに渡した。
「自分の気持ちも分からねえ、馬鹿ガキだ」
「出来の悪い子ほどー、ってねー」
それフォローになってないから!
オーナーもやれやれ、ってしたり顔で首振るな!
「分かったような顔して、僕のオヤジか!?」
つい出た僕の大声に、ほぼ満席で、ほぼ常連のお客様たちも驚いて、こちらを見たが、知ったことか。
感謝も羞恥も自己嫌悪も照れ臭さも、なにもかもが組み合わさって、
「ガキって呼ぶなら責任とれ! 今後は、オヤジって呼んでやる!」
オーナーもとい、オヤジが目を瞠る。
「こんのクソオヤジ!」
なぜだか、客席から、万雷の拍手が巻き起こった。
ビールも飲んで、お腹いっぱいなので、少し眠くなった。
でも、楽しかった場所、リビングから離れたくなくて、一階の六畳間から毛布を持ってきて、ラグの上に寝転んだ。
くっついてきた雪さんが温かい。
遠足の前日のような気分なのに、あっさりと僕は眠りに落ちた。
とても久しぶりに、前の実家の夢を見た。
僕の原風景は、小学生で引っ越すまで住んでいた家のようだ。
その後、より長く住んだ実家より、夢では、その家ばかり見る。
台所とお風呂場の間、細い廊下の突き当たりのドアを開けると和室だ。
その脇には、階段があり、夕方などは真っ暗で、この廊下を歩くのが怖かったものだ。
階段の上からナニかが降りてくる怖いテレビをチラっと視てから、更に階段を見ないようなった。
でも、その分、ドアを開ける前に漏れてくる、父親の声が好きで。
でも、その分、ドアを開けた時の明るさが好きで。
でも、その分、ドアを開けた後に溢れてくる、母親の料理の匂いが好きで。
楽しいのか、悲しいのか、懐かしいのか、嬉しいのか、寂しいのか、よく分からない気分で目が覚めると、もう遅刻確定の時間だった。
「よう、どうだった?」
遅刻したのを責めず、食事会のことを聞いてきた。
「オーナーのおかげで、ビール・サーバーを喜んでもらえました。でも、最後は量がギリギリでしたけど」
メンテ後の動作確認と称して、僕への引っ越し祝いであるケグをグビグビ飲んだことを、軽く責める。
「おお、ちょうどよかったじゃないか」
厚いツラ皮鎧は、軽い責めでは、傷をつけられないようだ。
「残り物で悪いですけど、料理もってきました。サーバーの件で、オーナーの話をしたら、お礼にならないけど届けてほしい、って言われましたので」
(卵焼きは入れていない)タッパーを渡す。
「ビールの一口で、嫌味言う小物とは、違うな」
嫌味ってわかってたことに、逆に驚き。
あと、あの量を一口って言うな。
調理スペースにある冷蔵庫にしまうのだろう、移動しようとして、
「そうだ、お前に紹介したい客が来てる」
「猫オバチャンって、呼んでねー」
カウンターに座る女性は、オバチャンと言うには若いが、責めてくる圧はオバチャン以上だった。
「猫、好きなんですか?」
猫嫌いで愛称に猫を冠さないだろう、と思いつつも、まずが無難な話題を振る。
「好き好き大好きー。猫好きすぎて、保護猫で猫カフェやっちゃったー」
え?
オーナーに視線を向けると、
「少し先にある猫カフェのオーナー・シェフだ」
オーナーだけじゃなくて、シェフ?
「ウチはー、本格フレンチが食べられる猫カフェなのよー。もちろんお酒もだすわー」
僕は疑問の浮かんだ顔をしたのだろう、猫オバチャンが教えてくれた。
「お前、興味あるんじゃないか?」
「え?」
オーナーの言葉に、思ったより大きな疑問符が出た。
でも、自分でも気づかなかったボンヤリした気持ちに、さっきまでの楽しかった時間、保護会の人が部屋に来たときの第一声などが、パタパタと組み合わさって、ナニかに組みあがった。
僕の目の焦点が合う、とオーナーが頷くように笑った。
まるで、父親のように。
僕はちゃんと、見守られていたんだなあ、と気がついた。
フラッシュが、僕の目を眩ませる。
「まるでー、親子みたいだねー」
猫オバチャンが、カメラのようなモノから、写真を取り出して、僕に渡してきた。
僕とオーナーが並んで写っていた。
「呼ばれてきたー、甲斐があったわー」
「ちっ、猫ババアは黙ってろよ」
初めて見たお客様だと思っていたら、どうやらオーナーが呼んだらしい。
僕のために?
「過保護な親だねー」
また、フラッシュ。
今度の写真は、オーナーに渡した。
「自分の気持ちも分からねえ、馬鹿ガキだ」
「出来の悪い子ほどー、ってねー」
それフォローになってないから!
オーナーもやれやれ、ってしたり顔で首振るな!
「分かったような顔して、僕のオヤジか!?」
つい出た僕の大声に、ほぼ満席で、ほぼ常連のお客様たちも驚いて、こちらを見たが、知ったことか。
感謝も羞恥も自己嫌悪も照れ臭さも、なにもかもが組み合わさって、
「ガキって呼ぶなら責任とれ! 今後は、オヤジって呼んでやる!」
オーナーもとい、オヤジが目を瞠る。
「こんのクソオヤジ!」
なぜだか、客席から、万雷の拍手が巻き起こった。
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