【完結】cat typing ~猫と麦酒~第10回ドリーム小説大賞奨励賞

まみ夜

文字の大きさ
50 / 120
葉書、まで

葉書

しおりを挟む
 動物病院から、葉書が届いた。
 雪さんのワクチン注射を今月中にしてください、というリマインドだ。
 初めて健康診断に行ったとき、会からもらったワクチン接種の証明書を見せたので、注射から一年後をお知らせしてくれたのだ。
 あれから、もう半年以上も経つのか。
 そうか、マイクロチップも埋めてもらわないと。
 でも、注射に、更に太い注射針でマイクロチップって、嫌われそうだ。
 いやいや、今の僕らの絆であれば、大丈夫、なはず?

「はいー、大丈夫ですよおー」
 中年坊主頭の獣医が、助手が押えている雪さんをすっごい低姿勢で診察している。
「体重は、変わりないですね。粗相も治ったようですし、お尻もよさそうですし、」
 覗き込む、と雪さんが、ものすごく不快を表す声を出したので、平謝りする先生。
「すみません、すみません。それでは、ワクチン注射と、マイクロチップを施術します」
 マイクロチップは在庫がない可能性があるから事前予約、と言われていたのを、すっかり忘れていたが、幸い在庫は、あった。
 空いていたからだろう、なんてもう言えない。
 以前に比べる、と各段に混んでいた。
 (もちろん病気の動物がいないに越したことはないけど)混んでよかったね。
 金属のトレーに、注射器と注射器が、置かれていた。
 うわ、針太い、ちょっと引く。
 助手さんが押さえて、
「まず、ワクチン注射を脚にします」
 フトモモに、注射。
 雪さんは、小さく、「にゃ」と鳴いた。
 助手さんが、更にぎゅっと押さえて、
「次に、背中に、マイクロチップです」
 雪さんが、「しゃー」と唸った。
 白い毛に、血が滲んでいるのを、脱脂綿で拭う。
 触るなオラーと、しゃーしゃー言う雪さん。
 マイクロチップ・リーダーの輪っか部分を背中に近づけると、ピっと音がして、十五桁の数字が読み取れた。
 やんのかオラー、と雪さんは、臨戦態勢だ。
「すみません、すみません。血液検査をやるにしても、今度にした方がいいですね」
 うん、僕もそう思う。

 お金を払うと、ワクチン接種証明書とマイクロチップの登録番号を渡された。
 チップの番号登録書は、病院が申込み先に送ってくれるとのこと。
 でも、引っ越ししたら、登録変更は、自分でやらないといけない。
 今のところ予定はないけど、店失敗したら、住所変わるかも・・・
 一番大事なのは、番号登録に数日かかるので、その間に、もし脱走してリーダーで番号がわかっても、飼い主情報は空欄ということだ。
 マイクロチップ入れた帰りに脱走、チップ無意味なんて、笑えない。
 時期ということで、カレンダーをもらえたので、笑顔。
 犬版と猫版があり、もちろん猫だ。
 譲渡会で買ったカレンダーもあるから、猫カレンダーが、いっぱいだ。

 部屋に帰る、と疲れたのか、雪さんは、僕のベッドで寝てしまった。
 嫌われたかな、と恐る々々そばに寄るが、チラと見ただけで、逃げなかった。

 ワクチン接種証明書のコピーと、ワクチンの負担金の領収書に、戻り金は寄付します、と書いて、譲渡会に送った。
 ワクチンもして、マイクロチップもして、譲渡会に報告もしてなんだか、より家族になった気がする。
 一眠りして、元気になった雪さんに、缶詰を出した。
(ツナ缶と安い猫缶は見ないふり)
 その器と、ハレの日仙人を注いだグラスで、乾杯した。

 来年も、同じ時期に注射なので、忘れないように動物病院からの葉書(来年も時期になれば届くけど)と、マイクロチップの番号をコルクボードに留めた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。 でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。 今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。 なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。 今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。 絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。 それが、いまのレナの“最強スタイル”。 誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。 そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

異世界ショコラティエの甘い革命~チョコレートが存在しない世界でカカオを育ててバレンタインを流行らせます~

黒崎隼人
ファンタジー
【2月14日はバレンタイデー!】 現代日本でパティシエを目指していた記憶を持つ少年ルカは、貧しい農村の三男坊として異世界に転生した。しかし、そこは「チョコレート」が存在しない世界だった! 砂糖はある、ミルクもある。けれど、あの芳醇で甘美な黒い宝石だけがない。 「ないのなら、作るしかない」 ルカは森の奥で嫌われ者の「オニノミ」がカカオの原種であることを見抜き、独自に栽培を開始する。発酵、乾燥、焙煎――前世の知識と魔法を駆使して、ついに完成した「ショコラ」。その味は、粗悪な菓子しか知らなかった異世界の人々に衝撃を与え、やがて頑固な父、商魂たくましい商人、そして厳格な領主や宗教家までも巻き込んでいく。 これは、甘いお菓子で世界を変える、少年のサクセスストーリー。

火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。 五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。 都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。 見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――! 久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――? 謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。 ※カクヨムにも先行で投稿しています

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...