【完結】cat typing ~猫と麦酒~第10回ドリーム小説大賞奨励賞

まみ夜

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連合、まで

乾き物

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 よくある定番のつまみで好きなのは、ナッツだ。
 酸化してしまったナッツに出会う、と本当に悲しい。
 カシューナッツもマカダミアナッツも、ミックスも好きだ。
 子供のころは、居酒屋に連れていってもらい、ミックスナッツをナッツごとに分類して並べて配合を調べてから食べる、迷惑で嫌なガキだったが。
 ただ、自分の店で出す、となると問題なのは、ヒネリがないのだ。
 なんだか、わざわざウチで食べてもらうのが、申し訳ない。
 意味ないかなあ。
 でも、ダラダラとナッツを噛りながら、ビールって、格別だからなあ。
 やっぱり定番として用意するべき?
 うーん。
 
 なんてことを、ヒネリのないミックスナッツを店で出しているオヤジに話したところ。
「一度、専門店に行ってみたらどうだ」
 専門店?
「知らないのか?」
 「やれやれ」と首を振る。
(本当に、この仕草は、ムカつく)
 簡単に説明してしまえば、乾き物の専門店。
 その味は、簡単には説明できず、一ヒネリされていて、奥深いらしい。
 これは、一度食べてみなければ。
 
 店に入る前から、香ばしい匂いがしていた。
 店に入ると、「らっしゃい!」と威勢良く迎えられた。
 立ち飲みの狭い店内は、昼前だというのに、大繁盛していた。
 このダメな大人の感じが、大好きだ。
「食券よろしく!」
 言われて見てみる、と僕がいる入り口脇に食券の自動販売機があった。
 ここで買って、注文するのか。
 邪魔にならないように、ちょっと下がって、選んでいると、
「お任せ三品セットがお得だよ」
 ご常連に教えてもらったので、早速それを買う。
 楕円形のプラスチックの赤い札が音を立てて落ちてきたので、三枚取り出す。
 あ、ビールも食券か。
 これは割安セットがないので、とりあえず瓶二本分を買う。
 三本買ったら、一本お得とか、あったらダメだな。
 カウンターで立ち位置を確保して、札を全部置いて、お願いする。
「札おいて注文して、できたら札もらうから」
 そういうシステムなんだ。
 言われて、ビールの札一枚は、戻す。
「はい、ビールとミックスナッツ」
 瓶ビールとコップ、ナッツの小皿が置かれて、ビールとつまみの札が一枚づつ持っていかれた。
「いただきます」
 まずはビールを一口。
 昼前なのを忘れてしまいそうな光景だ。
 ナッツに手を伸ばす、と温かい。
 そして、チップの香りがすごい。
 どうやら常時、少しづつ燻製にしているようだ。
 ナッツは、油の塊だから、温かいと美味しい。
 しかも、燻製の香りが、より香ばしさを出している。
 ビールが、グビグビ進む。
「次、ポリッピートムギチョコノ盛り合わせなんだけど、割合どうする?」
 何の呪文だろう?
「え、えとお任せで」
「はいよ」
 出てきたのは、思っていたのと、ちょっと違った。
 ポリッピーのスパイス味とムギチョコが、一皿に分けて盛られている、と想像していたのだけど、ミックスされていた。
 しかも、一部混ざっちゃった、程度ではなく、丁寧に混ぜられていた。
 念のために、一粒づつ食べてみる、と確かにポリッピーとムギチョコだ。
 ガサっと握って口に入れる。
 常識に縛られていては、いけない。
 二種類の菓子を混ぜたとは思えない。
 元々、こういう菓子だったのでは、と思う。
 発想としては、チョコレートコーティングされた柿の種と同じだが、別々を混ぜている分、甘さと辛さを好みで変えられる分、食べるたびに割合が違う分、こっちの方が面白い。
 「割合どうする?」と聞いてもらえるということは、ムギチョコ大目、とかの指定もできるのだろう。
 すでに、ビールは、一本目ではない。
「はいよ、ビーフジャーキーね。こっちはジャーキー用のサービス」
 旅館の晩ご飯で出るような小型のコンロに網を乗せて、そこでジャーキーが炙られている。
 しかも、固形燃料ではなく、炭でだ。
 サービスという小皿には、茶色いペーストが盛られていた。
 味噌かな?
 でも、味の濃いジャーキーに味噌って、かなりショッパそうだ。
 指でペーストだけ舐めてみて、脳が混乱した。
 甘い。
 これは、ピーナッツクリームだ!
 もしかして、炙られているのは、ジャーキーに見えて、ジャーキーじゃない?
 齧ってみる、とジャーキーでした。
 ビールが、グビグビ進む。
 これにこれをつけて、食べる?
 恐る々々ジャーキーでピーナッツクリームをすくって齧る。
 炙られて温まっているので、クリームがトロけた。
 熱くて甘くて、ショッパい。
 常識に縛られていては、いけない。
 二種類の味を混ぜたとは思えない。
 元々、こういう味だったのでは、と思う。
 発想としては、甘ジョッパいテリヤキと同じだが、別々を混ぜている分、甘さと辛さを好みで変えられる分、食べるたびに割合が違う分、こっちの方が面白い。
 ビールを呑み干した。
 はふうぅぅぅぅ、っと息をつく。
 顏を上げる、とご常連が、ニヤニヤしていた。
「札がなくなったら、自動販売機へ突撃だよ」
 チャージ(突撃)でチャージ(補充)か?
 オヤジギャグにしては、高度な気がする。
 さて、ビールとつまみの札、何枚づつが正解ルートか、攻略法を考えなければ。
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