継母の心得

トール

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第二部 第2章

339.降り出した雨 〜 ドニーズ視点/イザベル視点 〜

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ドニーズ視点


「───では、そのようにお願いいたします」
「はい。本日は有意義な時間でした。ありがとうございます。ドニーズ様」

結局、場数を踏んでいるこの人にはなかなか勝てないものだ。さすがはベル商会の会頭。とはいえ、僕の条件も大体は飲んでもらえたから、確かに有意義な商談だった。

「こちらこそありがとうございました」

丁寧にお礼を言って、ベル商会の建物から出るとほっと胸を撫で下ろす。今日の山場は越えた。後は教会で聖水を貰って、フローレンスのお土産を買って帰るだけだ。

鼻歌でも歌いたくなるような気分で、シモンズ伯爵家の馬車に乗り込む。馬車はゆっくりと、教会へ向かって走り出した。
流れていく街の景色を見ながら、娘にどんなお土産を買ってあげようか。と考える。

「あっ、あのお店のドレス、フローレンスに似合いそうだなぁ」

あっちのバッグの店も良い。でも、フローレンスは服やアクセサリーよりお菓子が喜びそうかな? 僕としては、娘には綺麗に着飾ってもらいたいんだけど。

「ドニーズさん、教会に着きました」
「あ、もう着いたんだ」

楽しい事を考えていると、あっという間に時間が過ぎるものだ。

「結構降ってきたなぁ……」

雨が本降りになり、これはマルシェも早仕舞いするんじゃないかって、ちょっと焦ってしまう。

教会の前で停まった馬車から下りると、「じゃあ、聖水をお願いするね。私は寄付金を渡してくるから」と、御者に伝えて早々に教会の中へ入る。

教会内は外よりもひんやりしていて、清澄な空気と荘厳な雰囲気に気が引き締まった。晴れている日は、ステンドグラスが日に照らされて、幻想的なのだが、あいにくの雨。今日は見られないのだと少し残念に思う。

「毎週礼拝には来ているけど、奥の部屋に入る事はなかなか無いから、緊張するなぁ……」

しきりに見回していると、シスターから声をかけられた。

「シモンズ伯爵家からお越しの方でしょうか?」
「あ、はい」
「では、奥の部屋へお願いいたします」

今日はよく奥の部屋に案内される日だ、と思いながらシスターの後についていく。

「司祭を呼んで参りますので、少々お待ちください」
「よろしくお願いします」


───しかし、いつまで経っても司祭は現れない。部屋に入ってから30分以上待たされているので、いい加減心細くなってきて、そっと扉を開け、廊下側を覗いたのだけど……

「え……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イザベル視点


ゴロゴロ……

暗く厚い雲が立ちこめて、ポツポツと降っていた雨が本降りになったのはついさっき。雷が遠くで鳴っているわ。と少しびくびくしていたのがバレたのか、マディソンがすぐにカーテンを閉めてくれた。

「奥様、ノア様とぺーちゃん様はお昼寝をしておりますし、奥様も少しお休みになられたらいかがでしょうか」
「そうね……」

皇后様にお借りした本を閉じ、「そうさせていただきますわ」と答えれば、ベッドと、ロッキングチェアのどちらで休むか聞かれたので、ロッキングチェアのままで良いと伝えると、持っていた本を直してくれ、ひざ掛けを広げて身体にかけてくれて、と至れり尽くせりだ。

このロッキングチェア、ふわふわで座り心地も最高ですのよね。さすがベル商会の家具職人が作っただけありますわ。

すっかりお得意様になった皇帝御一家の宮は、ベル商会の家具がチラホラ目立つ。もちろんディバイン公爵邸にもこのロッキングチェアはあり、テオ様も気に入って読書の時などに使用している。

それを聞いた皇后様が欲しいと言い出したのよね。さすが推しにお金と命をかけておりますわ。

ちなみにノアは、わたくしが座っていると、膝に上ってきて、絵本を読んでくれと強請ってくるのだが、それが可愛すぎて、毎回抱きしめたい衝動に駆られるのだ。

「今日は一日中降りそうですね……」
「この様子だと、雷でノア様たちが怖がりそうですね。あなたはノア様のベッド横で待機していなさい。ぺーちゃん様もノア様の横に移しましょう」
「かしこまりました」

マディソンもカミラも色々と考えて動いてくれていますのね。本当に、公爵家の侍女は優秀ですわ。

「明日は晴れるといいですわね……」


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