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第二部 第2章
368.魔力感知
しおりを挟む「あーっ、とうたぁ!」
可愛らしい声が聞こえた方へと目を向けると、そこには枢機卿に抱っこされたフロちゃんが、ドニーズさんの姿を見て手を伸ばしていた。
すっごく喜んでいますわ。
怪我などもないようで、元気いっぱいのフロちゃんがそこにいて、少し安堵する。
「フローレンス!」
ドニーズさんが駆け寄ろうとしたが、謎の女性が前に出てナイフをチラつかせ、フロちゃんに近付けない。女性はフロちゃんに背を向けているからか、ドニーズさんが近付いて来ない事に、フロちゃんが、どうして? と首を傾げた。
「とうたぁ?」
「フローレンス! ああっ、どうしたら……っ」
「ふりょねぇ、ぽんぽん、くぅちてりゅ」
「なんて事だ……っ、娘が空腹なのに、僕は何も出来ないなんて!」
何だか緊張感がない会話なのだけど……。
フロちゃんはまったく怖がっていないようで、お父さんに普通に話を振っていた。
「フロちゃん、はなちなさい!」
「そうだ! すうききょう、いかげんにしないと、えっと……、あの、お、おこるぞ!」
「ぷんぷんちますわよ!」
「うむ。ぷんぷんだ!」
ぷんぷんする子供たちも可愛すぎるのだけど、危ないから前に出てきてはダメですわよ!?
「ノアは、最近言動がますますベルに似てきたな。さすが私とベルの息子だ」
「おほほっ、イーニアスったら、怒り慣れていないから、ぷんぷんが思いつかないのね。可愛いわ」
テオ様と皇后様が、親バカ全開で呟いた。二人とも、自分の子を溺愛しているので、子供に向ける視線が激甘なのだ。
「テオ様、皇后様、ナイフを持った人の前に出るなんて、子供たちが危険ですわ!」
ノアとイーニアス殿下を抱きしめて、テオ様の後ろに下がらせようと奮闘していると、女性の後ろから枢機卿が呟いた。
「……魔力が消えたと思えば、まさか先回りしていたとは」
今、魔力が消えたって言いましたわよね……?
枢機卿猊下に目をやれば、忌々しいと言わんばかりにわたくしたちを見ている。
やっぱり間違いない。この人の特異魔法は……
「枢機卿猊下、あなた、魔力が感知出来ますのね」
「何で枢機卿猊下がフローレンスと一緒にいるんですか!?」
「フローレンス! フローレンスを返せ!」
ちょっと、オリヴァーとドニーズさん、気持ちはわかりますわよ。けれどわたくし、今まさに確信をつくところですの。少し空気を読んでいただけると有り難いですわ。
「魔力感知か。そうだろうとは予想していたが、ベルはなぜ確信したんだ」
さすがわたくしの旦那様。フォローしてくれましたのね。
「ノアの誘拐は、テオ様とウォルトが皇城に行っていた事と、わたくしたちが外出した事を知らなければ行えないものでした。しかし、それを知る為には公爵家の前で張り込むしかない。けれど、ずっと張り込みをするのは、ディバイン公爵家の影や騎士がいる限り無理があります」
「ああ。偶々にしては出来すぎたタイミングだった」
わたくしの持論に、テオ様が納得している中、枢機卿は何も語らず、ただじっと神殿の入口に目を向けていた。
「他にも、ディバイン公爵家の侵入者騒動の時も、テオ様がお留守でしたし、わたくしが帝都に来ていた事もご存知のようでした」
フロちゃんが聖女だとわかったのも、数多の人とは違い、聖者の魔力が特殊だったから、と考えると魔力感知以外には考えにくい。
「魔力感知の能力をお持ちなら、礼拝堂でわたくしたちが隠れている事も、誰がいるのか把握していた事も説明がつきますわ」
枢機卿猊下は、突然フロちゃんを下ろすと、ゆっくり顔を上げ笑ったのだ。
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