継母の心得

トール

文字の大きさ
280 / 369
第二部 第4章

494.異分子

しおりを挟む


【───フェリクスや、よくお聞き。その瞳は確かに、他にはないものだ……】
【……しっているよ、クレオ。わたしは、このせかいの、いぶんしだ】
【フェリクス、異分子などと……そのように悲しい顔をするでない。おぬしは、魔力のコントロールさえできれば全てを見通す力を持っている。誰も知り得ぬ秘密も、この世界の真実も、おぬしに知れぬ事などないのだろう】
【クレオ……】
【しかしフェリクスよ、中には見てはならぬもの、暴いてはならぬものもある】
【みてはダメなもの……?】
【……その力、場合によってはおぬしが傷つく事になるやもしれぬ。私はそれが心配でならぬのだよ……】
【だいじょうぶ。わたしは、だいじょうぶ。だからクレオ、はやく、げんきになって……】
【フェリクス、私の最愛の孫よ。忘れないでおくれ。おぬしの瞳が好きだという老人がここにいた事を。そしてどうか、その瞳を嫌いにならないでおくれ───】


◆◆◆


「ぅ……っ、ふぇぇ!!」

テオ様が皇城にて泊まり込みの仕事に追われているので、会議の期間中の就寝時は、わたくしとノア、ぺーちゃんの三人で眠っているのだが、夜中に珍しくぺーちゃんが泣き出した。

「あらあら、ぺーちゃんどうしたの? 怖い夢でも見たのかしら?」
「ぅええ~!!」

ノアは熟睡しており、ぺーちゃんの泣き声では起きる気配はない。幸せそうに寝息をたて、穏やかな寝顔だ。

「よしよし。お母様がそばにおりますわよ」

抱き上げてあやせれば良いのだけれど、大きいお腹でぺーちゃんを抱っこできる力が、わたくしにはない。なので横になったまま抱き寄せ、背中をさすってあげると、ぺーちゃんの泣き声が徐々に小さくなっていく。

「あらあら、夜はぺーちゃんのおめめが、きらきら光っておりますわ。綺麗なおめめね」
「ぅえ……、ちぇ……?」
「ぺーちゃんのおめめに浮かぶのは、綺麗で神秘的な魔方陣ですわね」

やっぱり何度見ても、厨二病にはたまらない瞳ですわよね。

「かぁちゃ……ぺぇちゃ、めめ……、ちゅっき?」
「もちろんですわ。わたくしは、ぺーちゃんの可愛いおめめだけでなく、全部が大好きですのよ」
「かぁちゃ……っ、ぺぇちゃ、みょ、ちゅっき!」

まぁっ、ノアに負けず劣らずの可愛さですわね。

「ありがとう、ぺーちゃん。さぁ、怖い夢はお母様が追い払ってさしあげますからね。安心してねんねしましょう」
「ねぇね……」

お腹をぽんぽんしていたら、うとうとと眠り始めたぺーちゃん。

すぐに眠ってくれて良かったですわ。夜泣きなんてほとんどしない子だから、こういう時、焦ってしまいますわね。

「フフッ、可愛い寝顔ですわ。あら、こっちのお兄ちゃん天使様は、眠りながらわたくしにくっついてきて、甘えん坊さんね。どちらもとっても可愛い」

だけどどうしましょう。わたくしの目は冴えてしまいましたわ……。

二人に布団をかけ直した後、ベッドから降りて水差しからお水をコップへ注ぐ。たっぷり入れたそれを飲み干し、喉を潤す。どうやらかなり喉が乾いていたらしい。

「……アオから聞いた事が本当なら……」

サリーに言われた後、わたくしはアオに、なぜ王女様が来た時悲鳴を上げたのか、直接聞いてみたのだ。その時の事を思い出し、自身のお腹を撫でながら溜め息を吐く。

「テオ様もいらっしゃらない時に、どうしたらいいのかしら……」

コップに付いた水滴が、まるで冷や汗のように流れ、机に輪っかの跡を作ったのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~ おまけ ~


「むにゃ……」
「大変、ノアが起きてしまったかしら?」
「ん~……おとぅしゃま……じゅーちゅ……」
「良かった、寝言ですわ。でも、ノアがテオ様の事を寝言で呼ぶなんて、珍しいですわね」
「むにゃ……みかんの、じゅーちゅ……」
「フフッ、夢の中で、テオ様にオレンジジュースを強請っていますのね」
「にゃ……ぺぇちゃ、みょ……」
「ぺーちゃんまで……。同じ夢を見ておりますの?」

しおりを挟む
感想 11,970

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

継子いじめで糾弾されたけれど、義娘本人は離婚したら私についてくると言っています〜出戻り夫人の商売繁盛記〜

野生のイエネコ
恋愛
後妻として男爵家に嫁いだヴィオラは、継子いじめで糾弾され離婚を申し立てられた。 しかし当の義娘であるシャーロットは、親としてどうしようもない父よりも必要な教育を与えたヴィオラの味方。 義娘を連れて実家の商会に出戻ったヴィオラは、貴族での生活を通じて身につけた知恵で新しい服の開発をし、美形の義娘と息子は服飾モデルとして王都に流行の大旋風を引き起こす。 度々襲来してくる元夫の、借金の申込みやヨリを戻そうなどの言葉を躱しながら、事業に成功していくヴィオラ。 そんな中、伯爵家嫡男が、継子いじめの疑惑でヴィオラに近づいてきて? ※小説家になろうで「離婚したので幸せになります!〜出戻り夫人の商売繁盛記〜」として掲載しています。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。