継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 侍女長から見た公爵一家 〜

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私はディバイン公爵家のタウンハウスで侍女長を務めさせていただいております、マディソンと申します。

テオバルド坊っちゃま……いえ、旦那様が生まれる以前より、ディバイン公爵家にお仕えしており、夫はディバイン公爵家で代々執事長を務める家系の者でございます。
おそらく、タウンハウスと領地のお邸を合わせましても、女性の中で最古参の使用人は、私ではないかと自負しております。

ちなみに、現在執事長を努めておりますウォルトは、私の息子でございます。

可愛げのない愚息ではございますが、旦那様にはよくお仕えしている様子なので、最近は安心して任せる事が出来ております。

私は普段、タウンハウスへ居りますので、領地の事は報告でのみ聞き及んでおりますが、何でも、イザベル奥様が来られてから急成長を遂げているとか。
愚息も自慢げに奥様の事を教えてくれますから、最近は息子の報告も楽しみになっているところです。

少し、テオバルド坊っちゃまの幼い頃のお話をいたしましょうか。

テオバルド坊っちゃまは、お小さい頃から利発で、とても可愛らしい天使のようなお方でございました。
その頃は私も坊っちゃまと同じ年頃の息子(ウォルト)を育てておりましたので、坊っちゃまの乳母をさせていただいておりました。
しかし、成長されるに従って、端正なお顔は次々と人々を魅了し、結果、重度の女性嫌いとなってしまわれたのです。

20代後半に差し掛かっても浮いた話の一つもございませんでしたので大層心配いたしました。

しかしある日、見た目だけは妖精のように美しいご令嬢が、あの坊っちゃまに嫁いできたのです。

その頃はまだ、領地のお邸で侍女長を務めておりましたので、その令嬢のお世話を任されたのですが……見た目とは裏腹に、それはもう……っ、気性の荒い女性で……ゴホンッ、失礼いましました。このようなお話はするべきではございませんでした。

とにかく、信じられない事に、そのご令嬢が坊っちゃまのご子息であるノア様をお産みになったのですが、その頃私は領地の邸からタウンハウスへと移っていたので、詳しくは存じ上げません。

ええ。私が口煩いだの、いじめられただのとあの女……いえ、あのご令嬢が、私をクビにするように、ウォルトに命じたようでございます。

坊っちゃまの計らいで、タウンハウスへ移ることとなりましたが、今でもあの時の事は忘れません。
いえ、もう亡くなられたので、故人をどうこう言う気はございませんが。

その後のノア様の境遇は、私の耳には入ってこなかった事を思うと、愚息が口止めしていたのでしょう。
私が領地のお邸にいれば、と今でも悔やまれてなりません。

しかし、ノア様が3つになる年、イザベル奥様が嫁いで来られたのです。

最初は、17歳のご令嬢を妻に迎えると仰った坊っちゃまの正気を疑いました。
いくら伯爵家のご令嬢で前妻様より釣り合いが取れるとはいえ、若すぎるのではないかと心配しましたが、皇室のパーティーに参加する為に、タウンハウスへ来られたイザベル奥様は、それはそれはお美しく、しかも性格は大変可愛らしくて、女嫌いの坊っちゃまは、このギャップにやられてしまったのだ。と納得したものです。

そう思ったのも束の間、奥様のエスコートもせず馬車に乗った坊っちゃまを見た時のあの衝撃。
あまりの事に主の頭を叩きそうになってしまいました。

あの時私を止めてくれた部下に感謝します。

これはどういう事なのかと、愚息を問い詰めた所、なんとお二人は契約結婚だというではないですか! そんな馬鹿な話がありますか!!

ですがこの時私は、イザベル奥様ならもしかして、坊っちゃまの女嫌いを治せるのではないかと、そんな予感めいたものを感じていたのです。

さすがに、パーティーで毒を盛られて帰ってくるとは思いませんでしたが、それがキッカケとなり、坊っちゃまの気持ちが奥様に傾いていった事は間違いないでしょう。

次にタウンハウスへお越しになられた際、ご子息も連れて来られていたあの感動は忘れられません。
奥様に抱かれ、すやすやと眠るノア様の愛らしいこと!

お小さい頃の坊っちゃまにそっくりで、イザベル奥様にとても懐いておりました。
まるで本当の母子のような姿に、ノア様はあの女ではなく、イザベル奥様がお産みになったのだと強く思いました。

ノア様がタウンハウスに来られてから、私が子育てしている時代には無かった便利そうなものや、子供用のおもちゃなどが運び込まれ、時代は変わったものだ。これを考えた方は天才だ。と使用人皆で絶賛していた所で、愚息から、奥様が、あの新素材や子供のおもちゃなどを開発されたのだと教えられ、とても驚いた事を覚えています。

イザベル奥様は、もしかしたらディバイン公爵家に降臨された女神様なのかもしれません。

それから、坊っちゃまがどんどんイザベル奥様の虜になっていく様子は、見ものでございました。

坊っちゃまに、奥様の贈り物を相談された事もございましたが、「ご自分でお考えくださいませ。旦那様が奥様を想って一生懸命考えたものは、必ず喜んでいただけますから」とお伝えした時の坊っちゃまのお顔は、まるで迷子の子供のようでございました。

嬉しい事は続くものです。

少しずつ、夫しても父親としても成長していた坊っちゃまから、イザベル奥様が妊娠されたと報告を受けた時は、タウンハウスの使用人全員が手放しで喜んだものです。

アベル様の出産では……あら、もうそんな時間?
申し訳ございません。そろそろ、ノア様がアカデミーから戻って来られる時間でございますので、続きはまた今度。

「マディソン、帰ったよ。お母様はどこ?」
「ノア様、お帰なさいませ。奥様でしたら、お嬢様とお庭をお散歩されておりますよ」
「ありがとう。探してくるよ」
「あ、ノア様……っ、はぁ、着替えもせず行ってしまわれるなんて……余程奥様にお話されたい事があったのですね」

お庭から奥様たちの笑い声が聞こえてきました。
きっとノア様が楽しいお話をされているのでしょう。


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