継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 チロとパーティー 〜

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「ディバイン公爵、公爵夫人、ようこそおいでくださいました」
「フィッシャー子爵、招待いただき感謝する」
「お招きいただき、ありがとう存じますわ」
『オマネキ、アリガト、ナノ~』

わたくしの肩で、わたくしと同様にカーテシーをするチロに、いつの間に覚えたのかしら、と微笑ましくなる。

『ベル、テオ、チロ、ゴアイサツ、デキタノ』

笑顔の可愛いチロは、わたくしの癒やしですわね。

本日は、フィッシャー子爵という、昔からディバイン公爵家とお付き合いのある子爵家の、お孫さんの誕生パーティーに招待されたのだ。
お孫さんといっても、16歳になるレディなのだけど。

なぜチロもいるのかといえば、テオ様が外出する時は必ずチロを連れて行くように、と仰ったからだ。どうやらチロがいれば、いつでも連絡が取れるかららしい。
なので最近はどこにでもチロを連れて行くようになった。

ノアがチロを羨ましがっていたから、今度はノアも一緒に外出した方が喜ぶかもしれませんわね。

「ディバイン公爵夫人は噂に違わずお美しいわぁ。お肌もツルツルで、まるで白磁のよう。どういったお手入れをなさっていますの?」

ほぅっと息を吐くのは、フィッシャー子爵の奥様で、何でも美容家かと言わんばかりに、化粧品の研究に余念のない方なのだとか。

そう皇后様が教えてくださいましたのよ。
どうりで美魔女なはずですわ。60代後半だというのにお肌も髪も美しくていらっしゃる。

『ベル、テヅクリノ、ケショースイ、ツケテルノ』

なぜかチロが自慢気に答えるが、子爵夫人にはもちろん聞こえていない。

「わたくしはあまり美容に詳しくないもので、侍女やメイドに任せておりますのよ」
『ベルノ、ケショースイ、スゴイノ。キズアト、ナオルノ~!』

チロったら、聞こえないのにずっと説明してあげてるのね。可愛いわぁ。

「まぁまぁ! ディバイン公爵夫人は美容には興味がございませんの? それほどまでに美しくていらっしゃるのに、勿体ないですわっ」
「そ、そうでしょうか?? フィッシャー子爵夫人は、お肌のお手入れはどのようにされているのでしょうか」
『ベルノホーガ、キレーナノ』

こらこら。チロ、そんなこと言ってはダメですわ。

視線をチロにやると、チロは慌てて口を塞ぐ。フィッシャー子爵夫人はというと、嬉しそうにお手入れのこと、化粧品のことを教えてくれた。

『ナガカッタノ~』
「喋りが止まらぬとは……恐ろしいな」

げっそりしているチロとテオ様に、「そのようなことを仰ってはいけませんわ」と注意する。
テオ様は女性嫌いですし、チロはパーティーが初めてだから、うんざりなのかもしれませんが、女性は美についてならば1日中だって語れるものですのよ。

とはいえわたくしも、まさか30分も語ってくださるとは思わなかったですけれど。

『ベル、ゴメンナノ~。チロ、キライニ、ナラナイデ』
「チロを嫌いになるわけありませんわ。大好きですわよ」
『ベル~!』
「ゴホンッ、私も口がすぎたようだ。だから、嫌いにならないでくれ」

まぁっ、テオ様までチロと同じことを仰って……っ

「嫌いになるはずございませんでしょう」
「ベル、私には、大好きはないのか?」
「ぅぐ……っ」

なんて恥ずかしいことを言わせようとするのかしら!? 人様のパーティーの最中だというのに……っ

『チロ、ベルモ、テオモ、ダイスキナノ~』
「チロはこう言ってくれるというのに、ベルからはその言葉が聞けないとはな……」
「も、もぅ! テオ様、大好きですわっ」
「私も愛しているよ。ベル」

ヒィィ!! 甘すぎて溶けそうですわよ!


「ディバイン公爵と公爵夫人だ!」
「やはりお二人とも、お美しいなぁ」
「お二人が並ぶと、まるで絵画のようだ……」

さっきから、わたくしたちの周りに、なぜか距離を取りながらも人が集まって来ている気がしますわ。
ヒソヒソ話しておりますが、何を言っているのかまでは聞こえませんわね。

『ベル、ドーシタノ~?』
「いえ、みな様が内緒話をされているので、何かしら、と思いましたのよ」
『チロ、ワカルノ』

わかりますの!?

『ミーンナ、テオトベル、キレーッテ、イッテルノ』

テオ様はわかりますけど、わたくしはキツイ顔とか言われているのではなくて?

「ベル、あのような者たちを気にする必要はない。それよりも、私たちはバルコニーにでも出て時間をつぶそう」

テオ様、女性嫌いの顔が出ておりますわよ。

毎回招待されるパーティーは、バルコニーで時間を潰すので、もう慣れてはいるけれど、いい加減主催者に怒られないか不安ですわ……。

この後、香水酔いしたテオ様を休ませていた時、バルコニーに生演奏が聞こえてきて、それを聞いたチロが突然、ダンスがしたいと言いだし、一緒にダンスをしたら「良いものを見せてもらった」と、テオ様が上機嫌になったのでチロが喜んでいた。

邸に帰ると、パーティー帰りにしてはテオ様が上機嫌な事をウォルトとマディソンに気持ち悪がられ、つい、チロと顔を合わせて笑ってしまいましたわ。


翌日、

『ノア、チロト、ダンス、スルノ~』
「はい! わたち、チロとダンスするのよ!」

と言って、可愛いダンスを見せてくれたノアとチロに、ほっこりしたのは言うまでもないだろう。

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