継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
29 / 175
その他

番外編 〜 イーニアスの立太子 〜 イーニアス7〜8歳



ネロウディアス皇帝視点


「イーニアスを公式に皇太子とさだめる事に反対の者はいるか」

執政官であるディバイン公爵を筆頭に、法務官、按察官、財務官、監察官の元老院のメンバーが一堂に会した皇城の会議室で、朕とレーテは上座からその場にいる者の顔を一瞥する。

誰もが賛成の意を示していることに頷くと、隣のレーテを見た。
レーテは誇らしげに姿勢を正すと、

「では、イーニアス第二皇子の立太子を決定します」

と高らかに宣言したのだ。

朕の可愛いイーニアスの立太子が決まった瞬間だった。

現在イーニアスは7歳。立太子宣明の儀を行うとなると、準備に半年から一年はかかる。

「8歳での立太子か……まだ幼いあの子が皇太子になるのは、プレッシャーにならぬだろうか……」
「大丈夫よ。イーニアスは皇帝になる器のある、アタシたちの子供よ。それに、アタシたちがいるじゃない。プレッシャーなんかに負けないよう支えてあげましょう!」
「レーテ……そうなのだ! イーニアスには朕たちがいる。朕がイーニアスとレーテを守るのだ!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イザベル視点


「とうとう、イーニアス殿下が皇太子になりますのね」

前前世ではまだ立太子はしていなかったと思ったけど、今世は早いですわね。それはそうよね。皇帝陛下と皇后様の愛息子で、能力も後ろ盾も言う事なしですもの。側妃様も皆様離縁なさいましたし、大粛清で問題を起こしそうな貴族はいなくなりましたし、大きくなるのを待つ必要はなくなりましたものね。

「ええ。とうとう……」
「皇后様、嬉しくはないのですか?」

思うことがあるのか、あまり嬉しそうでない皇后様が心配になる。

「もちろん嬉しいわ! あの子が立太子する事はアタシの目的の一つだもの。ただ……まだ幼いあの子が立太子する事で、利用しようとする有象無象が湧き出てくるのかと思うと……ね」
「ああ……そうですわね。権力のある所に人は集まると言いますし……」
「アタシは昔から命を狙われていたから、慣れてるっていうのも変な話なんだけどね、イーニアスには、アタシと同じ目には遭ってほしくないのよ」
「皇后様……。今は皇帝陛下もおりますし、テオ様もおりますわ。大丈夫です」
「ええ。そうよね。あの氷の大公テオ様がついているものね!」

不安になるのも無理はありませんわ。8歳で立太子ですもの。
わたくしだって、もしノアが8歳でそんな立場に追いやられたらと思うと、心配で仕方ありませんわ。

「そういえばイザベル様は、ノア君に集う有象無象の対応をどうしているの?」
「ウチはテオ様もウォルトもおりますし、アオも頑張ってくれておりますのよ」
「アオ……そういえば、ウチにも妖精がいたわ。いつでもイーニアスにベッタリな甘えん坊が」
「フフッ、立太子宣明の儀にも一緒に参加しそうですわね」
「ハァ……そうね。アタシ、妖精が見えなくて良かったわ。見えてたら声を上げてしまいそうだもの」


と話していたからフラグが立ったのだろうか、この一年後の立太子の儀で、わたくしこそが声を上げてしまいそうになるのだけれど、この時はまだ、想像もしていなかったのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~ 一年後、立太子宣明の儀 ~


皇城の謁見の間にて行われる立太子宣明の儀は、皇帝陛下から、この場にいる主だった貴族たちの前で、皇太子であることが宣言され、その後皇帝陛下から皇太子の頭に、証である冠がのせられる。そうして、皇太子となったイーニアス殿下が口上を述べるまでが一連の流れなのだが……

『アカも! アカもそれかぶりたーい!』
『アオも!! かっこいー!!』

冠を頭にのせられた時に、今までおとなしかったアカとアオが、イーニアス殿下の周りをぐるぐる回り始めたのだ。

「お母様……どうしましょう……」

困った顔でわたくしを見るノアに、「どうしたらいいのかしらね……」とわたくしも困った顔で応え、テオ様を見る。
テオ様は何事もないかのように、表情をピクリとも動かさない。

『アス、それアカにかぶらせてー!』
『アオにもー!!』
「うむ。また後でゆっくりかぶるといい」
『はーい!』
『りょーかいであります!!』

イーニアス殿下は落ち着いた様子で、にっこり笑うと小さな声でそう言って、立ち上がった。

それがもう堂々たるもので、すでに皇帝のような貫禄も出ており、この場にいる貴族たちがほぅっと息を吐く。

皇帝陛下も皇后様も誇らしそうにそれを見ていた。

「アス殿下、すごい……」
「そうね。妖精たちを抑えられる人なんて、イーニアス殿下しかいないかもしれませんわね」
「お母様、私も……アス殿下をささえられるように、なります」

まぁ! ノアったら、7歳でもうそんな自覚が出てきたのね!!

息子の決意が聞こえていたのか、テオ様は口の端を少し上げ、皇帝陛下や皇后様と同じような顔をしてまっすぐ前を見据えていた。


息子たちの成長は、嬉しいものですわね。


感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。