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その他
番外編 〜 ネロウディアスの模型展示会1 〜 ノア7歳
しおりを挟む※時系列はイーニアス殿下が8歳。ノア君が7歳頃のお話です。
ネロウディアス皇帝視点
「レーテ、朕は決めたのだ!」
「何?? 突然どうしたの?」
朕の執務室で、レーテが書類と睨めっこする中、朕は椅子から立ち上がる。
その勢いで、机に積まれた書類が朕に向かって雪崩れてきたが、今は気にしてはいけないのだ。
そのまま拳を握り、天井を見ながらこう宣言する。
「朕は、組立式模型愛好家の作品を集めた、展示会を開催する!!」
何を言ってるんだコイツは。という顔をしているレーテも変わらず可愛くて大好きなのだ。
レーテがこういう顔をするのは朕にだけだから、余計愛おしいのかもしれぬ。
……ちょっ、レーテ!? そんな蔑んだ顔をするのだけは止めてください。お願いします。
「朕が組立式模型を始めて早三年。つまり、組立式模型が販売されて三年が経つという事。そろそろ全領の模型愛好家を集めて、展示会を開催しても良い頃合いだと思う!」
「そういうのって、普通販売元がやるもんじゃないの?」
「もちろんディバイン公爵夫人には提案している!!」
「はぁ!? あんたアタシに話す前に、もう言っちゃったの!?」
ムムッ、もしかして……ヤキモチ!?
「あんた、前も勝手な事して大騒動になったのを忘れたとは言わせないわよ!? 報連相は大事だって、何度も言い聞かせているでしょうが!」
違ったのだ……。
「うぅ……、すまぬのだ」
「まったく……それで、イザベル様は何て言ってるわけ?」
「うぬ! ディバイン公爵夫人は乗り気だったのだぞ!」
「あら、そうなの? イザベル様、ショッピングモール建設で忙しくしているみたいだったけど……」
確かにディバイン公爵夫人は忙しそうだったから、朕が全て用意するとゴリ押ししてきた。
「大丈夫ですの?」と心配されたが、朕のこの模型愛は、誰にも負けぬ!
「レーテ、今や組立式模型は模型専門店が出来る程の人気を誇る。全領、いや、世界中から愛好家を集め、各々の自慢の作品を見せ合う場を設けるのは、模型生産国である我が国の責務なのだ!」
「いつからウチは模型生産国になったのよ。あんたもしかして、自分が全部やるから任せてくれとかなんとか言ったんじゃないでしょうね」
「な、何故分かったのだ!?」
「やっぱり!! 忙しいイザベル様がそんな面倒そうな事を今するとは思えなかったのよ!」
さすがレーテ。朕の事もディバイン公爵夫人の事もよく分かっているのだ。
「ディバイン公爵夫人に提案したのも、夫人が乗り気だったのも本当なのだ……。でも、ショッピングモール建設の後でって言われたから……、朕がやるからって……」
「このお馬鹿朕!」
レーテに怒られた……。
「もうっ、アタシも今レール馬車の事で忙しくしてるのよ! 手伝ってあげられないのに、どうするの!」
手が空いてたら手伝ってくれていたという事か! やっぱり朕のレーテは世界一優しい!
「それは大丈夫なのだ! ベル商会からも人が来るし、エリザも率先して準備してくれると言ってくれているのだぞ!」
「エリザが?」
「うむ。あの子は朕に似て組立式模型が大好きだからな。お互い一番自信のある模型を展示しようと約束したのだ」
「そう。エリザが……、エリザももう13歳だものね。そろそろ、大規模な催しを取り仕切らせるのも良いかもしれないわ」
レーテはそう言って、何かを思いついたように部屋を出て行ったのだ。
「レーテ……? あの、まだ話の途中……」
独り寂しく残された朕は、その後雪崩を起こした書類を泣きながら整理し、執務を続けたのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お父様、お母様から、組立式模型の展示会の企画書を書いて、ベル商会の人に渡すように言われたわ!」
その夜、子供たちとの晩餐で、第一皇女のエリザベスが嬉しそうに朕に言った話に衝撃を受けた。
「え、待ってエリザ、それは朕がやると……」
「ネロ、そろそろエリザにも催しを取り仕切る事を学ばせるべきでしょう。女性が嫁ぐだけの時代はもう終わったのよ。今や女性は、実業家や政治家、教育者、様々な場で活躍するようになってきているのだから」
レーテは朕の言葉を遮ると、もう頷く事しか出来ないよう、言葉巧みに説かれたのだ。
「エリザお姉様、わたしもご一緒したいです!」
そこへ目を輝かせたイーニアスが立候補する。それを皮切りに、他の子供たちも、ずるい! 自分も!! と言い出したので、食堂は一気に騒がしくなった。
「こらこら、あなたたちマナーが悪いわよ。ほら、ちゃんと席に着きなさい」
12人の子供たちを一瞬で黙らせる事の出来るレーテは、多分聖母の生まれ変わりなのだと思う。
いつもこうして家族が和気あいあいと食事出来るのは、レーテのお陰なのだ。
「皆、今回はエリザの学びの場として、組立式模型の展示会を開催する予定なのだ。皆も大きくなったら、エリザのように学ぶ機会を必ず与えるので、今回は姉を見守って欲しいのだ」
朕がそう頼むと、子供たちはすぐに、「はい」と良いお返事をした。
皆が良い子に育ってくれて、朕は嬉しいのだ。
「お父様は今回、フォローに回ってくださるとお母様から聞きました! 私、頑張るから、よろしくお願いします!!」
「うむ。朕と共に良い展示会にしようではないか」
こうして、朕たちのプロジェクトは始まったのだ。
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