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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜
番外編 〜 カレー屋さんに行こう 〜 ノア3歳
※ノア君が4歳になる前のお話です
貴族街でも郊外に、高級カレー専門店がオープンするという事で、ウォルトからプレオープンに行ってほしいと言われ、公爵様とノアとで行ってみる事にしたのだ。
「おかぁさま、ノア、かれーしゅきなのよ」
「そうよね。ノアはフルーツとヨーグルトがたくさん入ったカレーが大好きよね」
「はい!」
馬車の中で一生懸命、カレーが好きな事を話す息子が可愛すぎるわ。
「私はどんなカレーも食べられるが、甘いカレーだけは食べられない……」というような顔をしている公爵様は、無表情だけれど、何となく嬉しそうだ。
カレーマニアですものね。
「今から行くレストランでは、色々なカレーが食べられるのですって! 楽しみですわね」
「はい!」
「そうだな」
ガタゴトと馬車に揺られ、着いたレストランは、前世で行きたいと思っていた、鎌倉の古我邸のような素敵なレストランで、ちょっと興奮してしまったわ。
内装も、木の温もりあふれるトーンを落としたもので、レトロなのだけど、落ち着ける大人なお店だった。
ノアはそんな大人なお店にも動揺せず、特にキョロキョロする事もなくウェイターについて行っている。
そうよね。普段はほぼお城のような公爵邸に住んでいますものね。ノアにとっては自宅の方が遥かに立派だわ。
案内されたのは個室で、大きな窓からは手入れが行き届いた庭園が眺められる。夜はライトアップされているようで、とてもロマンチックだ。
「当店では、様々な種類のカレーを楽しんでいただくために、5種類、お好きな組み合わせを選んでいただけます。大きく分けてインディーカレー、グランニッシュ(欧風)カレー、ドライカレー、ココッチカレーとございまして、その大きな区分の中にもさらに数種類ございますが、初めての方ですと、メニューにお印をつけておりますものがおすすめでございます。また、お子様には別メニューをご用意しております」
絵と何が入っているか簡単に描かれたメニューをそれぞれに渡される。
どれが良いかしら。インディーカレーのバターチキンと、ほうれん草とチーズは鉄板よね。それとグランニッシュカレーと、あーっ、ココッチカレーの種類の多さ! どれにするか迷うわ……。
公爵様をチラリと見ると、ものすごく真剣に悩んでいる。鬼気迫る勢いですこし怖い。
「ノアは何が良いかしら。カレーだけでなく、エビフライやハンバーグ、唐揚げにポテトまでありますわよ」
「はい。カレーにトッピングする事も可能ですし、単品でお出しする事も出来ます」
なるほど。確かにメニューのココッチカレーのトッピングにそんな事が書いてあるわ。
「ノアはどうしたい?」
「ノア、かれーたべりゅのよ」
「そうね。カレーにエビフライやハンバーグを入れられるのですって」
「!? ノア、はんばーぐ、いれりゅ!」
「フフッ、では、この子にはココッチカレーの甘口で、トッピングをハンバーグにしてくださる?」
「かしこまりました。他にも二種類お選びいただけますが、いかがいたしましょうか」
お子様用カレーは、パンの器にカレーが入れられているらしく、5種類から選ぶものではなかったが、トッピングが3種類選べるらしい。
「あら、ノア、あと2つ好きなものが選べるそうよ。エビフライに唐揚げ、ポテトにお野菜もありますわね」
「ノア、ちーじゅ!」
「チーズも好きだものね。もう一つは何にしたい?」
真剣にトッピングを選ぶノア、可愛いわぁ。
「おやさい!」
まぁっ! バランスをちゃんと考えているのだわ。3歳でこんなに賢かったら、将来どうなるの!?
ウチの息子、大天才よ!
息子のカレーを注文し、私も自分のものを注文する。
結局、インディーカレーから、バターチキンとほうれん草とチーズのカレー、キーマカレー、そしてグランニッシュカレーと、ココッチカレーの季節の揚げ野菜乗せを頼んだ。少量ずつ色んなカレーが頼めるのは最高ですわね!
「あ、ワタクシ、パンではなく“ナン”でお願いしますわ!」
「かしこまりました」
「“ナン”だと?」
公爵様がこちらを見てくるので首を傾げる。
「イザベル、“ナン”というのは、カレーに合うのか」
そういえば、公爵様は食べた事無かったわよね。
「“ナン”は、インディーカレーにとても合いますのよ。平らなパンのようなものなのですが、ワタクシ、ナンにハチミツをかけて食べるのも好きですわ」
「カレーについて、私が知らぬ事があるとは!」みたいな衝撃を受けた顔をしている公爵様は、インディーカレーをメインに結局ナンを頼んだのだ。
「いつもはグランニッシュカレーをよく食べているが、偶には、インディーカレーも良いだろう」
と言いながら、ナンにカレーを付けて食べた公爵様の顔は、どこかの料理マンガの登場人物が美味しいものを食べた時のように目を見開いていた。
美味しかったのね……。
ノアも美味しそうにココッチカレーを食べているわ。良かった。
ノアも公爵様も喜んでいるし、帰ったらウォルトには、素晴らしいお店だったと伝えましょう。
「おかぁさま、ちゅぎ、アスでんかもいっしょ!」
帰りの馬車の中でそう言われた私は、曖昧な笑いを浮かべる他なかったのだった。
それから暫く後に、皇后様の特異魔法を知り、腰を抜かしそうになるのだけれど。
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