継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
42 / 175
番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 天使たちのしゅぎょお1 〜ノア4歳



まだ妊娠が発覚する前、悪魔が滅んだすぐ後の事だ。ウォルトから詳しい話を聞いて知ったのだけど、わたくしがアベラルド様に攫われていた間、テオ様がノアに魔法を教えていたのだとか。
しかも皇城に連れて行き、指導していたと聞いて驚いた。
なんでも、イーニアス殿下の魔法もテオ様が教えているようで、今日がその指導の日だというではないか!

これは是非見学したいですわ!

と勢い勇んでやって来た皇城で、何だかよく分からない人に絡まれてしまいましたのよ。

「貴女がディバイン公爵夫人?」

わたくしを頭から爪先までジロジロ見て、ご自分のお名前を教えてくださらないこの女性は、見た目は15歳くらいかしら? 可愛らしい容貌をしているのだけど、お胸は豊満で、アンバランスな魅力がある方だわ。

「……どちら様でしょうか?」
「私の事、ご存知ないの!?」

皇帝陛下の愛妾や側妃様たちはもう離縁され、実家に戻られているし、第一皇女殿下はまだ10歳……。他に、現在皇族の次に位の高いディバイン公爵夫人という立場のわたくしに、ここまで高圧的な態度を取れる女性って、おりませんのよね。伯爵令嬢だった頃ならいざ知らず……。

という事は、若さ故の暴走かしら?

この位の年の頃には、怖いもの知らずに目上の方に絡むご令嬢がいらっしゃると聞きますし……。
きっと、若人の社交界で幅を利かせているご令嬢に違いはないのでしょうけど、わたくし、デビュタントしたばかりのご令嬢が出るパーティーに参加したことがないのでよく知りませんのよ。

もちろん貴族名鑑は覚えておりますから、お名前を教えてくだされば、どんなお家の方か分かりますけれど……。

はぁ……。ノアの勇姿を見に来たというのに、おかしな人に絡まれてしまいましたわね……。

「わたくし、お若い方のパーティーにはあまり出席いたしませんので、あなたのお顔を存じ上げないのですが、お名前をお聞かせいただけますかしら?」
「お若い方のパーティーって……あなたも私たちとそう変わらないのではなくて!?」

確かに年は3、4歳の違いでしょうが、精神的には30代なんですもの。

「ご挨拶していただけないようですので、わたくしは失礼いたしますわ」

それでもデビュタントされた立派なレディですもの。デビュタント前でしたら教えて差し上げますけれど、大人のレディへは、遠回しの注意しか出来ないのが暗黙のルールですものね。

貴族ってそういうところが面倒ですわ。

「なっ、ちょっと待ちなさいよ! 貴女、挨拶も出来ないの!?」

このご令嬢、きちんと教育を受け直した方が良さそうですわ。ここまでくると、遠回しの注意も何もございませんわよね。

「わたくし少し急いでおりますの。どなたかは存じ上げませんが、突然話し掛けてこられて、お名前も教えてくださらない方に時間を割く事は出来かねますわ」
「っ私は、この国の宰相の娘よ!! あなた何様のつもりよ!!」

これは、アレだわ。マナー教育を怠ったご令嬢というやつ。
昔のわたくしより酷いですわよ。

「まぁ、宰相というと、ハリス侯爵ですわね」
「そうよ! 私は、この国の“ナンバー2”の娘なの」

ハリス侯爵って確か、皇后様とテオ様に小間使いのように働かされて、疲れきって可哀想なほど頭が薄くなってしまったあの方ですわよね。

「ハリス侯爵はお人柄も良い、優秀なお方だと聞いておりましたが、ご令嬢の教育には失敗したようですわね」
「何ですって!!」
「この事は、ハリス侯爵にお伝えしますわ。まさか皇后様と皇族を侮辱なさるなんて」 

まさか宰相がナンバー2だと思っているなんて。
皇帝陛下の次の位は皇后、次いで皇族ですわよ。実質、皇后様と同等の権力を持つのはディバイン公爵ですが。

「私は皇后陛下も皇族の方々も侮辱なんてしてないわ……っ」
「先程、宰相がこの国のナンバー2と仰ったではありませんか。皇帝陛下に次いで高位の存在は、皇后陛下、それに続いて皇族、そしてディバイン公爵ですのよ。とはいえ、デビュタントしたばかりの子供ですもの。ハリス侯爵にはお伝えいたしますが、大事にする気はございません。あなたはお家にお帰りになって、もう一度学び直す事をおすすめいたしますわ」

ご令嬢は真っ赤になって震えているが、本当でしたら皇族侮辱罪というれっきとした犯罪ですのよ。
ハリス侯爵もお気の毒に……この事を聞いたらまた髪の毛が抜けてしまうかもしれませんわ。

何も言えなくなったご令嬢の横を通り抜け、わたくしはノアのいる場所へと急いだのだ。

このことが、ちょっとした騒動になる事など、知らぬままに───……




「イーニアス殿下、あの的に向け、力を抑えたまま火の魔法を放ってください」
「うむ!」
「ノアも、イーニアス殿下の魔法をよく見ているように」
「はい!」

皇城内にある騎士団の訓練場の一部を借りて、テオ様が子供たちに指導している姿が見える。

あのテオ様が、本当に先生をしていますのね……。

先程の事で少し遅くなってしまったが、まだ指導は始まったばかりのようでホッと安堵の息を吐く。

愛息子の勇姿は、目に焼き付けておきたいですもの!

「二人は魔力コントロールも上手く出来ている。後は魔法に慣れる事が大切だ」
「「はい!」」

子供たちは素直に言う事を聞いて頑張っていますのね。


「お、おいっ、あのご令嬢、何であんな格好してるんだ!?」
「ドレスがビリビリじゃないか……」

何だか周りの騎士たちが騒がしいですわね?

騎士たちの目線の先がわたくしの後ろだと気付き、後ろを見ると、ドレスの袖やスカートがビリビリに破けた、先程のご令嬢が立っているではないか!

「え」
「酷いわ! どうしてこんな事をなさるの!?」

はいぃぃ?!

感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。