継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 天使たちのしゅぎょお2 〜 ノア4歳



「あ、あなた……っ」
「フッ」

ビリビリに破れたスカート、ボタンが飛んでいった胸元、ボサボサになった髪の毛……、それをわたくしのせいにしているということは……これは……っ

「あなたっ、もしかしてわたくしを追いかけてくる途中に、盛大に転びましたの!?」
「はぁ!?」
「何てことかしら!!」

わたくしが羽織っていたケープを肩にかけてあげ、「すぐ皇后様に連絡を取って客室をお借りしましょう!」とミランダにアイコンタクトを取り、注目している騎士たちから目隠しするようにご令嬢を支える。

わたくしが偶々ケープを羽織っていて良かったですわ。

「あなた、お怪我はございませんの? 侍女は連れてらっしゃらないの? 転んでびっくりなさったのでしょう。もう大丈夫ですわ。すぐに客室に案内してもらいますからね」

ボサボサになった髪を直すように、頭を撫でる。

15歳だものね。きっと盛大に転んで、恥ずかしさと心細さでわたくしを追いかけて来たのだわ。

「ち、ちが……っ」
「ドレスならお借りする事も出来ると思うの。髪も整えてもらいましょう。あらあら、泣かないでちょうだい」
「うぅ……っ、ど、どぉしてぇ?」

子供のように泣き出したご令嬢を抱きしめて、涙を拭ってあげる。
その間にミランダが城のメイドを連れて来てくれて、客室へと案内してくれた。

ご令嬢を支えながら移動している時、テオ様がこちらに向かって来ていたが、首を横に振って、来なくて大丈夫ですわとアイコンタクトしておいたので、子供たちの「しゅぎょお」を続けてくれるだろう。



「───……ぐすっ、申し訳、ありませんでしたぁ……」

客室でメイドに髪やドレスを整えてもらったご令嬢は、ぐすぐすと鼻をすすりながらわたくしに謝罪した。

「まぁ、よろしいのよ。皇城で盛大に転んでドレスが破れてしまうなんて、どれほど心細かったか……、わたくの注意も少し厳しかったですわよね。怖がらせてしまってごめんなさいね」

わたくし、悪女顔ですものね。
きっと、あの後怖くなって動揺していて転んでしまったのかもしれませんわ。

「ちがぅんですぅ……っ、本当に、申し訳ありません! ディバイン公爵夫人が、ぐすっ、こ、こんなに、やざじく、してくださると、お、思ってなぐで……っ」

せっかく涙も収まっていたのに、また泣いてしまいましたわね。

「わ、わたじ、失礼な態度、とってしまって……っ、そ、それに……ドレスも、公爵夫人のせいに、し、しちゃって……っ、ごめんなさい!!」

うわぁんと小さな子供のように泣くご令嬢に、城のメイドも驚いている。

「あらあら、ほっとしたら涙が出てしまいましたのね」

抱きしめて、背中をポンポンしてあげると、徐々に落ち着いてきた。

この子はまだ、精神面が幼いのだわ。でも、素直にごめんなさいが出来るのだもの。きっと素敵なレディになりますわね。

「大丈夫ですわ。デビュタントしてからずっと、気を張って来たのでしょう」
「うぅ……っ、違うんですぅ~!」

ご令嬢が首を横に振り、わたくしに必死に何かを伝えようとするが、鼻水が垂れているのが気になり、ハンカチで拭ってあげた。

「ありがとうございます……。あの、実は……最近お父様が、お仕事が忙しい事を理由に家に帰って来なくなって……っ、そしたらお母様が……“わたくしは、ディバイン公爵夫人のように自立いたしますわ! 離婚よ!!”って言い出して……っ、だから、公爵夫人に少し意地悪して、お父様を困らせてやろうって思ったんですぅ……っ」

あら、じゃああの失礼な態度は、わざとしていたんですのね。

それにしても、ハリス侯爵夫妻……完全にわたくしたち夫婦の被害者ですわよね。
ハリス侯爵は、頭が薄くなるまでテオ様に扱き使われて、奥様は何故かわたくしのように自立……って、わたくし、テオ様を頼りに生活しておりますから、自立出来ているのかどうかは分かりませんが、多分お仕事がしたいって事ですわよね?

ともかく、何とかしないと、ハリス侯爵が離婚されてしまいますわ!

「あなた、えっと……ハリス侯爵の娘さんなら、一人娘のカレンデュラ様、ですわよね?」

貴族名鑑にはそう載っていたはず。

「あ、はいっ、名乗りもせず失礼いたしましたぁ! 私、ハリス侯爵の娘で、カレンデュラ・メイ・ハリスと申しますぅ」

本当はそういう喋り方ですのね。可愛らしいわ。

「わたくしは、イザベル・ドーラ・ディバインと申します。よろしくお願いいたしますわ」
「はい!」

嬉しそうに頷くカレンデュラ様は、最初とは別人のように可愛らしい。

「カレンデュラ様、ハリス侯爵がお家にお帰りになれない原因は、わたくしの夫にもございますの」
「え?」
「わたくしの夫が、ハリス侯爵を頼りにしておりますから、お仕事を割り振ってしまって、お忙しいのです」
「そうだったんですか……私、今日は父の様子を見ようとこっそりやって来たんです。もしかして、浮気してるんじゃないかって思って……」

ハリス侯爵! 娘に浮気を疑われていたとは……っ、テオ様が申し訳ない事をしてしまいましたわ。

「大丈夫です。ハリス侯爵は浮気なんてしておりません。でも……侯爵夫人との仲直りは必要ですわね……」
「はい……」

しょぼんとするカレンデュラ様が可哀想で、罪悪感が湧き上がる。

「分かりましたわ! わたくしにお任せください。ご両親を仲直り……いえ、以前よりももっと仲良くさせてみせますわ!!」
「えぇ!?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~ おまけ ~


「おかぁさま、いないの……」
「さっきまで、あそこのベンチに、いたはずなのに……あっ! もしかしたら、おはなをつみに、いったのかもしれない」
「おはな?」
「いぜん、ははうえがいっていた。じょせいは、よくおはなを、つみにいくのだと」
「おかぁさま、おはなだいすきよ!」
「うむ! きっと、たくさん、おはなをつんで、もどってくるから、たのしみにまっていよう!」
「はい!」

※「お花を摘みに行く」→お手洗いに行くの隠語として、皇后様は使っています。


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