継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 天使たちのしゅぎょお3 〜 ノア4歳



侍女も連れて来ていなかったカレンデュラ様を、馬車で家まで送り届けた後、もう一度皇城に戻ってきたわたくしは、長い廊下を歩きながら、大きな溜め息を吐いた。

つい安請け合いしてしまったのだけど、夫婦喧嘩は犬も食わぬというから、あまり周りが口出しすべきではないですわよね……。

「どうするべきかしら……」
「ベル!」

もう一度溜め息を吐きかけた所で声を掛けられ、ハッと顔を上げると、テオ様がノアとイーニアス殿下を引き連れてこちらに向かって来ていた。

「テオ様、もう魔法の授業は終わりましたの!?」

天使たちのしゅぎょお、見逃してしまいましたわ……!

ショックを受けていると、ノアとイーニアス殿下が、

「おかぁさま、おはな、みちぇ…、み、せて?」
「イザベルふじん、おはなは、どこだろうか?」

と言い出したので首を傾げる。

「ベル、二人は、ベルが花を摘みに行っていたのだと、思っている」

少し顔を赤くしながら、言いづらそうにするテオ様の言葉に、子供たちの天使たる所以を改めて感じた。

「二人とも、お花はね、お家に帰ってしまいましたの」
「そおなの? ざんねんね」
「おうち……、おはなに、てあしがはえた? みたかったのだ」
「じゃあ、今度は皇后様ともご一緒して、皆でお花を見に行きましょう」

ノアとイーニアス殿下の頭を撫で、嬉しそうに頷く二人に頬を緩める。

それから二人は、「しゅぎょお」の事を楽しそうに報告してくれて、それを聞きながら馬車で皇宮へ移動していると、テオ様が真剣なお顔で先程の事について問いかけてきたのだ。

「ベル、先程の事だが……、あれは一体なんだったんだ」
「ご心配をおかけして申し訳ありませんわ。ご令嬢が転んでドレスを破ってしまったみたいで……、心細かったのか、わたくしに助けを求めてこられたので、ドレスと髪を整えて送り届けてきましたの。お怪我がなくて本当に良かったですわ」

すぐに駆け付けようとしてくれたテオ様を、押し止めてしまったから、気にされているのね。

「そうか……私はてっきり、おかしなものに絡まれているのかと思ったが」
『テオ~、チロミタノ~!』

その時、わたくしの肩に乗っていたチロが、テオ様の言葉を聞いて、突然テオ様に飛びついたのだ。

『アノコ、ベルニ、メッ、シタノ~』
「え、チロ?」
「ベルに、何かしたと言うのか……」
『イジワル、シタ~!』
「ちょ、」
「何だとっ」

チロがテオ様に泣きついているのだけど、出会った当初に自己紹介してもらえないという可愛らしい意地悪しかされていませんわよ?? だからテオ様も落ち着いてくださいませ。

それと、チロはこちらに来なさい。
心配してくれたのね。ありがとう。

「少し誤解がありましたが、とても可愛らしいご令嬢でしたわ! ですが……」
「やはり何かされたのだろう!」
「いえ、そうではなくて……実は、あのご令嬢、ハリス侯爵の娘さんなのですが……」

心配そうに見つめてくるテオ様に、先程の事を相談する。

「───なるほど、つまり、ベルは私が宰相に仕事を振り過ぎだと思っているのか」

あら、久しぶりにテオ様の拗ねたようなお顔を拝見しましたわ。

「今はあの大粛正で人材が不足している事は存じておりますわ。けれど、家に帰れておりませんのよ。少し仕事量が多いのかと思いますの」
「私は、宰相よりも多くの仕事をして、家にも帰っている」

わたくしの言葉に不満気に反論するテオ様に、「ご自身と他人を比べてはいけませんわ。人にはそれぞれ出来る仕事量というものがあるのですもの。処理能力は、皆違うものです」とお伝えすれば、思案するように黙ってしまった。

「おかぁさま、わたち、おてつだい、する!」
「え?」
「イザベルふじん、わたしも、おてつだいするのだ!」

わたくしの隣に座っているノアと、テオ様の隣に座っているアス殿下が、「こまっている、ひとのために、しゅぎょおしているのだ!」と言って頼もしく笑ったので、子供たちの成長に感動してしまいましたわ。

「そうですわね……お手伝い、してもらおうかしら」


◇◇◇


「ハリスこおしゃくふじん、こちらへ、どおぞ!」

皇城の玄関ロビーで、小さな紳士が御婦人の手を取りお出迎えする。

「え、あ、あの……殿下にご案内いただけるのですか?」
「うむ! このひのために、マナーのしゅぎょおを、したのだから、まかせるのだ!」
「かわい……っ、いえ、光栄でございますが、私はなぜ、皇城に招待されたのでしょうか??」

戸惑う御婦人に、小さな紳士…イーニアス殿下は、胸を張り、完璧にエスコートをこなす。

「きょおは、ハリスこおしゃくの、しごとぶりを、みてもらおうとおよびした!」
「え? 夫の仕事ぶり??」
「うむ! ハリスこおしゃくは、おしごとをがんばっているが、ふじんをふあんに、させたのだろう?」
「え……?」
「わたしの、ちちうえと、ははうえが、ハリスこおしゃくをたよってしまうから、ふじんは、ふあんになったのだろう?」
「ぃ、いえ、そんな……」
「だからわたしが、ふじんのふあんを、かいしょおしてあげたいのだ!」
「イーニアス殿下……っ」

殿下の可愛さにキュンキュンしているのだろう。
御婦人は手で口を覆い、はわわと呻いているではないか!

「さすが殿下ですわ。これでハリス侯爵夫人は今、萌……ゴホンッ、幸せの絶頂にいるはずです! さぁ、ノア、次はいよいよあなたの出番ですわよ」
「はい! おかぁさまっ、しゅぎょおの、せいか、みちぇ…みしぇてくるのよ!」

言い直しても言えてない所が、可愛すぎますわよ!


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