継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
64 / 175
番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 不死鳥の冒険3 〜 ノア4歳、イーニアス5歳



不死鳥視点


わし、至福である。

イーニアスとの食事は楽しかった。それに、びっくりするほど菓子やパンが美味かった。

「昨今のパンは、柔らかいのだのぅ。昔はこう……硬くてなかなか噛み切れんでな。スープに浸して食べるものだと、人間に教えてもらったもんじゃが」

しかも酸っぱいんじゃ! 思い出したら唾が出てきたわ。

「やわらかいパンができたのは、さいきんです。ディバインこうしゃくふじん……ノアのははうえが、こうあん、したのです」
「何? 小僧の母親が、柔く美味いパンを考案したというのか!?」

確か小僧の母親は、本来ならば小僧を産むはずが、悪魔のせいで運命を捻じ曲げられた被害者だったのぅ……。

「ほかにも、おもちゃや、へんけいばしゃ、それに、リュックも、タンブラーも、ディバインこうしゃくふじんが、かんがえたものです!」

ふじんはすごいのです! とキラキラした瞳で言うものじゃから、その夫人とやらに会いたくなってきたわ。
ちょうど小僧にも会いに行こうと思っておった所。ディバイン公爵家へ行けば会えるだろう。

「そうだイーニアスよ。人間の爺は、孫に小遣いというものをやるのだろう。わしも色々拾ってきた。管理者であるイーニアスにはこれをやろう」
「? とりさん、これは、なんでしょうか??」
「小遣いだ! おぬしの妖精とわけるがよい! この金貨は、今でも街で使えるようなのでな!」

わしも食い物を買いたいので、数枚手元に残し、後は可愛い管理者に袋ごと渡してやった。

わし、優しい爺だろう!

「さて、ではそろそろ小僧の所に行くとしよう」
「とりさん、もういってしまわれるのですか?」
「うむ。そうだ、イーニアスよ。その『とりさん』はやめて、名をもらえんか。わしに似合うおしゃれな名が良い!」
『ピヨじーちゃん!』
「そんなもんは却下じゃ! もっと格好良いのがよいのぅ」

イーニアスに名前を付けろと強請ると、イーニアスは暫く考え、

「『フィニ』はどうでしょうか」

と顔を上げて言ったのだ。

「フィニか! うむ。なかなか格好良いではないか。気に入った! 今日からわしはフィニだ!」
『フィニおじーちゃん!』
「フィニ、またあそびにきてください」
「もちろんじゃ」

イーニアスの頭を撫でた後、「小僧はどこに居るのか知っておるか」と聞けば、「いまは、ディバインこうしゃくりょうの、カントリーハウスにいます」と教えてくれたので、イーニアスの妖精に連れて行ってもらえるよう頼んだ。

仕方ないじゃろ。わし、ディバイン公爵領なんぞ知らんからな。氷の小僧とは繋がっておらぬし、イーニアスのようにはいかん。

「ではの、イーニアス」
「フィニ、おきをつけて」

手を振ってくれる管理者の何と可愛らしいことか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



一方、おもちゃの宝箱帝都支店では、


「赤い髪の方は珍しいので、店の周辺や宿を探してみましたが、もうこの辺りにはいないようです!」
「あの……、そのお客様はイーニアス第二皇子殿下に似ていたので、皇族の御方ではないでしょうか」
「な!? 皇族!? なんということでしょう……っ、これは急ぎディバイン公爵夫人にお伝えしなければなりません!」
「手紙を……っ」
「早馬を!」
「急げ、急げー!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イザベル視点


「っ、くしゅん……っ」
「おかぁさま、おかぜ? わたち、かんびょおするの!」

わたくしがくしゃみをした瞬間、ノアがお絵かきの手を止めてトトトッと駆け寄ってくる。
心配性なところが、最近旦那様に似てきましたわね。

「フフッ、ありがとうノア。お風邪ではなくただのくしゃみですわ。誰かが噂しているのかしら」
「おかぁさま、うわさちたら、どちて、くちゅんっ、なりゅの??」
「そういえば、どうしてかしら?」
「おかぁさま、ちらない?」
「そうねぇ。そうですわっ、ノア、図書室で一緒に調べてみましょうか」
「はい!」

ノアは描きかけの絵とクレヨンをお片付けして、「おかぁさま、とちょっちゅ、いくのよ!」とわたくしの手をきゅっと掴んだのだ。

「ええ。行きましょう」

手を握り返し、二人で図書室に向かおうとした所に……、

『アカ、さんじょー!』

ポンッとアカが現れたのよ。びっくりしましたわ!

「アカ! どおちたの? アスでんかは? アスでんか、どこ?」

イーニアス殿下を探してキョロキョロしているノアは、 そのうち首を傾げた。
イーニアス殿下の姿がないからだ。

『ノア、アス、いない! いま、べんきょーちゅー!』
「いないのね……」

あらあら、しゅんとしてしまいましたわ。

『でも、つれてきた!』

ん? イーニアス殿下は勉強中でお越しにはなれないのよね? 連れて来た??

「おおっ、わしとしたことが、姿を隠す魔法をかけたままだった!」

その時、知らない男性の声が聞こえて、ミランダと護衛がわたくしたちの前に出たのだ。


感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。