継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 不死鳥の冒険5 〜 ノア4歳、イーニアス5歳



不死鳥視点


真紅美しい羽に金色の長い尾、鋭く光るかぎ爪、我ながら完璧な造形よ。

「とりさん!」
「に、人間が……っ、ひ、火の鳥になった!?」
「ノア様っ、奥様! 火の粉が舞っております! 火傷の危険がありますのでお下がりくださいっ」

む、わしの火の粉で火傷などせんわ! 火傷をする者は、悪意のある者だけぞ!

『ノア、ベル、あちちってしない! だいじょーぶ!』

うむ。妖精よ、よく言った。

「ミランダ、この火の粉はどうやら火傷しないようですわ。妖精が言っておりますので間違いありません」
「あちち、ちないのよ」
「そうなのですか?」
『そうなのだぞ! わしの火の粉は、悪意のある者だけを燃やすのだからな』

フンッと息を吐き、胸を張る。真紅の羽毛が芸術的じゃろう。

「本当に、不死鳥でしたのね……」
『そうじゃ。わしは不死鳥のフィニ! おうむではないぞ。まぁ、おうむというのが何かはわからんがな』
「オウムも珍しい、鮮やかな色の鳥ですのよ」
『そうなのか? しかし……』

小僧の母親という娘を視ると、まさかの事実が発覚したのだ。

『こりゃ驚いたわぃ! 小僧の母御が、闇の女神の娘だとは思いもせんかった!』
「ちょ……っ」
『悪魔に運命を捻じ曲げられた者だとは知っておったが……小僧よ、おぬし本来ならば神の力も手にするはずの魂じゃったか……』
「かみ??」

小僧は首を傾げておるが、娘の方は自身の事を知っておったようじゃの。

『力を封印され、ひ弱な人間と同等にまで落ちてはおるがな……。む、何やら複雑な運命が絡まりあっておるのぅ。半神とはいえ、こんな魂は初めてじゃ』
「ちょっと、さっきから何を仰っているのかわかりませんわ!」
『? わからんだと。よく言うわ。自身が半分神……』
「お待ちになって!! それ以上喋ると、わたくしの旦那様がお怒りになりますわよ」
『なんじゃ、旦那だと? なぜわしがおぬしの旦那に怒られねばならん』
「それは、お喋りが……」
「これは何の騒ぎだ」

闇の女神の娘と話をしていた時じゃ、突然強大な魔力を感じ、わしの尾がピーンと張ったのだ。

寒いっ、なんじゃこの冷気は!?

「「閣下!!」」
「テオ様……っ」

娘と小僧の護衛は直立不動で青い顔をしており、只者でなさそうな娘の従者は、音もたてずに下がると、物影で気配を消す。

「ベル、ノア、何があった」
「テオ様、少し前にノアがお話してくれた、地下迷宮の焔の神殿に居る『とりさん』がお越しになったのですわ」
「おとぅさま、とりさん、フィニっておなまえ、アスでんかから、もりゃったのよ!」

わしは寒いのは苦手じゃ! このような冷たい魔力を持つ者が、この世におるとは聞いておらんぞ!! まるで魔王ではないかっ

「地下迷宮の、鳥だと?」

そう呟いてわしを見るもんじゃから、つい癖で、『鳥ではない! 不死鳥じゃ!!』と突っ込んでしもうたわぃ。そしたらこの魔王、氷点下の目を向けるもんじゃから、視線だけで凍るかと思ったわ。

「迷宮の鳥が、一体我が家になんの用があって来たのだ」
『そうじゃった! 実はの、イーニアスから、美味いものはそこの女神の娘が作り出しておると聞いたのでのぅ、気になって来てみたのじゃ』

ビキッと、わしの美しい尾の先が凍りついた。

『なんじゃと!? わしが、凍りつくなどありえぬ! おぬし、一体何をした!?』
「ほぅ……、私の魔法は凍らせた後砕け散るのだが、貴様は凍っただけで止まったか」
『攻撃!? こやつ、このわしに、攻撃しおったぞ!?』

パニックじゃ! わし、なにもしておらんのに魔王に攻撃されておる!

「おとぅさま、フィニ、こおりゃせるの、めっよ!!」

小僧……っ

「む……なぜだ。ベルの秘密を暴露するなど、到底許せぬ」
「フィニ、おかぁさまいじめて、ないのよ」

そうじゃ! わしが女神の娘を虐めるわけがなかろうが!

「しかし、ベルが困っていたように見えたが?」
「テオ様、フィニ様が少しおかしな事を話していたので、お止めしていただけですわ」

わしはおかしな話などしておらんぞ!?

「そうか……。てっきり、キノコたちのように君に集って迷惑をかけているのかと思ったが……」
『アカ、めーわく、かけてない!』
「毎日ベルに菓子を出せと喚いているだろうが」
『ベルのおやつ、すき!』

なんじゃこの魔王……っ、つがいを溺愛しとるのか!

『小僧、わしはこの夫婦には付き合いきれん! もう帰るぞっ』

この魔王がおらぬ時にまた、邪魔する事にしようぞ。

「フィニ、かえりゅ?」
『帰る! 良いか、小僧。おぬしの父のように、攻撃的な性格にはなってはいかんぞっ』
「? はーい!」
『それと、早いうちに風と水の神殿にも行くのだぞ! わかったなっ』
「はい! ちんでん、いくのよ!」
『うむ。ではまたな、小僧!!』
「はーい。ばいばーい」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



一方、おもちゃの宝箱帝都支店では、


「では皆様、硬貨のサンプルを回しますので、しっかり見てくださいね」
「「「「はい!」」」」
「最近は外貨なども使われる事が増えてきましたので、受け取る時には注意してください。とはいえ、周辺諸国の外貨の金銀銅の含有量は、グランニッシュ帝国と同じと定められておりますので、使用する事は可能です。が、古い硬貨になると注意が必要です───」

硬貨の勉強会が開かれ、間違いがないよう徹底されたのだが、頻繁に古い硬貨が持ち込まれるようになるとは、この時誰も予想していなかったのだ。


ちなみに、最初に使われた金貨は、数日後、ディバイン公爵夫人に報告がいき、無事返却されたという。


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