継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 狙われたイザベル7 〜 ノア4歳、イーニアス5歳

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『ベルの言う通りだったよ! 後、洞窟みたいな穴があって、そこから下へ行ける道が出来てたよ!』

正妖精の言葉に拳を握る。これで、飢える民を救えるかもしれませんわ!

「ベル、一体何事だ。チロから報告を受けて帰ってきてみれば、地図や文献が散乱している上、君は忙しなく動いているようだが……」
「まぁっ! テオ様、いつお帰りになりましたの!? まさか皇后様の転移で?」

テオ様の声が聞こえたと思い振り返ると、そこにはテオ様とウォルト、その後ろに皇后様が手を振ってアピールしていた。

「皇后様、テオ様が無理を言いましたのね。いつも申し訳ございませんわ」
「良いのよ! テオ様の望みはアタシの望みですもの! 推しの役に立てて幸せよ!」

相変わらず、テオ様大好きですわね。皇帝陛下がヤキモチをやいてしまいますわよ。

「テオ様も、お帰りなさいませ。ウォルトもお疲れでしょう」
「ああ。ベル、会いたかった」

一週間ぶりのテオ様が、ぎゅっと抱きしめてくださいましたわ。「キャーッ、情熱的!!」と皇后様が騒いでおりますが、ウォルトが落ち着かせておりました。

「それで、君は何をしていたんだ」

テオ様が机に広げてあった、ウィニー男爵領とグランニッシュの地図、そして歴史書を見て、呆れたようにわたくしに問いかけてきたのだ。

「実は、先程ウィニー男爵領からお客様がお越しになりましたの───」

先程の来客の事をテオ様に説明すると、皇后様が、

「確かに代替わりしたウィニー男爵が、陳情書を持って登城したわ」

と頷いている。

「雪崩で積もった雪が、火の季節(夏)に溶け固まって、氷壁になってしまったのだそうですわね。それを取り除く為の人員を嘆願しに行かれると、ケヴィンさんたちからお聞きしました」
「ええ。それと食糧、燃料の支援ね。大きな災害だったみたいで、早々に支援を送りたいのだけど、雪がね……」

夏ならまだしも、まだ春が始まったばかりですものね……。ウィニー男爵領は雪に覆われている状態ですから、行くだけでも大変ですわよね。

「そうですのね……、わたくしの方は、ウィニー男爵領だけがなぜ豪雪地帯になるのか、疑問に思いまして、妖精に頼んで調査に行ってもらいましたの」
『ボクが調査したのさ!』

胸を張る正妖精でしたが、「ほぅ……、お前は私が指示した事をすっかり忘れ、そんな事をしていたのか」とテオ様に言われて、「あ……」と何かを思い出し真っ青になって、わたくしの後ろに隠れてしまいましたの。

「? それで、すごい事がわかりましたのよ!」

正妖精がなぜ隠れたのかはわかりませんが、そんな事よりも、調査結果ですわ!

「こちらの地図をご覧くださいませ」

テオ様と皇后様にウィニー男爵領の新旧の地図を見せる。

「ウィニー男爵領地は、緩やかな丘の上にあるものだと思っておりましたが、実は山頂でしたの」
「ウィニー男爵領は標高が高いから豪雪地帯? でも、他の領地も標高は変わらないわよね」
「そうなのです! なんなら、帝都ともほぼ変わらない標高なのですわ。にも関わらず、豪雪地帯というのは不思議ですわよね」
「そう言われて見れば……ただ、北の国は雪深いと聞くし、ウィニー男爵領もグランニッシュ帝国の北端にあたるから、それで気候が……というわけではないのね?」

皇后様は推測しつつもわたくしを見て、他に理由がある事に気がついた。

「はい。北端に位置するからではなく、実はウィニー男爵領の下には、大量の『氷の魔石』が埋まっているのですわ!」
「!?」
「こ、氷の魔石ですって!?」

魔石とは、魔法を込めることの出来る不思議な石のことだ。
たとえばディバイン公爵領の領都では、ライトの生活魔法を込めた魔石が、街灯に埋め込まれ使われている。
ディバイン公爵領が民も含め裕福なのは、宝石が採掘出来る鉱山の他に魔石を採掘出来る鉱山を所有しているからというのも大きいのだ。

そんな魔石が、氷の魔法という、ディバイン公爵家の直系にしか使えない魔法を含んだ状態で、大量に見つかったという事は、ウィニー男爵家の立ち位置が大きく変わるという事を示唆しているわけで……、

「待ってちょうだい! マズいわよ……、これはマズい事よ!! ただでさえ忙しいのに、これ以上は容量オーバーよ!」

予想通り、皇后様は頭を抱え叫んでいますわ。

「……なぜ氷の魔法が込められた魔石が、ウィニー男爵領から出てくる」

わたくしではなく、その後ろ、正妖精を見て問いかけるテオ様に、正妖精がおずおずと出てきた。

『わ、わからないけど、あの領地って、元々【ウェルス】が避暑地にしていた場所だよね……?』

そう、古い地図を見ると、明記されているのだが、ウィニー男爵領は元々、ディバイン公爵領だったのだ。

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