継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 ノアと祝福の儀2 〜 ノア5歳



「皇帝陛下、本日は我が息子のためにこのような場まで赴いていただき、誠にありがとうございます」
「うむ! ノアのためだ。盛大に祝うのだ!」
「皇后陛下、イーニアス殿下も、わざわざお越しいただき、感謝いたします」
「テオ様の正装を見る……ゲフンッ、可愛いノアちゃんの祝福の儀だもの。楽しみだわ!」
「うむ! ノアは、べっしつに、いるのだな」

キョロキョロと探し、ノアがいない事に気付いたイーニアス殿下は、自分も経験があるのですぐにノアが別室へ待機している事を理解していた。

「はい。息子は別室で清めの儀式を受けております。殿下も一年前に受けられたとは思いますが、それが終わりましたらこちらで祝福の儀が始まります」
「おぼえている。あたまに、せいすいを、ふられたのだ」

テオ様と一年前の祝福の儀について盛り上がっているイーニアス殿下の横で、皇后様が、わたくしのお腹を見て、「イザベル様、出産予定日まで後ふた月だったわよね。体調はどうなの」と話しかけてくる。

「はい。まだ臨月ではないですが、やっぱりお腹が大きくなると、歩くのもままなりませんわね。でも、元気はありますわ」
「あら。イザベル様、臨月になるともっと大きくなって、下に落ちてくるわよ」
「今でもお腹が張り裂けそうなのに、本当にこれ以上大きくなるのでしょうか……」
「なるわよ。人体は不思議なんだから! 多分今も腰は痛いし、足も浮腫んでいるかもしれないけど、これからが踏ん張りどころよ!」

さすが出産経験者。よくご存知だわ。

「でもそうやって、日々大切さやかわいさが増していくのよね。毎日触って、毎日話しかけて……」

イーニアス殿下がお腹にいた時のことを思い出しているのだろう。皇后様はイーニアス殿下を見てから、自分のお腹をそっと撫でていた。

「朕も……イーニアスがレーテのお腹にいる時、たくさん話しかけたかったのだ……」

皇帝陛下は洗脳されていましたものね……。

少し寂しそうなお二人に、

「わたしは、ちちうえとははうえが、いま、わたしにはなしかけてくれるほうが、もっとうれしいのです!」

とイーニアス殿下が言った時、少しうるっとしてしまいましたわ。



「───……これより、ノア・キンバリー・ディバインの、祝福の儀を執り行ないます」

教会の祭壇には、創造神、と焔、水、風、土、光、闇の六神の像が並び、そこに白い礼服を上から羽織ったノアが跪いている。

まるで神々の前で天使がお祈りしているみたい……。

ノアの周りでは、ふわふわとキノコを光らせるアオと妖精の卵たちが踊っている。アカはイーニアス殿下に抱っこされ、キノコを揺らしながら光っていた。正妖精は、フロちゃんのそばでニコニコとそれを見ている。

するとフワリと風がふき、キラキラと妖精の卵たちが風にのって舞い始めた。

『風の神だね』

イーニアス殿下の時の虹の光はなかったけれど(すでに祝福されているから)、正妖精が呟いた瞬間、キラキラの妖精の卵が混ざった風が、ノアの前に集まっていき、人の形を作っていく。

そして、淡いグリーンの長い髪をなびかせた美しい女性が現れたのだ。

「きらきらのかぜから、ひとができたのだ……」
『アス、あれかぜのめがみ! ひとちがう!』

アカ曰く、風の女神様らしい。
テオ様を見ると、表情がピクリとも動いていないので、予想していたのだろうかと感心する。

『風の神、すっごく嬉しそう。ノアに直接会えたからかな。テンション上がってるね! 頭まで撫でてるよ』

何だか推しに会えて悶えている人に見えてくるわ……。

すると、女神様はこちらをニコニコと見て、その後わたくしの後方を見てからギョッとした顔をして、慌ててかき消えたのだ。

何かしら?

わたくしも後ろを見るが、お父様とオリヴァー、サリーにドニーズさんとフロちゃん、正妖精そのさらに後ろにウォルト、ミランダ、カミラと、いつものメンバーしかいないのだけど??
横にはムーア医師にマディソンだし……。

「水の神はいないようだな……」

テオ様が呟くが、わたくしふと思ったのですわ。

「水がないと来られないのではないでしょうか??」
「焔の神は火柱が上がって現れただろう」
「でも、その前に蝋燭の火が収束していくような感じもありましたわ」
「……それならばあの聖水が、」

テオ様が喋っている最中だった。
突然、祭壇に置かれていた、聖水が入っていたアンティークな水差しの容器が倒れ、中身が溢れ出てしまったのだ。

『コワイ! アス、アカコワイ!』
「アカ、どうしたのだ?」

アカがイーニアス殿下に抱きついて震えだす。
アオも愉快なダンスを止め、ノアに抱きついていた。

「な、何かしら……」

ぴちゃん……、ぴちゃん……、と祭壇の上に拡がった水が、床へと落ちる。

そして───……

「何だ、あれは……っ」

テオ様が息を飲み、水溜りを見ているので、何かしら? と注目すると、

ぬっと手が出てきたではないか!!

「ヒェッ!」

手は、そこにあるものを確かめるように動き、その後ズボッと勢いよく肩まで出すと、ぬっと頭が出てきたのだ。

こ、これ……、これはまさか……っ、井戸の中から出てくる呪いの……っ

ぶはぁ! とびっちょびちょの長い髪をしたたらせ、顔も髪で隠れてしまっているが、水溜りからはい出てきた男性は、祭壇をはって下ってき、ゆらりと立ち上がった。

『アオコワイ!! ノア、みずのかみ、コワイ!!』

やっぱりあの呪いのビデオから出てくる系の人、水の神なんだわ!!

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