継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 シモンズ伯爵の事情2 〜 ノア5歳、イザベル出産間近



『イザベル様! 大変よっ』

父が来た日の夜だった。お風呂の後、おじいさまと一緒に寝ると、嬉しそうに客室へ行ってしまったノアにショックを受け、息子がいない寝室で寂しい気持ちになりながらテオ様を待っていた時だ。突然チロが叫び、びっくりして声を上げそうになった。

「な、何事ですの!?」
『イザベル様! エンツォ・リー・シモンズ伯爵に対して、当主の座を不当に奪ったと主張する者が、裁判の許可を皇室に求めて来てるのよ!』

皇后様!? 妖精通信ね。びっくりしたわ……って、

「はぃ? 今なんと仰いましたの!?」
『あなたの父親が、シモンズ伯爵家の当主を不当に継承しているって、裁判を起こそうとしているバカがいるのよ!!』

何ですって!?

「不当に継承って、そんなわけありませんわ! あんな貧乏伯爵家を継ぐ人がいないから、父は仕方なく当主になりましたのよ!?」
『それは少し前の話でしょう。今のシモンズ伯爵家は、名実ともに、名家よ!』
「ですが、突然裁判だなんて、そんな無茶苦茶な事出来るわけが……」
『それがね、調べてみたら、この訴えてきている人物、イザベル様のおじい様のお兄様……前当主の息子らしいのよ。シモンズ伯爵からすれば、従兄弟にあたるわね』
「え!? ウチに親戚なんていましたの!?」

今の今まで姿を現す事も、名前を聞く事もなかったのですけど!? てっきり全員亡くなった、もしくはシモンズと縁を切ったものだとばかり思っておりましたわ……。

『名前はイルデブランド・ウーゴ・シモンズ。今はイルデブランド・ウーゴ・バルバーリと名乗っているわ。バルバーリは母方の子爵家の姓ね』
「そうですの。バルバーリ子爵家が親戚だったとは初耳ですけれど」
『偽装を疑ったけれど、本当にシモンズ前当主の息子みたいよ』
「それで、その方はどのように主張されているのでしょうか」
『そのバカは、シモンズ伯爵家の前当主の息子である自分こそが、本当の後継者である。エンツォ・リー・シモンズは、後継者である自分が帝都にいるのを良い事に、病気の父に無理矢理当主の座を譲るよう脅迫し、当主となった。したがってこれは不当行為であり、当主の座をすぐに明け渡すべきである。なんて事を主張しているわ』

そんな滅茶苦茶な事、通るわけがない。
父は脅迫どころか、借金だらけの伯爵家の当主の座を押し付けられたに等しいのだから。

「そのようなおかしな主張が通るわけございませんわ」
『それがね、証拠があると言い出しているのよ』
「証拠……?」
『前当主が、イルデブランド・ウーゴ・シモンズに伯爵家を譲ると書いた書面が残っているの。こちらも調査した結果、本物だという事がわかったのよ……』

大方、前当主は最初に息子を当主に指名し、借金だらけの伯爵家など継がないと逃げられたのだろう。そして、残った父に当主を託して亡くなったというのが真相だと思われる。

「こちらにも、父が伯爵家当主を継いだ際に、皇室に提出した書面があると思うのですが」
『もちろんあるわ。ただね、日付を確認したところ、イルデブランド・ウーゴ・バルバーリの持っている書面の日付の方が新しい事がわかったのよ』
「ありえませんわ!」
『アタシもそう思うわよ。何か裏があると思うけど、当主の印章が押されているのよ……これじゃあ、裁判になった時勝てないわ……』
「そんな……っ」

このままでは、シモンズ伯爵邸が他の人の手に渡ってしまいますわ……っ。あの場所は、母との思い出が詰まった場所だというのに……。せっかくお父様が元気になってきた所ですのよ。あの場所を失ったら、今度こそお父様は、生きる気力をなくしてしまいますわ。

「何とかしなくてはなりませんわね。皇后様、その書類、確認させていただく事はできまして?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「上手くいったな。印章を親父に見せてもらった事があって良かったよ。まさかエンツォも、私が偽の印象を持っているとは思わないだろう」
「しかし、すぐにバレるのではありませんか? 皇室に印章登録しておりますし」
「ハハッ、私は正当なる後継者だぞ! 印章は何度も見た事がある。本物そっくりな印章を作らせるのなど、造作もない事だ」
「そうですか」
「裁判に必要な書類も揃えているし、抜かりはない。近々皇室からも返答があるだろう」
「はい。イルデブランド様が、シモンズ伯爵家当主になるのも時間の問題ですね」
「そう! 子爵などという地位は、高貴な私にはそぐわんのだ!」

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