継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 シモンズ伯爵の事情5 〜 ノア5歳、イザベル出産間近



淡々とイルデブランド・ウーゴ・バルバーリを追い詰めていくテオ様に対し、なおも嵌められたと主張するバルバーリ子爵に、もはやその場にいる全ての人が胡散臭い目を向けている。

「先程提出したものが偽造印章の模倣をしたものだが、バルバーリ子爵家を家宅捜索し、発見した印章がこれだ」

どこからともなく現れたウォルトが、すかさずテオ様に差し出したものは、先程の模倣品にそっくりなシモンズ伯爵家の印章であった。

「な……っ、そんなはずはない!」
「どうしてそのように言い切れる」
「そ、それは、私がそんなものに関与していないからで……っ」

バルバーリはそう言いながら、胸ポケットに手を入れ、ズボンのポケットに手を入れと、おかしな動きをしているではないか。

「ああ、もしかして……この偽造印章を入れていた隠し金庫の鍵を探しているのか」
「!?」
「だとしたら、鍵はここにある」
「何故貴様がその鍵を!?」
「部下からは、お前の執務室の机の引き出しに入っていた、と報告を受けているが?」
「バカな!! 私は肌見放さず持ち歩いていた……それに、あの隠し金庫の場所がわかるはずはない……!」

あの方、皆様の前で自白を始めてますわよ。
どうして犯人は、追い詰められると途端に自白してしまうのかしら?

『あれ、アオがとってきた!!』
『そして隠し金庫を見つけたのはボクさ!』
「きゃあ!?」

突然現れた正妖精に驚き、悲鳴を上げてしまいましたわ。

『アカ、あっちのしばられてるやつ、アジト、みつけた!』

妖精たちが口々に、自分がどれほど頑張ったのかを誇らしげに話し出し、ノアは拍手しているが、わたくしは呆然としてしまう。

「いつの間にそんな事を……っ」
『あの縛られている人間、ひと月前に絵画の模倣品を販売してテオの部下が捕まえたんだけどね、ポケットの中から偽造印章が発見されて、優秀なボクらに、アジトを見つけられるかって、テオが頼ってきたわけさ! もちろんだよって、チョチョイのチョイで見つけたのは言うまでもないよね!』

言うまでもないって、言ってますわよ。

『アカがみつけた!』
『アオ、あのかぎとった!!』

それにしても妖精たち……上手いこと使われていますわね……。

『それでシモンズ伯爵家の印章を見つけてね、テオが偽造印章を誰に売ったのか吐かせて、イルデブランド・ウーゴ・バルバーリに辿り着いたんだ。それでアイツが動き出すのを待ってたってわけさ』
『いちもーだじん!』
『テオ、ワナはった!!』
『全部テオの手の中で転がされていたって事だね』

やっぱり、テオ様は全てご存知でしたのね!

「お父様もご存知だったの!?」
『エンツォにも協力してもらったよ』
「まぁっ、わたくしにも教えてくだされば良かったのに!」
『ベルは今大事な時期じゃないか。テオもベルに心配をかけたくなかったんだよ』
「それはわかっておりますが……」

それでも、知らないよりは知っておきたかったのですわ。

苦笑いする正妖精にぶつぶつ言っている時だった。

「エンツォ! 正当な血筋である私が、シモンズ伯爵家を継いでやると言っているんだ! どこの馬の骨ともわからん女の子供に継がせるよりも、私の方がよほど確かな血筋だろう!!」

バルバーリ子爵が、衛兵に捕縛されながら叫んだ言葉は、わたくしの母とオリヴァーを侮辱するものだった。

「私の妻と子を侮辱するとは……、愚かな君には、シモンズはおろか、バルバーリ子爵家の当主さえも相応しくはない」
「何だと!!」

バルバーリ子爵は、父に何かを叫びながら両脇を抱えられ、衛兵に引きずられていった。

彼はまた、この法廷に立つ事になるのだろう。今度は被告として。

傍聴席に居た数人の貴族が逃げ出そうとしていたが、出口で張っていた騎士たちに捕まり、連行されているのが見えたので、妖精たちの言う通り、この件に関わった者は一網打尽にされたらしい。

「終わりましたのね……」
「おかぁさま、おじぃさまのごかい、とけた?」

ノアが首を傾げてわたくしを見るものだから、可愛すぎて抱きしめたくなりましたわ!

「ええ。テオ様が、おじぃさまの誤解を解いてくださいましたわ。格好良かったですわね」
「はい! おとぅさま、かっこいいの」
「ふふっ、テオ様にも直接そう言ってさしあげて。きっととても喜びますわ」
「おかぁさま、わたし、はずかしいのよ」

あらあら、わたくしに対しては素直ですのに、お父様に対しては恥ずかしがってしまうのね。なんて可愛いのかしら。

『ねぇ、ベルのお母さんって、貴族じゃないの?』

正妖精の質問に「そうよ」と頷く。
とはいえ、礼儀作法もピアノも、高位貴族並みに身に着けていた母を、庶民だったとはとても思えないのだけれど、母本人が貴族ではないと話していた事があるので、庶民なのだろう。

『ベルのお母さんって、教会の関係者?』
「え? どうしてそう思いますの?」
『前に言った事があるけど、ベルは特殊な魂をしてる』
「それは、回帰しているからではありませんの?」
『ボクも初めはそうなのかなって思ってたけど……オリヴァーもちょっと特殊だし……お母さんの影響なのかなって少し思ったんだ』

お母様が、教会の関係者……?

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