継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
118 / 186
番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 イザベルの里帰り3 〜

しおりを挟む


「夢に潜るって……危険はないんですの!?」
「心配はございません。カーラは闇の神獣。夢のスペシャリストです」

夢のスペシャリスト!?

「それでは二時間ほど、アベル様をお預かりします」

ちょっと不安だけれど、サリーとカーラだもの……大丈夫よね。

「ええ。アベルの事、お願いしますわね」
「承知しました」

サリーはアベルを連れてカーラの所へ行ってしまった。恐らく、裏庭に面したカーラの部屋だろう。
あそこは部屋から裏庭に出られるからと、母もよくお邪魔していたのよね。

「さぁノア、おじいちゃんと遊ぼう!」
「はい!」

お父様とノアはこれから遊ぶ気満々で、お父様の補佐官が「旦那様!? 執務が……」と泣きそうな顔をしているのだけど、補佐官には残念な事かもしれないが、ノアがいる一週間は仕事をする気はないだろう。

父は、家族と遊ぶ時はとことん遊ぶというスタンスの人だから。

「何して遊ぼうか?」
「あのね、あのね、おにわで、かくれんぼ!」
「そうか! じゃあ、かくれんぼをしにお庭へ行こうね」
「はーい!」

あら、二人ともお庭に行くのね……え、もしかして裏庭かしら? カーラの部屋のすぐそばで遊ぶつもりなの??

何だか嫌な予感がして、二人の後を急いで追ったのだ───……




「だめー! アベルに、ちかじゅいた……っ、だめー!!」

嫌な予感が的中したのか、ノアの大声が聞こえ、急いで見に行くと、カーラの部屋のベッドの上に、ノアとアベルが寝かされていた。

これは、どういう状況ですの!?

そばにはサリーと、何が起こったのかわからず困惑する父とノアの護衛の姿があったのだ。

「何がありましたの!?」

呆然と立っている三人に声を掛けると、父が首を傾げこう言った。

「ノアがね、サリーがアベルをベッドに寝かせているのを見て、急に叫んで……突然気を失うように眠ってしまったんだ」

え?

「気を失う!? ノア……、ノアは大丈夫ですの!?」
「見てごらん。幸せそうにすやすや眠っているよ」

父の言葉に、ベッドの上のノアを見ると、それはもう幸せそうに、ぴすぴすと鼻息をたてて、眠っていた。

「馬車の移動で疲れていたのかな? このまま眠らせてあげよう」

そう言って父は部屋を出ていき、護衛は部屋の扉の外側へと移動したのだ。

「……サリー、一体何がありましたの?」
「お嬢様……、実はカーラが神獣の姿でアベル様の夢に入ろうとしていた時、ノア様がそれを目撃してしまったようで、アベル様が獣に襲われていると勘違いし、そのままカーラに触れて一緒に夢の中へと入ってしまわれたのです……」

な、何ですって!?

「ノアが、アベルの夢の中に入った!?」
「正確には、ノア様とアベル様の夢が繋がった状態です」
「危険は!? 危険な事はありませんの!?」
「カーラがおりますので問題ございません」

サリーはそう言うが、わたくしは心配でたまらない。

「ノア……」

一見すやすや眠っているノアの手を握り、無事に夢から醒めてくれる事を願うしか出来ない自分に、苛立ちが募る。

「お嬢様、大丈夫です。眠っているだけですので、二時間経てばすっきり目覚めます」
「それは、確実なの?」
「はい」

サリーが言うのだからそうなのだろう。

「わかりましたわ。でも、予想外の事だったから……わたくしは、ノアとアベルのそばにいますわね」
「……承知しました」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ノア視点


「───ここは……」

私は先程まで戦場にいたはず……、ここは一体……

『ノア様、ご無事で何よりです』
「!?」

いつからいたのか、私のそばには大きな黒豹が座っていて、こちらをじっと見ていた……。

「喋った……?」
『私はカーラ。闇の神獣です』
「人間の言葉を、喋った……っ」
『神獣ですから。それより、予想外だったのは夢の中のノア様のお姿です。まさか“魂の記憶”が呼び起こされるとは……』

魂の記憶……? 何だそれは……いや、それより神獣??

『ここはあなた様と、あなた様の弟君の夢の中なのです』
「夢……そうか、どうりで現実味が感じられないと思っていた」

私に弟はいないし、獣が喋るなんて……夢に違いない。
明晰夢というものだろうか。

『あなたは私が弟君を襲っていると勘違いされ、丁度夢の中に入ろうとしていた私に触れてしまい、精神が一緒にダイブしてしまったのです』

夢とはいえ、話が突飛すぎてわからない。

「あの、カーラ……と呼んでも?」
『はい』

黒豹は頷くと、長い尻尾をゆったり揺らした。

「ではカーラ、ここは……なんというか随分……変わった場所のようだけど」
『お菓子で出来た街ですね。可愛らしいです』

私は、何故こんな子供のような夢を見ているのだろうか……。

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

【完結】あなたの『番』は埋葬されました。

月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。 「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」 なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか? 「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」 そうでなければ―――― 「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」 男は、わたしの言葉を強く否定します。 「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」 否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。 「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」 「お断りします」 この男の愛など、わたしは必要としていません。 そう断っても、彼は聞いてくれません。 だから――――実験を、してみることにしました。 一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。 「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」 そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。 「あなたの『番』は埋葬されました」、と。 設定はふわっと。

処理中です...