継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 イザベルの里帰り4 〜 ノア5歳



ノア視点


「───つまり、カーラは事故で5歳の私の夢に、精神体の私と入ってしまい、何故か大人の私が現れ驚いていたという事?」
『はい。稀に前世の記憶を持つ方は、前世の姿が夢に反映される場合もあります。それを“魂の記憶”というのですが、ノア様は前世の姿が反映されたようです』

黒豹の神獣であるカーラから詳しい話を聞いていたんだけど、ますます混乱してくる。

私が”前世の記憶”で、今の私は5歳なのだと言われても……。しかも別人ではなく、同じノア・キンバリー・ディバインとして生まれ直しているとはどういう事なのだろう。

こんなおかしな夢は、あの時以来…………、

『ノア様、私はこれから、アベル様の所へまいります。ですので、ノア様も一緒に来ていただきたいのです』

アベル……それは義母が産んだ私の弟らしい。
あの冷酷な父が、本当に義母と子供を作ったのか、信じられないでいる。

「それは構わないけど、その、アベルって子は、どこにいるかわかるの?」
『はい。あそこに見える夢の境目から、アベル様の夢です。その中心にいらっしゃいます』

カーラはもふもふした片手をスッと上げ、虹色の空を指す。そこにはくっきりと境目があり、なるほどと納得する。

『それでは参りましょう』
「ああ……」

私がこの不思議な夢をすぐに受け入れたのは、1年前に見た不思議な夢のせいかもしれない。

そこに出て来たのは義母の幽霊だった。
義母は……憑き物が落ちたように落ち着いていて、初めて会った頃の優しい義母の姿で……、私との約束を、覚えてくれていた───

『ノア様、私から離れないようにしてください』

はぐれないよう、その長い尻尾を私の腕に巻き付けたカーラは、夢の境に向けて走り出した。

しかしその時、地面が大きく揺れたのだ。

「何だ!?」
『あれは……、』

カーラが上を見る。私もつられて顔を上に向けると……

「ぇ、お父様……?」

随分前に亡くなったはずの父が、何故か巨大化し、ズシンッ、ズシンッと地面を揺らしながら歩いていたのだ。

『ディバイン公爵ですね。お小さいノア様には、とても大きく見えるのでしょう。そんなイメージが、この夢に反映されています』

どうやら、幼い頃の私は、父をあのような巨人だと思っていたようだ。

言われて見れば、大きい人だと思っていたかもしれない……。

私を見下ろすあの冷たい瞳が、ひどく恐ろしく感じていた。

『ノア様、巨大なディバイン公爵が、境目まで連れて行ってくださるそうです』
「え?」

見れば、巨大な父は片膝を付き、手のひらに乗れというように私たちの前に大きな手を差し出していた。

その目には、あの冷たさはない。

『せっかくなので運んでもらいましょう。時間短縮になります』
「ぁ、そ、う……だね」

巨大な父の手のひらに乗ると、立ち上がり動きだす。
思ったよりも揺れはなく、なんとなくだが、父か揺れないようにしてくれているんじゃないかと、そんな風に感じた。

あっという間に夢の境目に到着し、降ろされる。

父ともここでお別れか……。

「気をつけて、行ってこい」

境を渡ろうとした時だ。
父が……あの父が、そう言った。

『ノア様、どうかされましたか?』
「……いや、何でもないよ」

境を渡り、ふと振り返って見た光景に、ドキリとした。

父の肩には、青いドレスを纏った義母が座っていて、父の頬に寄り添い、互いに微笑み合って……そして、私を見て手を振っていたのだ。

これは、幼い私の夢。イメージ。

「お父様とお義母様は……、」
『ノア様?』
「……何でもない。行こう───」



幼い私の夢は、お菓子の家や青いシュワシュワした水に浮かぶ大きな船、虹色の空に綿のようだけど甘い香りの雲がある子供らしい夢だが、境目からはガラリと変わり、何というか……白くて柔らかい布団に包まれているような、そんなイメージが広がっていた。
上も下も横も、全てが白く柔らかい。

『地面が柔らかいので、足をとられてしまいますね……』
「先程とは違い、何もないな」
『アベル様はまだ赤子ですから、布団のイメージが強いのかもしれません』

ああ、赤ん坊ならそうなのかもしれない。

『いらっしゃいました』

カーラの言葉に前を見ると、優しい光を帯びた繭のようなものがそこにあったのだ。

『あの繭の中に、アベル様がいらっしゃいます』
「あの中に?」
『さすが聖者ですね。光の力が強い……』

小さな声で呟いたそれは、私の耳には届いてしまった。

「聖者……?」

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