継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
114 / 175
番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 家族旅行2 〜 ノア6歳間近の5歳



「赤ちゃんのお世話なら私がしますぅ」
「あなたは確か、こちらの別荘の管理を任されている男爵夫妻のお孫さんでしたか? アベル様のお世話は私が任されておりますので結構でございます」
「そんな事言わないで任せてぇ。あたしぃ、おねえちゃんの赤ちゃんのお世話してるしぃ、子供も好きだしぃ」
「主の大切なお子様をお任せするわけにはまいりません。それと、あなたはなぜこちらにいらっしゃるのですか?」
「え? だってここぉ、あたしのおじいちゃんのウチぃ? だし?」
「こちらはディバイン公爵家の別荘であって、男爵家ではございません。どうぞお早くお帰りください」


マディソンの絶対零度な声で、そんな会話が繰り広げられているのが聞こえて来たのだ。

テオ様の顔を見れば、眉間にシワが寄っていたので、指のはらでシワを撫でていれば抱きしめられましたの。

「テオ様、マディソンが困っているようですので、わたくし行ってまいりますわ」
「いや、ベルがおかしな女の対処をする必要はない」

テオ様はそう言って立ち上がると、応接間を出た。

テオ様が対処すると、大騒動になりそうで不安なのですが……。

「きゃー!! 誰ぇ!? なんてステキなのぉ!!」
「お下がりなさい。あなたが近づいても良い方ではありません」

案の定絡まれておりますわ。やっぱりわたくしが行かないといけませんわよね。
テオ様、未だに女性が苦手ですし。

「何事ですの?」

扉を開け、妙齢の女性に絡まれているであろうテオ様を想像して顔を上げたのだけど……、

「誰ぇ? またキレイな人が来たぁ!」

想像とは違い、そこにいたのは12、3歳くらいの女の子だったのだ。

さすがのテオ様も、子供に氷点下の対応は出来ないのだろう。眉間にシワを寄せたまま、少女から少し離れた所で固まっている。

「こんばんは、お嬢さん。わたくしは、イザベル・ドーラ・ディバインと申しますわ。あなたのお名前をおうかがいしてもよろしいかしら?」
「はぁい。わたしぃ、メアリー・ローズ・オズワルドと申しますぅ。おねぇさんみたいにキレイな女性、初めて見ましたぁ! 都会的で、洗練されていて、憧れますぅ!」
「ディバイン公爵夫人に向かってなんという無礼でしょうか。オズワルド男爵は、孫娘の教育をやり直すべきでしょう」

貴族というよりは、庶民に近いフレンドリーさで話しかけてくる少女に、マナーに厳しいマディソンが憤っている。

確かに、デビュタントまでに直さなければ、貴族令嬢としては大変でしょうけど……ここで暮していくなら問題なさそう……? 逆にこのフレンドリーさは武器になるかも。

「マディソン、大丈夫よ。アベルを部屋に連れて行ってあげて」
「奥様……、かしこまりました」

マディソンは心配そうな顔をしたが、ぐっすり眠っているアベルを連れこの場を離れた。

「あ、可愛い赤ちゃん、バイバーイ」

この子、純粋に赤ちゃんのお世話をしたかったのだわ。

「メアリーさん、赤ちゃんがお好きなの?」
「はい! わたしぃ、おねえちゃんの赤ちゃん、いつもお世話してるんですぅ」
「まぁ、赤ちゃんのお世話だなんて、偉いのねぇ」
「おねえちゃん、赤ちゃんのお世話に疲れてて……わたしぃ、少しでもたすけてあげたくてそれでお世話してたらぁ、赤ちゃん、すっごく可愛くてぇ!」

うん。とっても良い子でしたわ!

「そうでしたの。ですが、なぜこんな時間に出歩いておりますの? いくら治安が良いとはいえ、レディが一人で出歩く時間ではなくてよ?」

今20時よ? 子供が出歩く時間ではないでしょう。

「それはぁ……」

言い難そうに俯きスカートをぎゅっと握るメアリーちゃんに、何か事情があるのだとテオ様を見ると、頷いて応接間の扉を開いてくれたのだ。

「メアリーさん、お茶でも飲みながら、座ってお話しましょうか」


◇◇◇


「───わたしぃ……おねえちゃんを怒らせちゃってぇ……」

温かいおちゃを飲んで落ち着いたのか、さっきまて沈んでいたメアリーちゃんが、ポツポツと話してくれるようになった。

メアリーちゃんの話はこうだ。

旦那さん(義兄)は忙しくあまり家に帰ってこれないそうで、一人で赤ちゃんのお世話をし、ほとんど眠れていないお姉さんのために、お料理を作ってあげようと、赤ちゃんの面倒を見ながらサラダを作っていたら、たまたま赤ちゃんの手がサラダの入ったお皿に当たってしまい、床に落ちて割れてしまったのだそうだ。
それがお姉さんのお気に入りのお皿で、しかも赤ちゃんがそばにいる時にそんな危ない事が起き、片付けもしなければならないと、色々な事が重なって、お姉さんに、「もう……っ、余計なことしないでよ!!」と怒られてしまったらしい。

「おねえちゃん、わたしのこと嫌いなのかもぉ……。それで、出ていけって言われてぇ……おじいちゃんの所に言ったけどいなくて、おじいちゃんがいつもいるもう一つのおウチにいると思って来たのぉ」

メアリーちゃんのお姉さん、典型的なワンオペ育児で疲れ果てているみたいね……。妹に出ていけっていうくらいだし、相当追い詰められているのかも。

「メアリーさん、お姉様にはおじいさまから心配しないようお手紙を出してもらいましょう。今日はもう遅いから、ここに泊まっていきなさい」
「ぇ……いいんですかぁ?」
「もちろんよ。部屋数もあるし、おじいさまとおばあさまも一週間はこちらにお泊りするから、後で会いに行きましょう」

そうしたら明日は、ワンオペ育児撲滅の為に行動を起こさないと、ですわね!

感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。