継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
118 / 175
番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 ノア13歳、アカデミーに入学前日 家族団らん 〜



ノア視点


「ノア、いよいよ明日からアカデミーに入学ですわね」
「はい、お母様」

夕食後のお茶を飲んでいると、お母様がにこやかに、明日のアカデミー入学式の事を聞いてきた。
お父様はお母様の笑みに見惚れているのか、じっとお母様だけを見つめているのはいつものことだ。

「いいなぁ、お兄様。オレも早く、アカデミー通いたい」
「……ミーちゃんも」

可愛い弟妹たちは、羨ましそうに私を見る。
二人の上目遣いが小動物のようで、とっても可愛い。

「アベルもミーシャも、13歳になったら通えるのだから、すぐですわよ」
「オレ、アスお兄様と通いたい!」
「ミーちゃん……、おにぃしゃまと」

弟と妹はちょっと難しい事を言って、お母様を困らせていた。

「イーニアス殿下と通うのは難しいけど、リューク殿下とは一緒に通えるよ」
「うーん、まぁ、リュークとでもいっか」
「まぁっ、アベル、不敬ですわよ」
「いいの。オレとリュークの仲だし」

アベルとリューク殿下は年も近いから仲が良いけれど、リューク殿下は皇族なのだから、他の貴族の前では礼儀を持って接するように教えてあげないといけないよね。

「親しき仲にも礼儀ありと言いますのよ。それに、高位貴族であるアベルがきちんと礼儀を守らないと、誰も守らなくなってしまいますわ」

そう思っていたら、お母様がアベルに言い聞かせているので、私も同意する。

「お母様の言う通りだよ。アベル」
「でも、オレたち友だちだもん。リュークも、オレがよそよそしいのは嫌がるよ。お兄様だって、よそよそしいとアスお兄様が嫌がるでしょ」
「それは……」

アス殿下は、確かに私が余所余所しいと悲しむかもしれない。

「アベル、ノアは時と場所に応じて振る舞いを変えているのですわ。皇族を立てながらも、友人としてそばにいるには、必要なことなのです。ねぇ、テオ様」
「そうだな。我々は庶民ではなく、貴族だ。貴族とは、ただ威張る者の事ではない。富、権力、社会的地位の保持には責任が伴うものだ。 身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある。リューク殿下は皇族であり、皇族の責任は貴族の比ではなく重い。だからこそ敬われ───」

お父様、アベルにはちょっと難しい言い回しかもしれない……。

「お父様、オレ、よくわからないよ」
「む……。ベル……」

案の定、理解できなかったアベルの返事に、お父様は眉を八の字にして、お母様に助けを求めた。
お父様はお母様の前でだけ、ああして甘えている気がする。

「フフッ、つまり、公の場では友だちであっても礼儀を持って接しましょう、ということですわ」
「はーい。わかったよ、お父様、お母様」

アベルはまだ8歳だし、今後色んな人と交流を持つようになったら、お父様とお母様が言っていた意味もきちんと理解できるだろう。

ミーシャはじっとアベルを見て……? あ、眠いみたい。

「ミーシャ、眠いの?」

抱き上げると、私の服をきゅっと掴み目を閉じる。

幼い妹は、感情を表に出すことが苦手で、言葉もあまり話さないので、こうして良く観察して気付いてあげなくてはいけない。

「ノア、気付いてくれてありがとう。ミーシャを寝かしつけたら戻ってくるから、ノアはアカデミーに持っていく荷物をもう一度チェックなさい。忘れ物のないようにね」
「はい。お母様……、あの、アカデミーでは、新しいお友だちもできるでしょうか……」

ミーシャをお母様に預けながら、少し不安に思っていた事を口に出すと、お母様は穏やかな笑みを浮かべ、「心配ありませんわ」と言ってくれた。

「だってノアは、優しくて、勇敢で、賢くて、わたくしの自慢の息子ですもの。きっと向こうから群がってきますわよ!」
「お母様……」

久々にお母様に抱きつくと、とても温かくて、お母様の優しい匂いがして安心できた。

「ノア、不安な時やモヤモヤしてる時は、お母様やお父様に相談すること。忘れてはダメですわよ」

心配かけないようにしないと。と思っていたけれど、お母様が相談しなさいと言ってくれて、アカデミーへの期待と不安にソワソワしていた心が、少し晴れた気がする。

「はい」
「もちろん嬉しい時も、家族にお話してくれると、嬉しさが倍増しますのよ」
「嬉しい事をたくさん報告できるよう、楽しみます」
「ええ。学園生活を思いっきり楽しみなさい!」
「お兄様、アカデミーがどんな所だったか、絶対教えてね!」
「ノア、しっかり勉学に励むように」
「はい!」

こうして家族に激励され、翌日アカデミーへと入学したんだ。



『アオ、ノアのため、アカデミーしたみした!! あんないできるー!!』

まさかアオがアカデミーに着いてきて、大事件を起こすことになるなんて、思ってもみなかったよ。

感想 52

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。