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番外編 〜 アベルとフローレンス 〜
番外編 〜 よちよちアベル君 〜 ノア6歳間近、アベル1歳間近
「にー」
「アベル、わたしについてきちゃ、めっだよ」
「にー」
「アベル……あーちゃん、おにいさまは、これからまほうのくんれん、なんだよ」
「やーっ、にーた!」
よちよちとノアの後ろを付いていくのは、最近歩き始めたばかりのアベルだ。
まるで鴨の親子のようなそれに、ニヤニヤが止まらない。
「おかぁさま、あーちゃんが、ついてくるの」
ついに、困ったノアがわたくしに泣きついた。
「ふふっ、アベルはお兄様が大好きだから、付いて行きたいみたい」
「わたしこれから、まほうのくんれんだから、あーちゃんはあぶないのよ」
「にー!」
『アベル、ノアといきたいって』
アベルにくっついているウィルがそう教えてくれる。ウィルは幼い精霊だけど、しっかりしていて、アベルの考えを教えてくれるから、本当に助かっているのだ。
「そうねぇ、じゃあ、お母様が一緒に行くのはどうかしら?」
「かー」
アベルはそれが良いというように、わたくしに手を伸ばした。
抱っこして連れて行けってことですわね。
「……おかぁさま、あーちゃんぎゅって、しておいてね? ウィルも」
「ええ。ノアが頑張っている所、アベルとわたくしに見せてくださいませね」
『まかせて! ノア、がんばれー』
「はい!」
ふふっ、ノアったら、張り切っていますわね。
「かー」
「はいはい。ノアの格好良い所、見に行きましょう!」
「ぁう!」
ぷにぷにの腕を上げ、小さなおててをグーパーさせるアベルに笑みが溢れる。
ディバイン公爵家の私兵である、ディバイン騎士団の訓練所。
騎士たちの早朝の訓練後に、ここで魔法の訓練が行われる。
「ノア!」
「アスでんか!」
先にやって来て待っていたイーニアス殿下は、いつもノアと一緒に訓練しているのだ。
その理由は、
「始めるぞ」
「とー」
「ん? ベル、アベル、来ていたのか」
この世界でテオ様しか、加護持ちの二人に魔法を教えられる人がいないからだ。
「テオ様、お邪魔しておりますわ。アベルが、ノアの後を付いていくものですから、本日はこちらで見学しようかと」
「あーっ、にー!」
「そうか。チロ、ウィル、二人に危険がないよう、守ってくれ」
『チロ、ガンバルー!』
『ウィルも、がんばる!』
チロも、テオ様に頼りにされて張り切っておりますわ。やっぱり同じ妖精でも、チロは特別可愛いですわね。ウィルも可愛らしいし。なんて、そんなことを考えていたとバレたら、妖精たちに怒られてしまいますわよね。
「あーっ」
「どうしたアベル……」
「あーっ」
抱っこしていたアベルが暴れ出し、テオ様が「ノアのそばに行きたいのかもしれん」と言い出して、抱っこをして連れて行ってしまったのだ。当然、『アベル、まってー』とウィルもついていく。
『アベル、ウィル、ハナレテイッチャウ……』
「チロ、魔法の訓練が始まったら、また戻ってきますわ」
くすぐるように頭を撫でると、ピトッとわたくしのほっぺたにくっついてきたチロは、やっぱり可愛い。
アベルは、「あーっ」とテオ様の腕の中から手を必死で伸ばし、ノアとイーニアス殿下にアピールしている。
「そういえば、アベルはイーニアス殿下も大好きでしたわね」
三人(とアカとアオ)で嬉しそうにキャッキャとはしゃいでいる姿に、幸せな光景だと頬を緩めた。
その後、テオ様に手を引かれながら、よちよちと戻ってくる次男に、チロが『カワイー』と周りを飛び回る。
テオ様も嬉しそうですわ。
「かー」
「ふふっ、アベル、お兄様たちとお話できて良かったですわね」
「ふんっ」
ふんって……。
テオ様を見れば、口の端が上を向いているではないか。
そうですわよね。あのふんっのお顔、
「テオ様そっくり……」
「ベル」
「ふふっ、やっぱり親子ですわね」
「……このどうだという顔は、ベルに似ていると思うが。偶にノアもする顔だ」
『フタリニ、ニテルー』
『にてるー』
そうね。チロとウィルの言う通りですわ。
「ノアもアベルも、わたくしとテオ様の子供ですもの」
「そうだな。私たちの可愛い子供だ」
二人で笑い合っていると、「おとぅさまー、はじめるの!」とノアから声が上がり、テオ様はわたくしの額にキスを落とし、アベルの頭を撫でてから二人の元へいったのだ。
『ベル、ホッペマッカヨ?』
『どうして、まっかなの?』
「ゴホンッ、今日は暑いですわね」
『? アツイ、ナイノー』
「なーぃ」
『すずしいよ?』
「三人とも、ノアたちの訓練が始まりますわよ」
きょとんとしている三人の顔を、ノアたちの方へ向け、今日も穏やかに時間が過ぎていくのであった。
そして、訓練後、アベルのロンパースを、アヒルのロンパースにしようと思いついてしまった。
よちよちと歩いていくその後ろ姿を見て、このふりふりおしりをアヒルさんにしたら……と考えてしまったのだ。
『ウィルも、アベルとおそろい!』
二匹の可愛いアヒルさんが、公爵邸を歩いている姿は、皆を悶えさせたのである。
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