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番外編 〜 アベルとフローレンス 〜
番外編 〜 スピードアスレチック1 〜 アベル5歳
今から5年ほど前、アベルが生まれた直後だったからしら。
騎士団の訓練に使いたいとテオ様に言われ、ディバイン公爵邸の敷地内に、前世のテレビ番組であった、筋肉自慢たちが特設されたフィールドアスレチックを、アクションゲームのようにクリアし、タイムを競うという、例のアレを模したものを作ったのですわ。
これが、楽しく訓練出来ると騎士たちに好評で、何故か子供たちも面白がってやり始めた事で、本当にタイムを競うようになってしまったのだけど、あのテオ様も良い運動になると始めた事でお祭り騒ぎになってしまい、去年、「第一回スピードアスレチック“SHINOBI”筋肉の大会」が開催されたのよ。
9歳のノアと、10歳のイーニアス殿下が参加し、ノアは4位、イーニアス殿下は3位と、大人に混じって大奮闘していましたわ。
皇后様も観戦されていたけれど、それはもう、大興奮していたようで、イーニアス殿下を応援する声が、バルコニーから見ていたわたくしにまで届いたほどよ。
何せ、優勝はぶっちぎりで推しのテオ様でしたものね。
「───さぁ、やってまいりました。第二回筋肉番付! 優勝するのは誰なのか!! 前回圧倒的スピードでアスレチックを踏破した、我らが公爵閣下は、今回は解説として参加していただきます」
そして今年も、皆からの要望で、“SHINOBI”を開催する事になったのだ。
「おい……、誰が解説をすると言った」
テオは、拡声器の魔道具を使用している陽気な部下を睨みつ
け、ムスッとしている。
もしかして、今年も大会に参加したかったのかしら?
「テオ様が解説をされますの?」
「ぱーぱっ」
去年産まれた娘のミーシャが、テオ様に手を伸ばす。
わたくし、去年は妊娠中で、しかも出産間近という事もあって、テオ様とノアの勇姿を自分の部屋のバルコニーから観戦しておりましたもの。かなり遠目で見ることになって、残念でしたのよね。
「ミーシャ、私に抱っこされたいのか」
わたくしの腕から慣れた手付きで、嬉しそうにミーシャを抱き上げると、テオ様は片腕にミーシャを、もう片腕はわたくしの腰を抱き、特設席の屋外用ソファへとエスコートしてくれたのだ。
「私の女神と姫が望むのなら、解説をしても良いが……」
「フフッ、去年はお腹の中にいるミーシャと、テオ様の格好良い所を見させてもらいましたもの。今年は、一緒に観戦いたしましょう?」
「ああ。もちろんだ」
皆の前で額にキスをしてきたテオ様に、司会の部下の人が、「相変わらずのラブラブご夫婦です!」と観客(使用人や皇帝一家)を笑わせたものだから、とても恥ずかしかったですわ。
「おとうさま! おとうさま! オレもでたい!」
今年ももちろん参加するノアとアス殿下の所へ行っていたアベルが、急いでテオ様の所へやって来たと思ったら、そんな事を言うものだから、テオ様が呆れていますわ。
「アベル、この競技は魔法を使ってはいけませんのよ。自分の肉体のみを使用して、この地獄のようなアスレチックをどれだけ早くクリアするか競うのですの。まだ幼いあなたでは、棒一本を使って壁を登っていく事なんて出来ないでしょう。ノアですら去年はあそこで苦戦しましたのよ」
「できるの! おとうさまっ、オレできるもん!」
おかあさまうるさい、と言わんばかりに言い返してくる息子に、困ってしまいますわ。
最近どんどん生意気になっていますのよね……。
「……お前が出来るというならやってみればいい。その代わり、魔法や、ウィルの力を使った場合は、おやつ抜きだからな」
「えぇ! おやつ、ぬきなの……?」
「どうした? 出来ると言ったのはお前だぞ。アベル」
「っ……できるもん!」
あらあら、本当に大丈夫かしら……。この子、テオ様に似て運動神経は良いけれど、魔法を使わないとなると、ファーストステージをクリア出来るかどうかも怪しいですわよ。
『アベル、本当に大丈夫?』
「ウィル、だいじょーぶだよ! だって、フロちゃんもさんかするんだもん!」
エェ!?
「フロちゃんが参加しますの!?」
「うん。だから、まけられないの!」
そういう事ではなくて!
「テオ様!? 女の子の参加も大丈夫ですの!?」
「私も初耳だ」
フロちゃーん!?
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