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番外編 〜 ミーシャ 〜
番外編 〜 ミーシャ15歳の日常2 〜
「私、ひとの馬車に乗ったの初めて。いつもレール馬車だもの」
「私も貴族とはいっても貧乏貴族だから、レール馬車でアカデミーに通っているし、家の馬車は一台しかないから、滅多に乗らないよ」
と、コニーとナツィーが嬉しそうに話している中、クロエは「せっかくミーシャの15歳のお祝いなんだし、パパに頼んでみたの!」
と、満面の笑みを見せた。
どうやら私のために親にお願いしてくれたらしい。
「にしてもミーシャ、あなた自分の誕生祝いに、普段と同じ格好ってどうなの? もっとオシャレして来なさいよ!」
よく見ると、三人ともいつもより華やかな格好をしている。
「私は、こんな感じのものしか持っていないから」
アカデミー用は。
「そ、そうなの。ごめんなさいね、失言だったわ」
「別に構わない」
一瞬馬車内が気まずそうな雰囲気になったが、私が気にしていないとわかると、雰囲気も和らぐ。
「クーちゃん、これから本当に、あのテュエベルホテルに行くの?」
「そうよ!」
「モンプティシェリなんて、皇族もよく行くスィーツ店でしょう……。そんな所に、私みたいな平民が行っても良いのかな?」
「何言ってるの! テュエベルホテルはお金さえ払えば、あと、ドレスコードさえ守れば平民も入れるのよ! だから大丈夫よ」
などと話をしていたら、あっという間にホテルに到着したようだ。
「───お客様、申し訳ございません。そちらの服装では当ホテルに入っていただくことが難しく……」
ホテルに入ろうとしたら、私だけ止められてしまったのだ。これがお母様のいう、フラグというものなのだろうか。
「そんな……っ、ワンピースではダメなんですか!?」
「申し訳ございません。当ホテルでは、膝下、またはロングのドレスという決まりがございまして……、その、コンセプトが、普段とは違う、ラグジュアリーな日常のご提供というものですので……」
それは、この格好で来てしまった私の落ち度だ。
「これから家に帰ってドレスを取って来るとしても、予約の時間に間に合わないわ……」
「じゃあ、ミーちゃんのお祝いが出来ないの……」
「何とか入ることはできませんか? 彼女の誕生祝いに来たのです!」
「そう言われましても……、申し訳ございません」
皆が青い顔をして慌てている。私のせいで悪いことをしてしまった。
「皆、申し訳ない。私はいいから、皆で楽しんできて……、」
「何かお困りごとのようだが、どうしたというのだ?」
謝罪している時だった。突然、後ろから声がかかり、三人……いや、ホテルの従業員までもが、口を開けたまま私の後ろを見て、顔を真っ赤に染めているではないか。
「なにがあったのだろうか?」
聞き覚えのある声に、マズいと思い、咄嗟に口元を手で覆うと、ゆっくりと振り返った。
やはりか……っ
見事な真紅の髪をたなびかせ、そこに立っていたのは、赤ちゃんの頃から見慣れた人だった。
「い、イーニアス皇太子殿下!」
ホテルの従業員がアスお兄様の名前を叫び、友人三人は青くなったり赤くなったり忙しい。
『あ、ミーシャ!』
「ミーシャだと?」
アスお兄様の頭の横を飛ぶのは、妖精のアカ。アスお兄様と契約しているキノコだ。
このキノコ……余計なことを……。
「人違いです」
「ふむ……、何か訳ありのようだ。見たところ、彼女の服装に問題があったようだからな。私がドレスを用意しよう」
アスお兄様の優しさが、今は本当にいらない。
今まで隠してきたことが、友人にバレでもしたらどうするつもりなんだと睨みつければ、にっこり微笑まれて、私の背後から悲鳴が上がる。
アスお兄様は格好良すぎる。
「君は私についてくるといい。他の者は……」
『ミーシャ、スィーツ食べに来たって、卵たちが言ってる!』
「うむ。スィーツビュッフェだろうか?」
「は、はい!」
三人は、コクコクと大きく上下に頭を振ってパニックになっていた。
「では、先にビュッフェに行っていると良い。彼女も着替えたら合流するのでな」
「「「はい!!」」」
三人は脱兎のごとくホテルの中へと消えていった。
「……さて、ミーシャ。その格好は一体何なのだ?」
「アスお兄様……」
『ミーシャ、へんそーしてる!』
「なるほど、お忍びか」
違うけど、ノアお兄様に報告されたら困るし、そういう事にしておこう。と頷く。
「さて、ミーシャに似合うドレスを手に入れなければな」
そう言って、ホテルのそばにあるドレスショップに連れて行かれ、さくさくとドレスを選ばれた。
「うむ。よく似合うぞ、ミーシャ」
『ミーシャ可愛い!』
「ありがとう……」
アスお兄様は、相変わらず天然の人タラシだ。
「うむ。では、友人たちとスィーツビュッフェを楽しんでくるといい」
「アスお兄様は、どうしてホテルに来ているのですか?」
「実は私も友人たちと食事の約束をしているのだ。もちろんノアもいるぞ」
「ノアお兄様も!?」
マズい……ノアお兄様にこのことがバレてしまったら、お父様に伝わるかもしれない。
「アスお兄様はお店ではなく、お部屋を取っているのですよね?」
皇太子殿下が、目立つ公爵家の跡継ぎとお店で食事はしないだろうとふんだ私は、一応確認をする。
「さすがに皆に迷惑がかかるのでな。部屋を用意してもらった」
「アスお兄様、ノアお兄様には私がここにいた事を黙っていてもらえますか」
「うん? ああ、お忍びだからか。うむ、わかった。ノアには黙っていよう」
「お願いします」
こうして、何とかアスお兄様の口を塞ぐことに成功したのだ。
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