継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常、公爵邸招待編5 〜



ミーシャ視点


「信じられない! 女神似のご尊顔を隠すなんて、美への冒涜よ!?」

クロエが私の顔に描いたそばかすを、優しく拭き取りながらぷりぷりしている。

「ああ~……、女神様が私の前にいる……っ」
「ねぇ、本物の女神様に、私たちさっき会ったんだよね……」

コニーは両手を胸の前で合わせ、拝んでくるし、ナツィーはお母様に会った事を思い出してまた白目をむきそうになっていた。

「みんな、落ち着いて。お母様、呼んで来ようか?」

言えば、みんなが全力で止めてきた。

「下々の者が女神様のご尊顔を間近で見てどうなったか、ミーシャもさっき見てたでしょう!」
「今度こそ私たちを殺す気か!」
「ミーちゃん、私ね、女神様を前にすると息が止まるの」

コニー、おっとりした声で言ってることが怖いよ。

「お母様、みんなに挨拶したくて張り切ってたから……ごめんなさい」
「女神様が、わ、私たち下々の為に……!?」
「なんて失礼な事をしてしまったんだ!」
「でもまたご尊顔を見ると、血を見ることになるよ……」

血を!?

「ミーシャ、女神様には私たちが謝罪していたって伝えてもらえない?」
「会いたいけど、私たちは遠くからご尊顔を拝見させていただければそれで十分だから」
「ミーちゃんのご尊顔だけでも鼻血が出そうなのに……。眼鏡かけてもらっても良いかな」

なぜかまた、眼鏡をかけさせられた。

『ミーシャ、ノアよんできたー!! アオ、はいっていー?』

え!?

アオが追い出されたからか、ノアお兄様が居れば入れると思ったらしく、連れて来てしまったらしい。
扉の外から入っても良いか聞いてくる。

『おやつー!! アオのおやつー!! ノア、アオはいっていい、ミーシャ、きーて!!』

追い出す時に、おやつも渡しておけば良かった……。

「ミーシャ、ここにいるの? アオが入りたいって言ってるんだけど、入ってもいいかな?」

お兄様、友人たちがいるのも知らずに連れて来られたんだ!

「お兄様、今ね……」

立ち上がって扉へと歩いて行けば、後ろから聞こえてきたのは友人たちの沸き立つ声だった。

「ミーシャのお兄様ってもしかして……」
「ディバイン公爵家の公子様と言えば二人いるけど」
「どっちも有名人だよ!?」
「確か、アベル公子は教会の聖騎士隊長で、聖女様とご結婚されたっていう……」
「そう! 小さな頃に聖女様に、自分が守るって約束して、本当に聖女様の聖騎士になったっていう、あのアベル様!」
「素敵よね~」

アベルお兄様とフロちゃんの恋愛は、グランニッシュ帝国のロマンスとして語られているが、あの二人がそんなロマンチックだとはどうしても思えない。
きっとアベルお兄様が、「エビフライ食べさせてあげるから」と言って、フロちゃんを誘惑したに違いないと、私は思っている。

「ノアお兄様、今友だちが来ていて……」

扉を開けた途端、アオが顔に飛びついてきて驚いた。

『アオのおやつ!! ミーシャ、アオのおやつ、たべた!?』
「食べてないよ……」

というか、そんなに必死にならなくても、おやつはノアお兄様に言えば用意してもらえるでしょうに。

『アオのプリンー!!』
「ミーシャ、どうしてこっち(客用)の応接室にいるの……」
「「「の、の、ノア公子ーーーー!?」」」

ひょこっと部屋を覗いてしまったお兄様の姿を見て、三人のテンションが見る間に上がった。

「イヤァァァァ!! ノア公子様ステキーーーー!!」
「後光が!! 眩しいっ」
「エンジェルスマイルの貴公子、ノア様ァァァァ!!」

コニーの言う通り、本当に血を見る事になるとは思いもよらなかった。

三人が三人とも、鼻血を出し、倒れてしまったのだ。

「ウチに友だちを連れて来るべきじゃなかったな……」
「え……?? 何、どういうことなのか、説明してほしいのだけど……」
『プリンおいしー!! アオ、うれしー!!』

お兄様の戸惑いの声は、アオの幸せの叫びにかき消され、異様な光景にただただ呆然とするしかなかったのだ。


◇◇◇


「───ミーシャ……何かごめんね」
「こっちこそごめんなさい……」

何度目かという失神から復活したクロエは、鼻をハンカチで押さえながら、申し訳なさそうに謝罪をすると、何かを考えた後、ハッと目を見開いて言った。

「ねぇミーシャ、今度の授業参観、まさか女神様が来るとか言わないわよね!?」
「「!?」」

そうだった。まだ一番の問題が残っていたんだ……。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



~ おまけ ~


イザベル視点


やってしまいましたわ。
わたくしの悪女顔、未だに健在ですのね。年をとってだいぶ和らいできたと思っておりましたのに……。

「ベル、ミーシャの友人をもてなすと言っていたが……もう帰ったのか?」

ミーシャに応接室を追い出され、トボトボ歩いていると、資料を図書室に取りに行った帰りの夫と偶々出会った。

「テオ様。実はミーシャの友人たちが、わたくしの顔を見て倒れてしまいましたの……。わたくしの顔、そんなに恐ろしいのかしら……」
「何を言っている。ベル、君は美しい。私は未だに、朝起きてベッドで眠る君を見る度に、こうして君を視界に入れる度に、心臓が高鳴るのを抑えられない」

テオ様は、相変わらずクサいセリフを照れもせず言い切ると、わたくしの肩を抱く。

「ミーシャの友人も、君のあまりの美しさに驚いてしまったのだろう」
『ベル、キレーナノー』

夫もチロも、わたくしを褒め過ぎだと思いますわ。照れてしまいます。

「ベル、私の女神。どうか己だけにその美しい姿を見せてほしいと願ってやまぬ私を許してほしい」
「テオ様……っ」



『テオってば、あの恥ずか死にそうなセリフよく言えるよね』
「ディバイン公爵家ではよく見る風景。気にしたら負け」
『さすがフローレンス! スルースキルってやつを身に着けたんだね!』

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