継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常 恋愛編1 〜

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参観日から数日が経ち、クロエ、コニー、ナツィー、そしてオーロラちゃんと、お昼を一緒に食べる仲になっていた。

今日は食堂のオープンテラスでランチだ。

「───あれがディバイン公爵令嬢?」
「何かイメージが……」

コソコソと話す声が聞こえてくる。
クロエがコソコソ話す人たちをキッと睨み、私を見てはぁっと溜め息を吐いた。

「ミーシャったら、公爵令嬢ってバレたんだから、変装も止めるのかと思いきや、変装したままで登校してくるんだもの。びっくりしたわよ」

そうなのだ。実は身分はバレても変装は止めなかった。なぜなら、

「お父様が、この格好で行くようにって言ったから……」
「ディバイン公爵閣下が!?」

みんなが目を丸くし、「なんで!?」と聞いてきた。

「お父様は、変装している方が面倒ごとが減るって言ってた……」
「「「「そういうこと(ですのね)」」」」

四人が口を揃えると、お互いにうん、うんとうなずいているのはなぜなのか。

「ディバイン公爵が仰る通り、ミーシャ様の容姿は人の目を惹きますから、変装を止めてしまいますと大変なことになってしまうかもしれません」

オーロラちゃんが真剣な顔をして話してくれるが、やはり有名なお母様に似たこの顔は、目立つのだろうか。

「美しすぎるのも大変よねぇ」
「失神者が続出する美貌を持つと、ある意味凶器と同じだから……」
「私も直視出来ないもん」
「ええ。わたくしも初めて拝見した時、小さい女神様と大きい女神様に、ここは天界でしょうか、と思いました」
「「「それね!!」」」

何だかんだと、オーロラちゃんは楽しそうにみんなと話している。高位貴族のオーロラちゃんが、三人と仲良くしてくれるというのは素直に嬉しい。

ただ、気になるのは、いつもオーロラちゃんのそばにいたあの子たちだ。
何かと悪口を言ってきたあの子たちは、今どうしているのかというと……、

「あ、あの子たち……」
「「ヒィッ」」

目があっただけで悲鳴を上げられ、逃げられた。
参観日の翌日からずっとあの調子なのだ。

はぁ……と溜め息を吐けば、「あの子たちが申し訳ありません」とオーロラちゃんに謝罪を受ける。オーロラちゃんが悪いわけではないのに、謝罪をさせてしまったと固まっていたら、

「オーロラが謝ることじゃないわ。あの子たち、何かとミーシャに絡んでいたから、自業自得よ」

とクロエがフォローしてくれた。

「そんな事より、ミーシャもオーロラも、婚約者はまだ決まってないんでしょ? やっぱり皇太子妃を視野に入れてたりするの?」
「それ、私も気になってた~」
「こらこら二人とも、そんなにはっきり聞いたらダメだよ。まぁ、私も気になってるんだけど」

などとみんなが私たちを見てくるが、皇太子妃って、アスお兄様のお嫁さんになるってことだよね?

「私はそんな畏れ多いことを考えておりません。皇太子妃はミーシャ様。これはミーシャ様が生まれた時からの決定事項です」
「え!?」

オーロラちゃん何言ってるの!?

「そっかぁ。やっぱりミーシャが将来の皇后陛下なのね」
「ミーちゃんがどんどん遠い人になっていく……」
「確かにミーシャほど相応しい令嬢はいないよね。何せあのディバイン公爵家の一人娘だし」
「帝国民であれば、皆様喜ばれるでしょう。賢帝間違いなしと期待される若い太陽と、女神の娘ですから」

ちょっと、四人とも当然みたいな言い方だけど、あの完璧超人のアスお兄様だよ!?

「みんな、あのアスお兄様のお嫁さんに私がなるなんて、アスお兄様が困ってしまうから、冗談でもそんなこと言ったらダメだよ───」



って、笑い話にして有耶無耶にしたけど、アスお兄様の婚約者か……。婚約者どころか、もう結婚していてもおかしくない年なのに、噂すらない人だもんなぁ。

「ネロおじさまも一途な人だし、案外片思いしている人がいるのかも?」
「ミーシャ、カタオモイ?」
「あ、チロちゃん。私口に出してた?」
「ウン。ミーシャ、ダレニ、カタオモイ?」

アカデミーから帰ってきて、自分の部屋で課題をしながら昼間のことを考えていたら、無意識に口走っていたらしい。
肩にとまっていたチロちゃんが、机の上に降りて私を見上げている。

「私のことじゃないよ。アスお兄様のこと」
「アス、カタオモイシテル?」
「結婚していてもおかしくない年なのに、アスお兄様もノアお兄様も独身の上、婚約者もいないでしょう。だから、実は片思いしている相手がいるのかなぁって、思ったの」
「ミーシャ、マダチーサイカラ」
「え?」
「ミーシャ、カダイ、スルノ~」
「あ、うん」

私が小さいから? どういう意味だろう??

チロちゃんに課題の監督をされながら、晩餐までの時間その意味を考えていたのだ。

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