継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常 恋愛編2 〜

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ネロウディアス皇帝視点


「ネロ、そろそろイーニアスの婚約者を決めないといけないわ」

何年経っても相変わらず美しい朕のレーテが、珍しく焦った様子で話してくるので首を傾げる。

確かにイーニアスは、妃がいてもおかしくはない年齢だが、朕は自分が無理矢理妃を娶らされた事を思い出すだけで辛いので、可愛いイーニアスには好きな人と結ばれてほしいと思っている。それに、

「レーテ、イーニアスのお嫁さんは、ミーシャと決まっているのだ。きっとそうなるのだぞ」

当然なのだと朕は言うが、レーテは困ったように眉を下げるのだ。そんな妻も可愛いのだが、朕は困った顔よりも笑った顔をみたい。

「アタシだってそれが一番良いと思っているわよ。でも、本人たちが全く自覚がないんだもの」

溜め息まで吐いて、腕を組み、右手を自身の頬に持っていく。どこか色っぽいその仕草にドキドキする。

「大丈夫なのだ。イーニアスは朕とレーテの子。ミーシャがもう少し大きくなれば、すぐに自覚するのだ。もしかしたら、もうわかっているやもしれぬ」
「どうかしら……、イーニアスったら浮いた話ひとつないものだから、ノア君と深い仲なんじゃないかって噂されているくらいなのよ」
「え!? それはマズいのだ! 公爵に誤解されて、ミーシャとの結婚がダメになったら……っ」

それはダメなのだ! あぁ~っ、どうすればよいのだ!? 朕が見るかぎり。イーニアスとノアは仲が良いが、そういう関係ではないのだぞ!?

「だから、イーニアスとミーシャが意識し合うようにアタシたちが手伝ってあげるべきじゃないかしら」
「え? そ、それは大丈夫なのだろうか!?」

そういうのを、余計なお世話というのでは……

「大丈夫よ! というか、手伝ってあげないと、いつまで経ってもイーニアスは独身のままよ!?」
「それは困るのだ!」
「じゃあ、良いわね。ネロ」

レーテはそう言って、ニヤリと笑った。悪い事を企んでいるような表情に見えなくもないが、レーテが白と言えば白なのだ。

朕のレーテ、カッコいいのだぞ!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イーニアス視点


父上と母上が、今年皇城で行うデビュタントで、エスコートをするご令嬢を決めろと仰った。
デビュタントといえば、ミーシャも今年デビュタントだ。それならば、ミーシャをエスコートしたいと思い、公爵家に訪問の許可をもらう為に手紙を出す。

一番早いのは、妖精に連絡を取ってもらう事だが、こういったお誘いには手順があり、それを守らなければならない。

『アス、ミーシャ、れんらくとる?』
「ああ。デビュタントのエスコートの申し込みなのだ。きちんと手順を踏んでお誘いしなければ、きっと公爵は許してくれぬだろう」
『アスはこーぞく、だから、マナーだいじ!』
「うむ。アカはよくわかっているのだな」
『アカ、ずーっとアスといっしょ! マナーわかる!』
「そうだったな!」

妖精であるアカと契約してから随分と経つ。最初は無邪気な子供だったアカも、私と共に成長しているのだろう。

無邪気なアカも好きだが、共に成長出来るのは嬉しい事だ。

『アス、ミーシャとダンス、する!』
「ミーシャが私のエスコートを受けてくれたら、ダンスが出来るな」
『アカも、いっしょ、ダンスする!』
「うむ。その時は一緒に踊ろう!」

やったー! と喜ぶアカを眺めながら、そういえば……と、ミーシャの変装を思い出す。

「ミーシャは、変装したままデビュタントに参加するのだろうか??」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミーシャ視点


「ミーシャ、昨日も言いましたけれど、明日のあなたのお休みはデビュタントのドレスを作る為に、採寸がありますからね。忘れて予定を入れてはダメですわよ」
「はい、お母様。ちゃんと覚えてます……」

皇城で大規模に行われるデビュタントは数ヶ月先なのだけど、お父様とお母様は準備をはりきって進めてくれている。
特にお父様は、数年前から、ドレスの生地を一から作る! とコツコツ準備してきていたようで、ちょっと気合いが入りすぎていて怖い。

「デビュタントのドレスはみんな白だと決まっているのに、生地から作る必要があるの?」

と父に問いかけた事がある。

その時は、生地の質感や柄、形、白色にも何種類もある事をこんこんと二時間も言い聞かせられ、最終的に呪文に聞こえたくらい理解不能に陥ったのは苦い思い出だ。

「お父様も明日はお休みを取ってくれたのですから、お礼を言わないといけませんわよ」
「え……、お父様、わざわざお休み取ってくれたんだ……」
「こら、嫌そうな顔をしないの。可愛い娘の一生に一度のデビュタントですもの。気合いが入るのは当然の事でしょう」

お母様はクスクス笑うが、私は溜め息しか出てこない。

「そうだ、デビュタントのエスコートは、ノアお兄様がしてくれるんだよね……?」
「あら、そうお約束しておりましたの?」

約束はしてないけど、そうしてもらえるものだと思っていた……。

「……不安だから、ちょっと聞いてくる」
「ノアも忙しくしているのだから、あまり無理はさせてはダメですわよ」
「はーい!」

あーあ、エスコートなんて面倒な事は無しで、友達と参加出来るようにしてくれたらいいのに。

「ネロおじ様にお願いしたら、そうならないかな……」

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