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番外編 〜 ミーシャ 〜
番外編 〜 ミーシャの日常 恋愛編5 〜
しおりを挟む採寸は苦手だ。
ずっとバンザイしたままでいなきゃいけないし、隅から隅まで身体のサイズを測られることに抵抗がある。
「んまぁっ、コルセットの必要なさそうな細いウエストは相変わらずザマス! お母様似ザマスねっ」
ディバイン公爵家お抱えのデザイナーさんで、語尾にザマスを付けるおちゃめなお姉さんは嫌いじゃないけど、恥ずかしいから大きな声でそんな事を言わないでほしい。
『ザマスきた!! このひと、どーしてザマスっていうか、アオしってる!!』
アオがケタケタと笑いながら、デザイナーさんの周りを飛び回る。
『このひと、きぞくちがう!! だから、とりあえずザマスつける、ふけーざいならない、おもった!!』
なるほど。ザマスはこのデザイナーさんの中では最上級の丁寧語なのか……。
『きづいたときには、クセ、なってた!!』
というか、何でそんなプライベートなこと知ってるの?
『ミーシャ、キューケースル~?』
チロちゃんが顔の前に飛んできて、そう言ってくれるけど、デザイナーさんたちは忙しなく動いているので、休憩はちょっと無理そうだ。
力無く笑うと、チロちゃんは心配そうにバンザイしている腕を支えてくれた。
チロちゃんは優しい。青いキノコも人様のプライベートを覗き見してないで、見習ってもらいたいものだ。
採寸が終わると、今度は新たに作ったというディバインオリジナル生地のサンプルを男性スタッフ? が机に広げ、お母様とお父様がああでもないこうでもないと話し合っている。
というか、生地のサンプルを持ってきてくれたおじさんは、それを頷きながら聞いているが、さっきからかつらが少しだけズレていて、ものすごく気になる。
かつらはすこしでもズレると、違和感が半端ないからだ。
「このパールのような艶感は上品で、高級感もありますので、こちらの生地をメインに───」
一生懸命説明してくれるおじさんには悪いのだが、どうしても気になる。
「ミーシャ? 先ほどから心ここにあらずですけれど、あなたのデビュタントのドレスですのよ。きちんと手にとってご覧なさい。一生に一度の事なのですから」
「はい……、お母様」
かつらを見すぎたせいか、さすがにお母様に注意されてしまった。
そういえば、お母様のデビュタントはどんな風だったのだろうか。お父様とは17歳の時に出会ったらしいから、まだ出会ってなかったはず。
エスコートは誰にしてもらったのかな……。
エンツォおじい様かな。オリヴァーおじ様は当時幼かっただろうし。
お母様が大好きすぎるお父様は、デビュタントにエスコートできなくてさぞ無念だろう。
「ミーシャ、どうした……」
今度はお父様をじっと見てしまっていたらしく、お父様に眉をひそめられた。
「お母様のデビュタントの時のドレスは、どんなだったかと思って……」
シモンズ伯爵家はこの国でも屈指の資産家だから、きっとこれでもかっていうくらい豪華だったに違いない。
「私もベルのデビュタントをエスコートしたかったが、まだ出会う前だったからな……」
「フフッ、わたくしもテオ様に早くお会いしたかったですわ」
「ベル……っ」
またお父様とお母様がイチャイチャし始めた……。
「お母様のドレスは生地から作ってもらったの?」
「まさか! わたくしのデビュタントのドレスは、一番安い生地を使用した、とてもシンプルなものでしたのよ」
「そういえば、お母様は普段からシンプルなドレスを好むよね……でも、一番安い生地?」
「あの頃のシモンズ伯爵家にはドレスを買うお金も無くて、お母様のお父様が、一生懸命工面してドレスを用意してくださったのよ」
「え……?」
懐かしいわ、とお母様は微笑んでいるけど、お金が無かったの? あのシモンズ伯爵家が?
「でも、シモンズ伯爵家は帝国の経済を支えている家だって……」
ディバイン公爵家も、お母様が嫁いでより資産を貯えたって習ったのに、どういうこと……?
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