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プロローグ 始動

試験、そして入隊 2

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少し緊張しながら扉を開けると、他の二人と思わしき人物が緊張した面持ちで待機していた。
 一人はがっちりとした体型で、いかにもパワーがあると周りに誇示するような筋肉の量で、もう一人は少し髪が長く一般的かそれより少し細い。後方支援の人だろうか。
 扉を閉じると、長髪の人が口を開いた。 
   「あの…これで呼び出された全員ってことで…いいんでしょうか?」
 筋肉の人が喋り始める。
 「ああ、見た感じみんな同じくらいの年齢だろうし、そうなんじゃないか?」
 「そうですね。…でもなんでこの三人が呼び出されたんでしょうかね?」
「「わからない」ですね…」
特に喋れる話題もないので沈黙が数十秒流れた後、扉が開いた。
    「いやーごめんごめん、遅れて。ちょっと資料用意するのに手間取った。」
 三人で顔を見合わせ、「この人誰?」のアイコンタクトをする。誰も答えない。年は50歳くらいに見える。
 すると知らない人はそれに気づき、
 「あ、申し遅れた。私はこういう者だ。」
    一人ずつ丁寧に名刺を渡していく。
 名前はイアン・ワトソン。
 職業は………
    「The Guardian of British(TGOB)…PMC(民間軍事会社)の社長さんですか!…え…なんでですか?」
 長髪が驚いた声で問いかける。
 PMC(民間軍事会社)。要人の警備だったり、訓練や兵站の教育などのサービスを提供する会社のことだ。
 「さて、まずはみんなのことを紹介させてもらうよ。」
 そういうとイアンは資料を取り出し、読み上げ始めた。
 「試験番号B15、ヴィクター・A・ダイソン。髪が長いのは切るのが面倒だから。機械工学、主にコンピューターに精通しており、自作のソフトウェアまで開発するほどだ。」
   この人のことは知らないが、驚いた表情をしているので多分合っているのだろう。
 にしても、こんな情報どこで仕入れたんだろうか。PMCは民間企業なので、ここに三人を呼び出せる理由も、国が手に入れたような情報を仕入れることもできないはずだ。…謎は深まるばかりだな。
 「試験番号D41、マックス・ベル。母親は病気で死亡、父親は現在行方不明で、親戚のおばに引き取られている。成績は優秀で、素行も良好。友人はいないが、他の生徒たちからはいい印象を抱かれている。」
 まさか自分まで知らない他人の評価を知ることになるとは思わなかった。ここまで来ると何か恐ろしいものを感じる。
 「試験番号K04、モーガン・ライナー。姉と妹がいて、幼い頃から喧嘩をくりかえしてきた。性格は少し荒っぽいところはあるがいざという時には瞬時に適切な行動をしチームの危機を救うことができる。」
 モーガン…は冷静な表情で口を開いた。
 「…で、なんで僕たちを呼び出したんですか?」
 イアンは真剣な面持ちで話し始めた。
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