1 / 17
プロローグ
しおりを挟む
「エリーゼ様。全てからあなたを守ると誓いましたのに守れず申し訳ありません」
ボロボロの服を身に纏った黒髪の少年が、同じくボロボロの服を着たひすい色の髪をした美しい少女に頭を下げる。
「いいえ。あなたは私を無事に守ってくれました。アーク。ありがとう」
エリーゼ姫は、アークに笑いかける。
時は遡り1年前……
「アーク・ブライト。この者を正式にマース小王国エリーゼ王女の騎士と認める!姫様。この者の前へ」
玉座の間で片膝を突く、黒髪の少年アーク・ブライトの前に、彼の主君にたるひすい色の美しい少女エリーゼ・フォン・マースが進む。
アークは姫が前にきたのを確認し、鞘に入った刀を両手で持つ。
「私は、姫様の剣。姫様の前に立ちはだかるもの全てを斬り、姫様をお守りします」
俺は、姫様の前で自分の思いを乗せた誓いを立てる。
姫様は俺の宣言に少し笑いを浮かべる。
「私、エリーゼ・フォン・マースは、この者、アーク・ブライトを騎士として認める!アーク!信じていますよ。これからもよろしくお願いしますね」
「は!」
こうして俺はマース小王国の正式な騎士になった。
その後、騎士任命式はつつがなく終わり、玉座の間を後にする。
王城と言っても、他国からしたら貴族の屋敷と変わらない城の別室で姫様と合流した。
「これでアークも正式な騎士となれましたね」
「はい。いまだに信じられません。夢のようです」
「ふふふ。それは良かった。では、早速畑に作業に行きます。警護……と言っても作業を手伝ってもらうだけなのだけどね」
「もちろんです。ご一緒します」
マース小王国は、王都の他に町が2つと村が1つあるくらいで、そこまで大きな国ではないので税収はほとんど国の運営で使っている。
なので、王家にお金はない。その為、庭園を畑にして、自給自足で暮らしている。
かつては争う国々に平和を説き、大陸統一国家マース王国を築ずき平和な世を作ったが、国ができて200年後、平和に統治していたマース13世の弟が反乱を起こし、国は瓦解した。
その後、マース13世は首を刎ねられたが、その血族は大陸の東の果てへと逃げ延び、50年かけて現在の小王国を作った。
「姫様!二十日大根が食べごろになってきましたよー!」
王都民達が、野菜を持って姫様のところへやってくる。
「本当ですね。私たちも今日は二十日大根を食べることにしましょう」
「姫様にはこの前、お肉をもらったからお礼にふきのとうとたけのこをとってきたんだもらってくれ」
王都民が姫様にカゴいっぱいに入った山菜を渡す。
「こんなに……あなた達の家は大丈夫なのですか?」
「心配いりやせんよ。今年は沢山取れたましたから」
「そうですか。それではありがたく頂きます」
王城の畑は、王都民達も利用しているので、王族関係なくみんなで畑を管理している。
その為、この国は王族も民達と距離が近い。
「アーク!みてください。今夜はタケノコとふきのとうの揚げ物にしましょう」
「それはいいですね。今から夕食が楽しみです」
夕食……
「おお!今日は豪勢だな!」
「はい。民にタケノコをもらったので揚げ物にしてみました」
「こうしちゃおれんな!温かいうちに皆で食べよう!」
立場関係なく家臣も一緒に夕食を食べる。
夕食後は、父であるアッシュ騎士長と手合わせをする。
「さあ。どこからでもかかってきなさい!」
「お願いします」
手合わせは刀による実戦に近い訓練。
ブライト家は古くからマース王家に使える騎士をしている。
その血筋は、今の大陸では珍しい東の果てに存在すると伝承で言われる島国。
その国では刀と呼ばれる湾曲した細い刃をした剣を腰に携えるのが特徴。他にも黒髪というのも東の果ての民の証とされている。
その為、幼い頃から父に刀の扱いを習い、訓練してきた。得意技は居合。
今では、自身で考案した両肩に小太刀、左右の腰に太刀をさした4頭流を使っている。
4頭流のワケは、ブライト流の体術を併用しながらでも瞬時に居合を放てるようにするため。
相手に攻撃を絞らせないためと多人数を相手にした時、刀を両手で持っていては不利になると考えたからだ。
俺は、右腰の刀に手を添え、居合の構えを取る。
父の間合い近くまですり足で近づき、抜足と呼ばれる古武術を使い接近して、刀を一閃。
「良い抜足だ。途中まで近づいているのにも気づかなかった。それに普通の剣士なら目で追うこともできないほどの速さの抜刀だったな。が、私には通用しないな」
父はなんなく構えていた刀で受け止めて弾き返す。
「参りました」
「アーク。忘れるなよ。戦いの中でこそ学ぶことが多い。それに限界を越えるためには発想力というものも大切だ。考えよ。どうすれば良いかを」
「はい!」
手合わせ後は、水浴びで体を清め、姫様のところに向かう。
「今日はどうでした?」
「まだまだでした。ですが、これからも精進していつか父を超えます!どんな事からでも姫様を守れるように」
「信じています」
姫様が笑う。
…………
「おーい!新入り!起きろー」
「おじさんうるさいよ!」
男の声に目を覚ます。
「だってよー。まだ自己紹介してねぇしよ」
「奴隷剣闘士でいつ死ぬかも分からないのに名前なんて知る必要あるの?」
「あるよ!お互いに名前知らねえと呼びづらいじゃねえか」
男達が言い合いを始める。
(そうだ……隣国のプロミネンス王国によってマース小王国は滅ぼされたんだ)
ボロボロの服を身に纏った黒髪の少年が、同じくボロボロの服を着たひすい色の髪をした美しい少女に頭を下げる。
「いいえ。あなたは私を無事に守ってくれました。アーク。ありがとう」
エリーゼ姫は、アークに笑いかける。
時は遡り1年前……
「アーク・ブライト。この者を正式にマース小王国エリーゼ王女の騎士と認める!姫様。この者の前へ」
玉座の間で片膝を突く、黒髪の少年アーク・ブライトの前に、彼の主君にたるひすい色の美しい少女エリーゼ・フォン・マースが進む。
アークは姫が前にきたのを確認し、鞘に入った刀を両手で持つ。
「私は、姫様の剣。姫様の前に立ちはだかるもの全てを斬り、姫様をお守りします」
俺は、姫様の前で自分の思いを乗せた誓いを立てる。
姫様は俺の宣言に少し笑いを浮かべる。
「私、エリーゼ・フォン・マースは、この者、アーク・ブライトを騎士として認める!アーク!信じていますよ。これからもよろしくお願いしますね」
「は!」
こうして俺はマース小王国の正式な騎士になった。
その後、騎士任命式はつつがなく終わり、玉座の間を後にする。
王城と言っても、他国からしたら貴族の屋敷と変わらない城の別室で姫様と合流した。
「これでアークも正式な騎士となれましたね」
「はい。いまだに信じられません。夢のようです」
「ふふふ。それは良かった。では、早速畑に作業に行きます。警護……と言っても作業を手伝ってもらうだけなのだけどね」
「もちろんです。ご一緒します」
マース小王国は、王都の他に町が2つと村が1つあるくらいで、そこまで大きな国ではないので税収はほとんど国の運営で使っている。
なので、王家にお金はない。その為、庭園を畑にして、自給自足で暮らしている。
かつては争う国々に平和を説き、大陸統一国家マース王国を築ずき平和な世を作ったが、国ができて200年後、平和に統治していたマース13世の弟が反乱を起こし、国は瓦解した。
その後、マース13世は首を刎ねられたが、その血族は大陸の東の果てへと逃げ延び、50年かけて現在の小王国を作った。
「姫様!二十日大根が食べごろになってきましたよー!」
王都民達が、野菜を持って姫様のところへやってくる。
「本当ですね。私たちも今日は二十日大根を食べることにしましょう」
「姫様にはこの前、お肉をもらったからお礼にふきのとうとたけのこをとってきたんだもらってくれ」
王都民が姫様にカゴいっぱいに入った山菜を渡す。
「こんなに……あなた達の家は大丈夫なのですか?」
「心配いりやせんよ。今年は沢山取れたましたから」
「そうですか。それではありがたく頂きます」
王城の畑は、王都民達も利用しているので、王族関係なくみんなで畑を管理している。
その為、この国は王族も民達と距離が近い。
「アーク!みてください。今夜はタケノコとふきのとうの揚げ物にしましょう」
「それはいいですね。今から夕食が楽しみです」
夕食……
「おお!今日は豪勢だな!」
「はい。民にタケノコをもらったので揚げ物にしてみました」
「こうしちゃおれんな!温かいうちに皆で食べよう!」
立場関係なく家臣も一緒に夕食を食べる。
夕食後は、父であるアッシュ騎士長と手合わせをする。
「さあ。どこからでもかかってきなさい!」
「お願いします」
手合わせは刀による実戦に近い訓練。
ブライト家は古くからマース王家に使える騎士をしている。
その血筋は、今の大陸では珍しい東の果てに存在すると伝承で言われる島国。
その国では刀と呼ばれる湾曲した細い刃をした剣を腰に携えるのが特徴。他にも黒髪というのも東の果ての民の証とされている。
その為、幼い頃から父に刀の扱いを習い、訓練してきた。得意技は居合。
今では、自身で考案した両肩に小太刀、左右の腰に太刀をさした4頭流を使っている。
4頭流のワケは、ブライト流の体術を併用しながらでも瞬時に居合を放てるようにするため。
相手に攻撃を絞らせないためと多人数を相手にした時、刀を両手で持っていては不利になると考えたからだ。
俺は、右腰の刀に手を添え、居合の構えを取る。
父の間合い近くまですり足で近づき、抜足と呼ばれる古武術を使い接近して、刀を一閃。
「良い抜足だ。途中まで近づいているのにも気づかなかった。それに普通の剣士なら目で追うこともできないほどの速さの抜刀だったな。が、私には通用しないな」
父はなんなく構えていた刀で受け止めて弾き返す。
「参りました」
「アーク。忘れるなよ。戦いの中でこそ学ぶことが多い。それに限界を越えるためには発想力というものも大切だ。考えよ。どうすれば良いかを」
「はい!」
手合わせ後は、水浴びで体を清め、姫様のところに向かう。
「今日はどうでした?」
「まだまだでした。ですが、これからも精進していつか父を超えます!どんな事からでも姫様を守れるように」
「信じています」
姫様が笑う。
…………
「おーい!新入り!起きろー」
「おじさんうるさいよ!」
男の声に目を覚ます。
「だってよー。まだ自己紹介してねぇしよ」
「奴隷剣闘士でいつ死ぬかも分からないのに名前なんて知る必要あるの?」
「あるよ!お互いに名前知らねえと呼びづらいじゃねえか」
男達が言い合いを始める。
(そうだ……隣国のプロミネンス王国によってマース小王国は滅ぼされたんだ)
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
王女の夢見た世界への旅路
ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。
無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。
王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。
これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。
※小説家になろう様にも投稿しています。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる