姫を守る剣〜あの日の誓いを果たすため最強へ〜

さくしゃ

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エリーゼ、エリの仲良し2人。クッキー。アークとの思い出

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闘技場地下一階 女性奴隷の檻

1日の仕事を終えたエリーゼとエリは檻に戻る。

「はい。見つからないように食べな」

エリが懐から何かを包んだ布を取り出し、エリーゼに渡す。

「どうしたんですか?これ?」

包みを受け取ったエリーゼは中を見る。

包みの中にはクッキーが入っていた。

「え?こんなお菓子どこで手に入れたんですか?」

驚き、つい大きな声で聞いてしまう。

「しー!静かに!他の奴らに聞かれたら面倒だ!……私ね。ここの係員達には少し人気があってね。たまにこうやってお菓子なんかを持ってきてくれる奴がいるんだ。だから遠慮せず食べて」

エリは笑って話す。

「エリさんで色々とすごいですね……ありがたくいただきます」

クッキーを一口頂く。

(美味しい……アークにも食べさせてあげたいな……そういえば、アークって剣を振るのもうまいけど、料理も上手なのよね)

エリーゼはクッキーを作るアークのことを思い出す……

マース小王国はあまり裕福ではないので、砂糖などはたまに野菜などがいっぱい取れたときに行商人と交換して手に入れていた。

「よし!よくお前の母さんが作ってくれたクッキーを作るか!」

父は、久しぶりに手に入った砂糖を持ち、私に亡くなった母がたまに作ってくれたクッキーを2人で作ろうと提案してきた。楽しそうだと思った私は、

「はい!作りましょう!」

と、ノリノリで材料を用意した。

「バター、牛乳、卵、砂糖、小麦粉と、これでよし」
「じゃあ作っていこうか!」

父さんは空のお鍋に適当に小麦粉を「ガサっ!」と豪快にあける。

小麦粉があたりに舞い、

「ゴホッゴホッ!」

と2人して咳き込んだ。

慌ててキッチンの窓を開けて、空気を入れ替える。

「もう!父さん!なんでも勢いよくやればいいってわけじゃないのよ!」

父は娘の私に注意されて、まるで悪戯がバレて怒られる時の少年のような罰の悪そうな顔をする。

「ぐっ!男はみんな勢いで生きてるんだ!これくらい多めにみてくれ!」

父はいつものようなよくわからない言い訳を言い始める。こうなった父は一度も引くことなくずっと同じことを言い続ける。

(全く……おかげで全身真っ白だわ……)

父さんと私は全身に小麦粉がつき、真っ白に染まっていた。

私と父さんが言い合いをしていると、

「何かありましたか!」

アークが慌ててやってきた。

アークは真っ白になっている私と父さんを見て、

「これはどういう状況ですか?」

と、呆れたように聞いてきた。

私は、砂糖が手に入ったから父さんと2人でクッキーを作ろうとしたことを伝えた。

「なるほど。それで国王様が原因で粉まみれになってしまった。と……はぁ……国王様。クッキーの生地とはこう作るのです」

アークは、小麦粉、砂糖を混ぜて、そこに卵牛乳を入れて、全て混ざるまでこねる。

その後に溶かしたバターを入れて、なめらかな生地になるまでこねる。

アークはテキパキと作ってあっという間に生地を作ってしまった。

「はい。これが正しいクッキーの作り方です」

生地を父に渡していた。

「アークよ。お前どこでクッキーを習ったのだ?」
「え?父さんからですよ。姫を側で守る騎士たるものクッキーや紅茶を作れなくてはどうする!と訓練の一環として行っています」
「そ、そうか」

父さんはアークが作ったクッキーの生地を見つめる。

「父さん。さっき男は勢いで生きてるって言っていたけど、アークは丁寧だったわよ」

私は父さんのさっきの発言にツッコミを入れると、アークも私と同意見のようで

「そうですね。勢いで生きておられるのは国王様だけだと思います」

アークも父さんの意見を否定する。

「ぐっ。俺が言っている男とは漢という意味だ!」
「また屁理屈を」

その後、へそを曲げる父と一緒に3人でクッキーを焼いた。

(ふふふ……訓練の一環だって言っていたけどアークってばクッキー以外にもいろんな料理ができるのよね)

私がアーク達との思い出を振り返り笑う。

エリさんはそんな私をみて、

「良かった。ようやく笑ってくれた」

小さな独り言を言って笑う。
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