学園最弱の僕。成り上がる

さくしゃ

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「説明は以上だ。いいか?てめえの仕事はとにかく雑用だ。この建物全ての床、天井、壁、外壁全部綺麗にしろ。それから俺ら30人分の飯、洗濯物だ。後は……そうだな。酒に酔った俺らに殺されねぇように気をつけることだな」

「そうですか。わかりました」

「即答かよ……もっと怖がれよ平民風情が!生意気なんだよ!」

突然腰の剣を抜き放ち容赦なく振るってくる顔色の悪い男。

しかし、ひどく遅い攻撃。軽く避ける。

その際男の体から薬品を思わせる匂いがした。

「ち!次は絶対に殺してやる」

避けられたことが相当癇に障ったらしい男はポケットから折り畳まれた紙を取り出し鼻に近づけて塩のような物を思いきり吸い込む。

「はぁー」

それを吸い込んだ瞬間、険しい表情からだらしなく惚ける男は、そのまま「エヘヘへ」と笑いながら部屋を出て行った。

「これが魔法騎士団「暴乱の徒」か……」

その後、男に言われた通りまずは昼食を30人分用意、それから洗面所の天井スレスレにまでつまれた洗濯物の山、その山の数、実に8個。それを一つ一つ洗濯板で擦り洗っていく。

「おいおい!俺たちは貴族だぞ?ふかし芋にパンとスープ……ふざけんな!こんな貧乏くせえもんなんて食えるか!……ヒック」

洗濯を終え一階の食堂へ向かうと突然僕の顔に向かって皿が投げつけられた。

首を横に動かす事でなんとかギリギリ避ける。

頬を掠めて行ったお皿は壁にあたり砕け散る。

「にゃはは!避けられてんの!」

「ああ!うるせぇな!やるか!」

「お!喧嘩だ!」

「どっちが勝つか賭けようぜ!」

僕に皿を投げた男は隣の男と取っ組み合いの大喧嘩。

それを見て周りの男達が賭け事をし始める。

休みなく働かされ、不良騎士達の気分によっていつ攻撃が飛んでくるかわからないこの環境。

「それに加えて3日に一度は学園に戻って剣帝選抜大会への出場……」

それに学園までの2日かかる距離を1日で走破しなければならない。

これが最終戦まで……そう考えると少し心が折れそうになったが首を振り気持ちを切り替える。

「絶対に負けない。何があろうと絶対に夢を諦めてたまるか」

その後、食事抜きで建物の三階から一階までの床、天井、窓の掃除を行い、その合間に洗濯物、食事の用意を済ませ、それが終わると苔だらけの外壁を命綱なしで登り濡らした布で拭く。
終わる頃には深夜を回っていて朝日が昇る2時間前。

「お、終わった……」

昨日の夜から何も食べていないのとアイさんとの試合から疲れたまま休みらしい休みもなく走ってここまで来ての一日中雑用……気がついたら朝日が昇るまで外壁に寄りかかり眠っていた。

「ふあー」

眠い目を擦り、キッチンへ行き30人分の朝食を作り、明日は選抜大会の為荷物をまとめて学園を目指して走った。

丸一日走り続け試合開始時間9時ギリギリに学園へ到着。

ヘトヘトのまま試合に臨み辛くも勝利。

そして明日の朝食までに戻らないといけないので試合後にすぐに砦を目指して走る。

戻ってからは雑用と男達の攻撃を避ける日々。

そしてまたすぐに学園へと戻る。

眠れるのは3日に一度それも2時間程。

「おら!ちゃんと起きてないと死んじまうぞ!」

地獄のような生活が始まって3週間経ったある日、いつものように料理を運ぶと食堂入口の脇から男達が現れて切り掛かってきた。

「っ!」

意識が朦朧(もうろう)としていて反応が遅れ、肩を切られてしまった。

「おっしゃ!当てたぜ!賭けは俺の勝ちだ!」

「くそ!たまたま運が良かっただけじゃねえか!」

「そうだぞ!調子にのんじゃねぇ!」

「ふっふっふ……男の僻みはみっともないぜ⭐︎」

男達はそれぞれの席へと戻っていく。

「おい!いつまでそんなところで蹲ってんだ!早く飯をもってこい!」

「こっちは腹が減ってんだよ!」

夜勤明けでイライラした男達が怒鳴ってくる。

この理不尽な状況。
普通なら頭に来るのだろう。が、そんな元気はなく、肩を布で止血しトレーを運ぶ。

そしてこんな生活が4週間、5週間……と続き迎えた最終戦前日。

「お前の任務はこれで終わりだ。それと学園からの連絡だ。「あなたのしぶとさには呆れるばかりです。そのしぶとさに免じてこちらが用意した相手を倒すことができましたらあなたから手を引きます」だそうだ。わかったらそのしけた面をお外に向けてさっさと消えろ!」

魔法騎士団「暴乱の徒」団長フレンズに砦の外へとゴミのように投げ捨てられ地面を転がる僕は空を見上げる形で止まる。

「……」

鉛色の空は今にも降り出しそう。

そんな空をしばらく眺めた後、ふらふらと立ち上がり学園を目指して歩き出す。

試合は翌日の午前9時から。
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