かがやきエース

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三話 前方不注意

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入学式後、クラスにて。
「お兄ちゃん、先生になったのなら言ってくれればよかったのに。」
「しかも女子野球部の監督って。」
「でもびっくりしただろ。」
「ほんとだよ!」
「思わず叫んじゃったじゃない!」
「まあまあ、この後入部届け出しに行くだろ。グラウンドの方で待ってるから。」
「はーい。」
「わかったわ。」
返事を聞くとお兄ちゃんは行ってしまった。
カバンの中を見ると入部届けが入っていた。
「私はもう書いたから。」
「はやっ!」
お姉ちゃんはちゃんと前日に準備していたのだろう。
でもあれだけちゃんと準備していたのになんで女子野球部の監督の名前は知らなかったんだろう?

「よし!書けた!早く行こう!」
「ちょっと!廊下は走っちゃ危ないわよ!」
「大丈夫大丈夫。」
「愛!ちゃんと前見て!」
後ろのお姉ちゃんを一瞬見ていたら
「うわぁぁ!」
「むぐっ!」
誰かに激突してしまった…
「ご、ごめんなさい!」
「いや、私も前見てなくてごめん。」
そこには私と同じくらいの身長の女の子が立っていた。
確か私と同じクラスだったはず。
「す、すいません。確か同じクラスの輝球 愛さんでしたね。ぼ、僕は戦刃 零稀(いくさば れいき)って言います…」
ぶつかったのはこっちからなのに自分が悪いように見える。
「愛!大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。」
「そっちの子は?」
「ぼ、僕も大丈夫です…」
「よかった…愛!前見てって言ったばかりじゃない!」
「うぅ…ごめんなさい…」
「まったく…グラウンドに行くわよ。戦刃さんもごめんなさいね、うちの愛が。」
お姉ちゃんはちゃんとクラスのみんなの名前を覚えているようだ。
「は、はい…僕も時間を取らせてしまってすみません…」
「大丈夫よ。」
そう言ってお姉ちゃんは私のカバンを持って先に行こうとしている。
「待ってよ~お姉ちゃん~」
私はお姉ちゃんを追いかけてグラウンドに向かうのだった。
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