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第三十話 『湖に映る一番星』亭
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「そういえば皆様方、宿はどちらに?」
マンジローさんの言葉にしまった、という顔になる私達三人。
「あっ忘れてた! どうしよう……」
「なんだよもうその話したんじゃなかったのか?」
アシンさんも呆れ顔だ。
「その話、とは?」
「いやね、日程が早まったもんで、空いてる宿とか大旦那様に紹介して貰えば、って言ってここを案内したんですよ」
「なるほどなるほど……そういうことでしたら、私が経営している宿が幾つかありますから、空いていないか確認してみましょう」
またも鳴らされるベル。ちりんちりん。
今度は執事さんがいらっしゃって、さらさらりとマンジローさんが書いたメモを受け取り、出て行った。
「さて、これでもう少し時間が経てば分かるでしょう。まあこの時期ならばどこかは空いていると思いますよ」
「ありがとうございます」
「さてさて明日の予定ですが」
「その前に一つ、よろしいでしょうか?」
マンジローさんと私の会話に割って入るギンシュちゃん。おや珍しい。どうしましたかな?
「何か?」
「エリィ殿は国王陛下との謁見の予定がありますので、もしそちらの予定が入りましたら謁見の予定の方を優先させていただきたく思います」
「ああそれは勿論。しかしそうなると……隠れ家への移動はちと大変ですな……ちなみにエリィ殿、謁見以外の予定は何か?」
「今のところは、特に」
「では謁見を済ませるまでは宿でゆっくりするなり王都を回るなどして、謁見を終えたら隠れ家に移動、という流れのがよろしいかもしれませんな。あ、それと冒険者ギルドへはついてきて貰えますかな? 恐らく私がそのまま行っても依頼の発注だと思われてしまいますので」
「分かりました。構いませんよ。あっではこちらも一つ」
「何か?」
「例の……あの御方はそれはそれで、また別に奴隷をちょっと見させていただきたいのですが」
「ほぅ……彼女はお気に召しませんで?」
「いえそういうことではなく……マンジローさんの目利きで見つけた、掘り出し物を探してみたいなぁと」
私のその言葉に、マンジローさんもにやにやしだす。
「これはこれは……まさか、その【鑑定】スキルを使うおつもりですかな?」
「ええ。何なら空いてる時間で奴隷の【鑑定】して差し上げますよ」
「それは、また……大きく出ましたねぇ。ちなみにどこまで分かるのですかね?」
「えっと……その人が隠している秘密も、大抵のことは分かってしまいます」
「おっほっほっほっほっ! なんともはや、『神の落し子』とは恐ろしい存在ですなぁ。ちなみに私の恥ずかしい秘密を一つ、私にだけ聞こえるように教えていただけますかな?」
……私は再度【鑑定】を使って、マンジローさんの秘密をざっとのぞいていく。いいのかこれ。
幾つかあるけど……これにしよ。
私はそっとマンジローさんの耳元に寄る。ちなみに他の人達は少し距離を開けて貰った。万が一のために。
「家に帰ると奥さんのことをママ呼ばわりして三十分、抱きしめたまま離れないでそのままなし崩しにくんずほぐれつする」
マンジローさんは目を大きく見開いて、一言。
「いやはや……素晴らしい! 誰にも知られていない秘密が、ほんの先ほどあったばかりのあなたに言い当てられてしまうとは! これは怖い怖い」
……凄いなぁマンジローさん。まるで動揺してないんだけど。
むしろ背中から二人の視線がちくちく刺さるんですけど……あとがこわい。
「お、おい! 俺は!? 俺の秘密は!? 嬢ちゃん俺の何を知ってるんだよ!?」
「え、言った方がいいんですか?」
「いや言うな! 言わないでくれ! 誰にも言わないと約束してくれ! 俺は! 俺はぁあああ!!」
何があったんだよアシン船長。そもそも見ようと思わないと見れないからそんなに沢山秘密はのぞいてないぞ。
あっでも……彼女たちのは結構知ってるからなぁ……魔法がどんな感じで覚えてるか、結構チェックさせて貰ったし。
どうしよう。黙ってよっかな。でもなーきっとバレるしなぁ。怒られるかなぁ。うーむ。
とかなんとか思ってたらこんこんこんとノックが。
マンジローさんが許可を出すと先ほどの執事さん登場。マンジローさんにごにょごにょすると。
「どうやら私自慢のホテルに空きがあるようですな。馬車も用意済みとのことですので、正面からお帰り下さい。明日以降の日程は、また人を遣りましょう。それでは。今宵も月あかりに誘われて」
「「星と踊るダンスの夜を」」
ミレイもギンシュちゃんも華麗なカーテシー。カーテシーって要するに女性がスカートもって足下げてふんわりする挨拶のあれ。あれやってた。うわーかっこいぃー。
「ちょっとお姉さま、きちんと挨拶しないと駄目ですぅ」
「そうだ、あんな見事な挨拶を受けたら返礼するのが筋だろう」
「ごめん二人とも、今の挨拶なの?」
二人ともこれまた絶句。そして呆れ顔。
「おっほっほっほっほっ! これはまた面白いものを見せて頂きましたぞ!」
二人を代表してギンシュちゃんが私に問う。
「えっと……どこからだ、どこから分からないのだ?」
「マンジローさんの『今宵も月あかりに~』ってくだりから」
「そこからか!? そこからなのか!?」
「うん」
「はぁ……あれは夜の別れの挨拶だ。あの言葉が来たら、先ほど私達が返した言葉を言いながら、女性はスカートを軽く持ち、片方の足をこう引き、もう片方は少し膝を曲げ、こうやるのだ」
「なるほどね……つまり朝と昼も」
「もちろんあるぞ! ……ちょっとまて、これが分からんということは……陛下への謁見の際も」
「あ、何か決まり事とかあるの!?」
「あるに決まってるだろう!? 何一つ出来ていなかったらお笑い種だぞ!?」
「まあ別にいいや。貴族に笑われようが大したことないし」
「大した事あるだろう!! こうしちゃおれん! 早く宿に戻って特訓せねば!」
ギンシュちゃんは慌てて階下へと向かった。私はと言えば、一度マンタローさんに向き直って、
「星と踊る、ダンスの夜を」
よしっ、今度はきっちり出来たぞ。
「ええ。ではまた」
「はい。また明日」
私なりの礼儀のつもりで、しっかりとお辞儀をして、私もミレイと一緒に階下へと向かった。
しっかし……でもなんというか、私が女性の挨拶というのも……うーん。
でももうこのショートブーツのヒールも割と慣れちゃったし、スカートもそんなに違和感が無くなってきたし。
ふわふわで腰回りが本当に便りないのだけれど、でもこれも慣れちゃったんだよねぇ。
という訳でこのカーテシーの挨拶もいずれ慣れるでしょ。
……自分で言うのもなんだけど、少なくともトイレはもう殆ど違和感がない。ヤバい。
おまけに下着も……色々と……その……うおっほん!
そうだ! 王都で色々さがそっと!
おかねならあるしぃ~。
私達は馬車に乗って今日の宿へと案内された。
「なっ……ななっ……なななっ……」
「人族でもこれくらいの宿があるとは……流石王都ですぅ」
「ホントだすごーい。綺麗なトコだねー。で、どしたのギンシュちゃん?」
「そなたらはここがどこだか分かっているのか!?」
「今日泊まる宿でしょ?」
「違うっ! ここはだな、王都に数多あれど最高級の宿として評判の『湖に映る一番星』亭だ! おまけに誰かの紹介が無ければ、王族だって入れないのだぞ!? 分かるか! ここがどれだけ凄い宿なのか分かるか!」
「うんギンシュちゃんの熱量でなんとなく」
「お客様、お部屋をご案内いたしますが宜しいでしょうか?」
「はいお願いしまーす」
「おいまだ話は終わっていないぞ!」
「いいから早く宿入ろうよー」
「なななっ……ななななっ……」
いやー凄かったわー魔法の箱で最上階の七階まできましたわー。
え、エレベーターじゃないのかって?
違うんですよそれが。文字通り【魔法】で動く箱なんですよ。
この分だと魔法の箱二号でテレビとか出てきてもおかしくないかもね。うわー楽しみー。
「お客様のお部屋はこちらになります。もし何かありましたらこちらのベルを鳴らして下さい。扉の外に係の者がおりますので、すぐに伺います」
「ありがとうございます。あと食事ってまだあります?」
「何をご所望でしょうか?」
「おいしいの! あっ三人いるけど二人分で」
「かしこまりました。では、選り取り見取りのものをご用意させていただきます」
扉を音もなく閉める宿のスタッフさん。いやもうこれ一流ホテルですよホント。
おまけに凄いのがですね、この最上階……一部屋のみなのです。つまり貸し切りモード!
「いやーこりゃ凄いねぇ。こんな宿に泊まれるなんて……マンジローさん太っ腹だねぇ」
「馬鹿なこと言うんじゃない!! こっ、こここ……この宿が幾らすると思ってるんだ!?」
「分からない。幾ら?」
「いいか、普通の部屋で金貨三枚だ。ましてやここは最上階だ……」
「そういや最上階ってなんか意味あるの?」
「『宿で最もいい部屋』のことだ! そんなことも知らなかったのか!?」
「だってみんな最上階最上階っていうから」
「ああもう……いいか、さっきも言ったが普通の部屋でも金貨三枚もするのだ。ここは最上階だ。つまり一番豪華で金のかかる部屋だ。幾らかかるか私にも分からん……そもそもこんな部屋、王族か公爵くらいしか泊まらないような部屋だぞ?」
「え、じゃあギンシュちゃんは」
「ある訳ないだろう!! ウチは確かに伯爵家だが、武勇の伯爵家だから金がある方ではないのだ! 案外ピピーナのムイタメル子爵の方が金は持ってたりしてな……はは……」
あーなんか聞いちゃいけないこと聞いたのかも。ミレイにも話振ってみよっと。
「ちなみにミレイは」
「そもそも私は自分のお城とあの町以外はどこも行ったことがないですぅ。だからはじめてでとっても楽しいですぅ!」
「良かった。あれでも実家からピピーナって距離あるんじゃない?」
「え、遠距離を飛ぶ魔法があるですぅ」
あっ今誤魔化した。ミレイは嘘吐くときすぐ分かるな。
「じーっ」
「そっ、そんな目しても言わないですぅ! 一族の秘術だから言ったらいけないんですぅ」
「ふーん、ミレイの一族の秘術は遠距離を飛ぶ魔法に近い何か、と」
「あああっお姉さま非道いですぅ! そーゆーの『ゆーどーじんもん』っていうですよぉ! ダメですよぉ!」
いや私何も言ってないけど。これは誘導尋問じゃなくてどちらかといえば自爆とか自供っていうんだけど。この残念美人が。
「そいえばお金っていつ払うの?」
「そんなこと怖くて聞けるか! 私は無いからな! 幾ら王族の客人でもこんな宿の金までは出せんぞ!」
ミレイも勿論ない。ということは私のお金……金貨……いや流石に足りると思うけど、でもちょっとあんだけギンシュちゃんに言われると不安になる。
ちょっと怖くなって呼び鈴を鳴らした。そういや呼び鈴って語源ここからなんだな。私賢くなったぞ!
ちりりんという音と共に、部屋にすっと入ってくるメイドさん。
「何か御用でしょうか?」
「あの、宿のお支払っていつすれば? それと額を全く聞いていないので」
「マンジロー支配人のお客様ですからお金は必要ありません。お支払については気にしなくて結構ですよ?」
へ?
「他に何か?」
「あっ、えーとお風呂って」
「部屋の奥の向こうにございます。そのまま外に出て頂ければ露天のお風呂もございますよ。王都の夜景が一望出来てとても素敵です。夕食の後にいかがでしょうか?」
「ありがとうございます。タオル、えっと……体を拭く布とかは」
「全てお部屋の所にございます。もし足りなければ、鈴を鳴らしていただければお持ちしますので」
「あ、ありがとうございました。もう大丈夫です」
「ふふっ。それでは」
そういうとまた扉の方へ音もなく歩き、音も無く扉は閉まった。なんだあれ。忍者か。いや女性だからくノ一か。
「はーいとゆーわけでここの宿の支払いは気にしなくていいことが判明しましたーひゃっほー!」
私はベッドにダイブする。おぎょーぎが悪いけどそんなの知ったことか。これは一晩だけの部屋の主の特権なのだ!
「お姉さま! はしたないですぅ! そんなのダメですぅ!」
「まったくだ! なんてみっともない!」
二対一では分が悪いので、一人味方につけることにする。
「ねぇミレイ、貴女も小さい頃やったことなかった?」
「そっ、それは……」
「久々に、やってみない? こんないいベッド、当分寝れないかもよ?」
「でもぉ……」
「今日だけ、今日だけだから……ちょっと童心に返って……明日からまた、立派なレディになればいいじゃない」
「そ、そう……ですかぁ?」
「そうそう。ふっかふかだよぉ……きもちいいよぉ……」
「あ、あぅ……」
「じゃあいくよぉ……」
「えっちょっと!? お姉さまぁ!?」
私はお姫様だっこでミレイを持ちあげて、まだ皺ひとつついていない綺麗な方のベッドへ、放り投げる。
「えいっ!」
「きゃあっ!」
ぼふっ、という空気の弾ける音にミレイは包み込まれた。ミレイは動かない。
代わりにギンシュちゃんがゆらりと動いた。
「きーさーまーぁー」
「うっ」
「なーぁにを……しているんだーぁ……」
ギンシュちゃんめっちゃくちゃ怒ってる。どうしよ。
「……ぷっ、あはははっ! お姉さまもう一回! もう一回やってほしいですぅ!」
「へっ」
「ちょ、ちょっと……ミレイ様……」
「ギンシュちゃんもやられてみるといいですよぉ! そだ、ギンシュちゃんもやるべきですぅ! ねっお姉さま!」
「そだね。じゃあ」
「ちょっ!? やっやめろぉ!? わたしはぁ!?」
ちょっと暴れていたが、ぐいっと腰を持ち上げるともう動けない。流石に鍛えているだけあってミレイよりかはずしりときたが、それでも所詮は女の子だ。軽い軽い。
「えいっ!」
「きゃあああっっ!!」
おっと、ギンシュちゃん想像以上にかわいらしい声。
私とミレイは二人して顔を見合わせ、にやにやしちゃう。
これまたぼふっという音と共に、布団から出てくる。
「……聞いたか?」
「何を?」
「……聞いたんだな?」
「一言だけ言っていい?」
「ダメだ」
「……ギンシュちゃん、かわいい」
「---------っっっっ!!??!?!?」
めっちゃ真っ赤になってた。
それからベッドで散々にはしゃいで、ノックがきたのでやめてご飯を食べた。
あんな適当なオーダーだったのにめちゃんこ美味しかった。凄い。ヤバい。なにこれ。
そしてそのあとはお風呂へ。ギンシュちゃんは流石にミレイと一緒はむーりーとかゆってたけど、無理矢理ひっぺがした。
裸の付き合いっていうじゃない? いやこっちの世界では言わないかもだけど。
そしたらギンシュちゃん縮こまって裸で土下座してた。もう結構慣れたかと思ってたら、まだ我慢してたっぽい。
そのあとミレイがめっちゃ冷たい目をしててなんかこわかった。裸なのに。マッパなのに。
身分の違いって難しいなぁ。私が間に入らねば!
お風呂からの景色もサイコー! 夜景もそうだけど、もちろん夜景以外も。具体的には谷とか丘とか茂みとか。やっふー!
とゆーわけで三人で洗いっこした。楽しかった。
更にさらに、お風呂でちょっと絡んだりいちゃいちゃしたりして、お風呂あがってひとやすみー。ふぅ。
あーでもホントさっぱりしましたわ。やっぱ【クリーン】も便利だけど、【クリーン】だけだと駄目だね。
もう毎日ここでいいや私。今日から私はここの住人になるぞー!
マンジローさんの言葉にしまった、という顔になる私達三人。
「あっ忘れてた! どうしよう……」
「なんだよもうその話したんじゃなかったのか?」
アシンさんも呆れ顔だ。
「その話、とは?」
「いやね、日程が早まったもんで、空いてる宿とか大旦那様に紹介して貰えば、って言ってここを案内したんですよ」
「なるほどなるほど……そういうことでしたら、私が経営している宿が幾つかありますから、空いていないか確認してみましょう」
またも鳴らされるベル。ちりんちりん。
今度は執事さんがいらっしゃって、さらさらりとマンジローさんが書いたメモを受け取り、出て行った。
「さて、これでもう少し時間が経てば分かるでしょう。まあこの時期ならばどこかは空いていると思いますよ」
「ありがとうございます」
「さてさて明日の予定ですが」
「その前に一つ、よろしいでしょうか?」
マンジローさんと私の会話に割って入るギンシュちゃん。おや珍しい。どうしましたかな?
「何か?」
「エリィ殿は国王陛下との謁見の予定がありますので、もしそちらの予定が入りましたら謁見の予定の方を優先させていただきたく思います」
「ああそれは勿論。しかしそうなると……隠れ家への移動はちと大変ですな……ちなみにエリィ殿、謁見以外の予定は何か?」
「今のところは、特に」
「では謁見を済ませるまでは宿でゆっくりするなり王都を回るなどして、謁見を終えたら隠れ家に移動、という流れのがよろしいかもしれませんな。あ、それと冒険者ギルドへはついてきて貰えますかな? 恐らく私がそのまま行っても依頼の発注だと思われてしまいますので」
「分かりました。構いませんよ。あっではこちらも一つ」
「何か?」
「例の……あの御方はそれはそれで、また別に奴隷をちょっと見させていただきたいのですが」
「ほぅ……彼女はお気に召しませんで?」
「いえそういうことではなく……マンジローさんの目利きで見つけた、掘り出し物を探してみたいなぁと」
私のその言葉に、マンジローさんもにやにやしだす。
「これはこれは……まさか、その【鑑定】スキルを使うおつもりですかな?」
「ええ。何なら空いてる時間で奴隷の【鑑定】して差し上げますよ」
「それは、また……大きく出ましたねぇ。ちなみにどこまで分かるのですかね?」
「えっと……その人が隠している秘密も、大抵のことは分かってしまいます」
「おっほっほっほっほっ! なんともはや、『神の落し子』とは恐ろしい存在ですなぁ。ちなみに私の恥ずかしい秘密を一つ、私にだけ聞こえるように教えていただけますかな?」
……私は再度【鑑定】を使って、マンジローさんの秘密をざっとのぞいていく。いいのかこれ。
幾つかあるけど……これにしよ。
私はそっとマンジローさんの耳元に寄る。ちなみに他の人達は少し距離を開けて貰った。万が一のために。
「家に帰ると奥さんのことをママ呼ばわりして三十分、抱きしめたまま離れないでそのままなし崩しにくんずほぐれつする」
マンジローさんは目を大きく見開いて、一言。
「いやはや……素晴らしい! 誰にも知られていない秘密が、ほんの先ほどあったばかりのあなたに言い当てられてしまうとは! これは怖い怖い」
……凄いなぁマンジローさん。まるで動揺してないんだけど。
むしろ背中から二人の視線がちくちく刺さるんですけど……あとがこわい。
「お、おい! 俺は!? 俺の秘密は!? 嬢ちゃん俺の何を知ってるんだよ!?」
「え、言った方がいいんですか?」
「いや言うな! 言わないでくれ! 誰にも言わないと約束してくれ! 俺は! 俺はぁあああ!!」
何があったんだよアシン船長。そもそも見ようと思わないと見れないからそんなに沢山秘密はのぞいてないぞ。
あっでも……彼女たちのは結構知ってるからなぁ……魔法がどんな感じで覚えてるか、結構チェックさせて貰ったし。
どうしよう。黙ってよっかな。でもなーきっとバレるしなぁ。怒られるかなぁ。うーむ。
とかなんとか思ってたらこんこんこんとノックが。
マンジローさんが許可を出すと先ほどの執事さん登場。マンジローさんにごにょごにょすると。
「どうやら私自慢のホテルに空きがあるようですな。馬車も用意済みとのことですので、正面からお帰り下さい。明日以降の日程は、また人を遣りましょう。それでは。今宵も月あかりに誘われて」
「「星と踊るダンスの夜を」」
ミレイもギンシュちゃんも華麗なカーテシー。カーテシーって要するに女性がスカートもって足下げてふんわりする挨拶のあれ。あれやってた。うわーかっこいぃー。
「ちょっとお姉さま、きちんと挨拶しないと駄目ですぅ」
「そうだ、あんな見事な挨拶を受けたら返礼するのが筋だろう」
「ごめん二人とも、今の挨拶なの?」
二人ともこれまた絶句。そして呆れ顔。
「おっほっほっほっほっ! これはまた面白いものを見せて頂きましたぞ!」
二人を代表してギンシュちゃんが私に問う。
「えっと……どこからだ、どこから分からないのだ?」
「マンジローさんの『今宵も月あかりに~』ってくだりから」
「そこからか!? そこからなのか!?」
「うん」
「はぁ……あれは夜の別れの挨拶だ。あの言葉が来たら、先ほど私達が返した言葉を言いながら、女性はスカートを軽く持ち、片方の足をこう引き、もう片方は少し膝を曲げ、こうやるのだ」
「なるほどね……つまり朝と昼も」
「もちろんあるぞ! ……ちょっとまて、これが分からんということは……陛下への謁見の際も」
「あ、何か決まり事とかあるの!?」
「あるに決まってるだろう!? 何一つ出来ていなかったらお笑い種だぞ!?」
「まあ別にいいや。貴族に笑われようが大したことないし」
「大した事あるだろう!! こうしちゃおれん! 早く宿に戻って特訓せねば!」
ギンシュちゃんは慌てて階下へと向かった。私はと言えば、一度マンタローさんに向き直って、
「星と踊る、ダンスの夜を」
よしっ、今度はきっちり出来たぞ。
「ええ。ではまた」
「はい。また明日」
私なりの礼儀のつもりで、しっかりとお辞儀をして、私もミレイと一緒に階下へと向かった。
しっかし……でもなんというか、私が女性の挨拶というのも……うーん。
でももうこのショートブーツのヒールも割と慣れちゃったし、スカートもそんなに違和感が無くなってきたし。
ふわふわで腰回りが本当に便りないのだけれど、でもこれも慣れちゃったんだよねぇ。
という訳でこのカーテシーの挨拶もいずれ慣れるでしょ。
……自分で言うのもなんだけど、少なくともトイレはもう殆ど違和感がない。ヤバい。
おまけに下着も……色々と……その……うおっほん!
そうだ! 王都で色々さがそっと!
おかねならあるしぃ~。
私達は馬車に乗って今日の宿へと案内された。
「なっ……ななっ……なななっ……」
「人族でもこれくらいの宿があるとは……流石王都ですぅ」
「ホントだすごーい。綺麗なトコだねー。で、どしたのギンシュちゃん?」
「そなたらはここがどこだか分かっているのか!?」
「今日泊まる宿でしょ?」
「違うっ! ここはだな、王都に数多あれど最高級の宿として評判の『湖に映る一番星』亭だ! おまけに誰かの紹介が無ければ、王族だって入れないのだぞ!? 分かるか! ここがどれだけ凄い宿なのか分かるか!」
「うんギンシュちゃんの熱量でなんとなく」
「お客様、お部屋をご案内いたしますが宜しいでしょうか?」
「はいお願いしまーす」
「おいまだ話は終わっていないぞ!」
「いいから早く宿入ろうよー」
「なななっ……ななななっ……」
いやー凄かったわー魔法の箱で最上階の七階まできましたわー。
え、エレベーターじゃないのかって?
違うんですよそれが。文字通り【魔法】で動く箱なんですよ。
この分だと魔法の箱二号でテレビとか出てきてもおかしくないかもね。うわー楽しみー。
「お客様のお部屋はこちらになります。もし何かありましたらこちらのベルを鳴らして下さい。扉の外に係の者がおりますので、すぐに伺います」
「ありがとうございます。あと食事ってまだあります?」
「何をご所望でしょうか?」
「おいしいの! あっ三人いるけど二人分で」
「かしこまりました。では、選り取り見取りのものをご用意させていただきます」
扉を音もなく閉める宿のスタッフさん。いやもうこれ一流ホテルですよホント。
おまけに凄いのがですね、この最上階……一部屋のみなのです。つまり貸し切りモード!
「いやーこりゃ凄いねぇ。こんな宿に泊まれるなんて……マンジローさん太っ腹だねぇ」
「馬鹿なこと言うんじゃない!! こっ、こここ……この宿が幾らすると思ってるんだ!?」
「分からない。幾ら?」
「いいか、普通の部屋で金貨三枚だ。ましてやここは最上階だ……」
「そういや最上階ってなんか意味あるの?」
「『宿で最もいい部屋』のことだ! そんなことも知らなかったのか!?」
「だってみんな最上階最上階っていうから」
「ああもう……いいか、さっきも言ったが普通の部屋でも金貨三枚もするのだ。ここは最上階だ。つまり一番豪華で金のかかる部屋だ。幾らかかるか私にも分からん……そもそもこんな部屋、王族か公爵くらいしか泊まらないような部屋だぞ?」
「え、じゃあギンシュちゃんは」
「ある訳ないだろう!! ウチは確かに伯爵家だが、武勇の伯爵家だから金がある方ではないのだ! 案外ピピーナのムイタメル子爵の方が金は持ってたりしてな……はは……」
あーなんか聞いちゃいけないこと聞いたのかも。ミレイにも話振ってみよっと。
「ちなみにミレイは」
「そもそも私は自分のお城とあの町以外はどこも行ったことがないですぅ。だからはじめてでとっても楽しいですぅ!」
「良かった。あれでも実家からピピーナって距離あるんじゃない?」
「え、遠距離を飛ぶ魔法があるですぅ」
あっ今誤魔化した。ミレイは嘘吐くときすぐ分かるな。
「じーっ」
「そっ、そんな目しても言わないですぅ! 一族の秘術だから言ったらいけないんですぅ」
「ふーん、ミレイの一族の秘術は遠距離を飛ぶ魔法に近い何か、と」
「あああっお姉さま非道いですぅ! そーゆーの『ゆーどーじんもん』っていうですよぉ! ダメですよぉ!」
いや私何も言ってないけど。これは誘導尋問じゃなくてどちらかといえば自爆とか自供っていうんだけど。この残念美人が。
「そいえばお金っていつ払うの?」
「そんなこと怖くて聞けるか! 私は無いからな! 幾ら王族の客人でもこんな宿の金までは出せんぞ!」
ミレイも勿論ない。ということは私のお金……金貨……いや流石に足りると思うけど、でもちょっとあんだけギンシュちゃんに言われると不安になる。
ちょっと怖くなって呼び鈴を鳴らした。そういや呼び鈴って語源ここからなんだな。私賢くなったぞ!
ちりりんという音と共に、部屋にすっと入ってくるメイドさん。
「何か御用でしょうか?」
「あの、宿のお支払っていつすれば? それと額を全く聞いていないので」
「マンジロー支配人のお客様ですからお金は必要ありません。お支払については気にしなくて結構ですよ?」
へ?
「他に何か?」
「あっ、えーとお風呂って」
「部屋の奥の向こうにございます。そのまま外に出て頂ければ露天のお風呂もございますよ。王都の夜景が一望出来てとても素敵です。夕食の後にいかがでしょうか?」
「ありがとうございます。タオル、えっと……体を拭く布とかは」
「全てお部屋の所にございます。もし足りなければ、鈴を鳴らしていただければお持ちしますので」
「あ、ありがとうございました。もう大丈夫です」
「ふふっ。それでは」
そういうとまた扉の方へ音もなく歩き、音も無く扉は閉まった。なんだあれ。忍者か。いや女性だからくノ一か。
「はーいとゆーわけでここの宿の支払いは気にしなくていいことが判明しましたーひゃっほー!」
私はベッドにダイブする。おぎょーぎが悪いけどそんなの知ったことか。これは一晩だけの部屋の主の特権なのだ!
「お姉さま! はしたないですぅ! そんなのダメですぅ!」
「まったくだ! なんてみっともない!」
二対一では分が悪いので、一人味方につけることにする。
「ねぇミレイ、貴女も小さい頃やったことなかった?」
「そっ、それは……」
「久々に、やってみない? こんないいベッド、当分寝れないかもよ?」
「でもぉ……」
「今日だけ、今日だけだから……ちょっと童心に返って……明日からまた、立派なレディになればいいじゃない」
「そ、そう……ですかぁ?」
「そうそう。ふっかふかだよぉ……きもちいいよぉ……」
「あ、あぅ……」
「じゃあいくよぉ……」
「えっちょっと!? お姉さまぁ!?」
私はお姫様だっこでミレイを持ちあげて、まだ皺ひとつついていない綺麗な方のベッドへ、放り投げる。
「えいっ!」
「きゃあっ!」
ぼふっ、という空気の弾ける音にミレイは包み込まれた。ミレイは動かない。
代わりにギンシュちゃんがゆらりと動いた。
「きーさーまーぁー」
「うっ」
「なーぁにを……しているんだーぁ……」
ギンシュちゃんめっちゃくちゃ怒ってる。どうしよ。
「……ぷっ、あはははっ! お姉さまもう一回! もう一回やってほしいですぅ!」
「へっ」
「ちょ、ちょっと……ミレイ様……」
「ギンシュちゃんもやられてみるといいですよぉ! そだ、ギンシュちゃんもやるべきですぅ! ねっお姉さま!」
「そだね。じゃあ」
「ちょっ!? やっやめろぉ!? わたしはぁ!?」
ちょっと暴れていたが、ぐいっと腰を持ち上げるともう動けない。流石に鍛えているだけあってミレイよりかはずしりときたが、それでも所詮は女の子だ。軽い軽い。
「えいっ!」
「きゃあああっっ!!」
おっと、ギンシュちゃん想像以上にかわいらしい声。
私とミレイは二人して顔を見合わせ、にやにやしちゃう。
これまたぼふっという音と共に、布団から出てくる。
「……聞いたか?」
「何を?」
「……聞いたんだな?」
「一言だけ言っていい?」
「ダメだ」
「……ギンシュちゃん、かわいい」
「---------っっっっ!!??!?!?」
めっちゃ真っ赤になってた。
それからベッドで散々にはしゃいで、ノックがきたのでやめてご飯を食べた。
あんな適当なオーダーだったのにめちゃんこ美味しかった。凄い。ヤバい。なにこれ。
そしてそのあとはお風呂へ。ギンシュちゃんは流石にミレイと一緒はむーりーとかゆってたけど、無理矢理ひっぺがした。
裸の付き合いっていうじゃない? いやこっちの世界では言わないかもだけど。
そしたらギンシュちゃん縮こまって裸で土下座してた。もう結構慣れたかと思ってたら、まだ我慢してたっぽい。
そのあとミレイがめっちゃ冷たい目をしててなんかこわかった。裸なのに。マッパなのに。
身分の違いって難しいなぁ。私が間に入らねば!
お風呂からの景色もサイコー! 夜景もそうだけど、もちろん夜景以外も。具体的には谷とか丘とか茂みとか。やっふー!
とゆーわけで三人で洗いっこした。楽しかった。
更にさらに、お風呂でちょっと絡んだりいちゃいちゃしたりして、お風呂あがってひとやすみー。ふぅ。
あーでもホントさっぱりしましたわ。やっぱ【クリーン】も便利だけど、【クリーン】だけだと駄目だね。
もう毎日ここでいいや私。今日から私はここの住人になるぞー!
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