1 / 1
追憶~言えなかった言葉~
しおりを挟む
追憶~言えなかったコトバ~
プロローグ
目の前に立っている人の名を、私は知らない。正確に言うと、思い出せないでいた。でも、この湧き上がってくる感情は何なのだろう。そっと、あの人に手を伸ばす……
「ねぇ、待って!」「待って!行かないで……○○!」
すると、彼は驚いた顔で振り向いた……今度こそ言おう。私の……
第1章 ~帰郷~
都会での就職が決まり、上京して早1年が経った。
今年の夏は、帰郷する事にした。地元の駅に着くと、母が笑顔で迎えに来てくれた。
実家へと帰る車中で、私はずっと外を眺めていた。
実家に到着し、荷物を自分の部屋へと運び終えて休憩していた。不意に玄関の戸が開く音がして、階段の壁越しから玄関先を覗いた。そこに立っていたのは、整った顔立ちの男性だった……
第2章 ~面影~
彼は、私の事に気が付いたのか、驚きながらもしかし嬉しそうに「久しぶりだね!!ずっと、逢いたかった」と笑って言った。私は、この男性が誰なのか覚えていない。その様子を見た母が男性に「もう遅いから、また明日来たら?」と言ってくれた。
翌日も我が家へ来て私の隣に座る。その人は、昔から私の事を知ってる様で私は終始ドキドキが止まらなかった。
彼は、家から持って来たと言うアルバムを私の前に見せてきた。そこに写っていたのは幼い時の私と彼に良く似た男の子だった。何処と無く面影が残ってはいたが、私は思い出せなかった。
第3章 ~蝋燭の光~
私が覚えているのは、暗闇の中でゆらゆらと揺れる蝋燭の光と泣いていた私の手を引いてくれた手の感触だけだった。その人の顔を思い出そうとすると倒れそうな位の目眩と頭痛に襲われる。母は「無理して思い出さなくても良い」と言ってくれたけど、私は思い出したくて…。
明日には、都会へ帰らなくてはならない。母の提案で地元の夏祭りへ行く事に、浴衣を着て久しぶりの夏祭りを楽しんでいた。提灯の灯りと賑やかなお囃子の音を聴きながら、また来年も帰ってきたいなと思った。
神社の境内で一休みしていると彼が隣に来た。「明日、帰るんだね。寂しくなるな。」私は、俯きながらも「仕事も有りますし、仕方ありません」と言った。
最終章 ~人魂~
花火が終わり帰ろうとした時、洞窟を見つけた。近くにあった案内板には、この洞窟の最深部で願い事をすると叶うと言う言い伝えがある。私は、最後の思い出にとその洞窟の中へと入った。
中はそれほど暗くなく、最深部へ近くに連れ、眩しくなっていった。
最深部は人が大勢入る大きさになっていて、皆洞窟のぽっかりと空いた空に浮かぶ月に向かい祈っていた。私も皆と同じく月に祈ろうとした時、誰に手を引かれた。その人は蝋燭を持ち、私の手を引いて元来た道を戻ろうとした瞬間、急な頭痛と目眩で私は倒れた。
私が目を覚ますと、彼は「大丈夫か?俺が誰だか分かるか?」と聴いてきた。
私は、「うん、分かるよ!やっと、逢えた」彼の事をはっきりと思い出した瞬間、私の身体から光が溢れ、私は全てのことを思い出した……
私は、去年の夏に通り魔にナイフで刺されて亡くなった事・大好きな彼への想いを…私はもう彼の隣には居れないのだと実感した。「悔しいなぁ…もっと一緒に居たかった…」少しずつ消えて行く私を彼はぎゅっと力いっぱいに抱き締めてくれた。「絶対、見つけるから!どこにいたって必ず見つける」その温かさと言葉に私は幸せを感じ、微笑みながらゆっくりと光へと消えた。
エピローグ
墓場の前に、男性が一人立っていた。手には、蝋燭を持ち霊園の中へと入る。花火を見る訳でも無く、ある墓石の前で立ち止まり、そこに書かれた名前を指で撫でていた。「必ず、お前を見つけるから……」そっとその言葉を呟くと彼は、来た道を戻って行くのでした。
プロローグ
目の前に立っている人の名を、私は知らない。正確に言うと、思い出せないでいた。でも、この湧き上がってくる感情は何なのだろう。そっと、あの人に手を伸ばす……
「ねぇ、待って!」「待って!行かないで……○○!」
すると、彼は驚いた顔で振り向いた……今度こそ言おう。私の……
第1章 ~帰郷~
都会での就職が決まり、上京して早1年が経った。
今年の夏は、帰郷する事にした。地元の駅に着くと、母が笑顔で迎えに来てくれた。
実家へと帰る車中で、私はずっと外を眺めていた。
実家に到着し、荷物を自分の部屋へと運び終えて休憩していた。不意に玄関の戸が開く音がして、階段の壁越しから玄関先を覗いた。そこに立っていたのは、整った顔立ちの男性だった……
第2章 ~面影~
彼は、私の事に気が付いたのか、驚きながらもしかし嬉しそうに「久しぶりだね!!ずっと、逢いたかった」と笑って言った。私は、この男性が誰なのか覚えていない。その様子を見た母が男性に「もう遅いから、また明日来たら?」と言ってくれた。
翌日も我が家へ来て私の隣に座る。その人は、昔から私の事を知ってる様で私は終始ドキドキが止まらなかった。
彼は、家から持って来たと言うアルバムを私の前に見せてきた。そこに写っていたのは幼い時の私と彼に良く似た男の子だった。何処と無く面影が残ってはいたが、私は思い出せなかった。
第3章 ~蝋燭の光~
私が覚えているのは、暗闇の中でゆらゆらと揺れる蝋燭の光と泣いていた私の手を引いてくれた手の感触だけだった。その人の顔を思い出そうとすると倒れそうな位の目眩と頭痛に襲われる。母は「無理して思い出さなくても良い」と言ってくれたけど、私は思い出したくて…。
明日には、都会へ帰らなくてはならない。母の提案で地元の夏祭りへ行く事に、浴衣を着て久しぶりの夏祭りを楽しんでいた。提灯の灯りと賑やかなお囃子の音を聴きながら、また来年も帰ってきたいなと思った。
神社の境内で一休みしていると彼が隣に来た。「明日、帰るんだね。寂しくなるな。」私は、俯きながらも「仕事も有りますし、仕方ありません」と言った。
最終章 ~人魂~
花火が終わり帰ろうとした時、洞窟を見つけた。近くにあった案内板には、この洞窟の最深部で願い事をすると叶うと言う言い伝えがある。私は、最後の思い出にとその洞窟の中へと入った。
中はそれほど暗くなく、最深部へ近くに連れ、眩しくなっていった。
最深部は人が大勢入る大きさになっていて、皆洞窟のぽっかりと空いた空に浮かぶ月に向かい祈っていた。私も皆と同じく月に祈ろうとした時、誰に手を引かれた。その人は蝋燭を持ち、私の手を引いて元来た道を戻ろうとした瞬間、急な頭痛と目眩で私は倒れた。
私が目を覚ますと、彼は「大丈夫か?俺が誰だか分かるか?」と聴いてきた。
私は、「うん、分かるよ!やっと、逢えた」彼の事をはっきりと思い出した瞬間、私の身体から光が溢れ、私は全てのことを思い出した……
私は、去年の夏に通り魔にナイフで刺されて亡くなった事・大好きな彼への想いを…私はもう彼の隣には居れないのだと実感した。「悔しいなぁ…もっと一緒に居たかった…」少しずつ消えて行く私を彼はぎゅっと力いっぱいに抱き締めてくれた。「絶対、見つけるから!どこにいたって必ず見つける」その温かさと言葉に私は幸せを感じ、微笑みながらゆっくりと光へと消えた。
エピローグ
墓場の前に、男性が一人立っていた。手には、蝋燭を持ち霊園の中へと入る。花火を見る訳でも無く、ある墓石の前で立ち止まり、そこに書かれた名前を指で撫でていた。「必ず、お前を見つけるから……」そっとその言葉を呟くと彼は、来た道を戻って行くのでした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
短編 跡継ぎを産めない原因は私だと決めつけられていましたが、子ができないのは夫の方でした
朝陽千早
恋愛
侯爵家に嫁いで三年。
子を授からないのは私のせいだと、夫や周囲から責められてきた。
だがある日、夫は使用人が子を身籠ったと告げ、「その子を跡継ぎとして育てろ」と言い出す。
――私は静かに調べた。
夫が知らないまま目を背けてきた“事実”を、ひとつずつ確かめて。
嘘も責任も押しつけられる人生に別れを告げて、私は自分の足で、新たな道を歩き出す。
私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。
いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。
「僕には想い合う相手いる!」
初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。
小説家になろうさまにも登録しています。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる