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第29話
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馬車の外でいったい何が起きたのでしょうか?
この時の私には外の様子は分からなかった。
聴こえてくるのは怒号と悲鳴・・・・護衛の兵士さん、御者のおじさんはどうなったのでしょうか? 無事だと良いのですが・・・・怖い・・・怖い・・・体の震えが止まらない・・・・・助けて・・・助けて・・・ニール様。
しばらくすると外の喧騒が止み、馬車の扉が開かれた。
「だれ? ニール様?」
扉が開かれそこから見える人物はニール様・・・ではなく黒いフードを被った怪しい人物・・・・そんな・・・護衛の兵士さんたちはどうなったの? 考えたくない想像が私を襲ってくる。
「どなたが乗っているかと思えば、これはこれは、ご高名な伯爵令嬢様ではありませんか。こんな場所でお会いできるとは運がいい」
「あなたは誰です? 兵士の方々はどうなったのですか?」
「兵士ならお疲れのようなので、そこらでおねんねしてるぜ!」
「そっ・・そんな・・・・」
「へへっ、お前を攫えば伯爵家から、たんまりと身代金をせしめることができそうだな。という訳でお前にはおとなしくついてきてもらおうか」
「わ、私を誘拐するつもりですか?」
「おうさ、そのとおりだ! おとなしくしてくれれば乱暴なことはしねえよ」
目の前の怪しい人物は、私を攫って身代金を取ろうと考えているらしい。婚礼前の麗しい娘が賊に誘拐される。
変な噂を立てられ婚約を破棄されたくない貴族は大金を支払う。
よくある話だが大貴族ほど体裁を気にするもの・・・事を大きくして賊に誘拐された娘というレッテルを貼られるよりも、秘密裏にお金で解決できるなら大金を払ってでもそっちの方を選ぶだろう。
だけど・・・もし身代金が途方もない金額だったら? 誘拐された娘が抵抗したら? 誘拐犯が約束を守らなかったら?
誘拐され酷いことをされたた娘の末路は悲惨なものだと聞かされたことがある・・・たとえ身体の傷は治すことできても、心の傷は癒すことはできない。
私の貧素な体を見て、この怪しい人たちが欲情するか分からない。
分かりたくもないけれど・・・もしそうなったとしたら・・・ニール様との婚約はどうなるの? 優しいニール様のことだから婚約を破棄されることはないでしょうけど、周囲の目は? 夕方の王都の往来、目撃者は多いと思う。私が誘拐されたという話はすぐに広がるだろう。
「へへへっ、おとなしくしてろよ!」
いやらしそうな男が馬車の中に入ってこようとする。
その男は無精ひげを生やしたいかにもモテなさそうな男、その男がいやらしい笑みを浮かべ手を伸ばしてくる。
「いやっ! 触らないで!」
この男は心理的に受け付けない。誘拐されそうってのもあるかも知れないけど、この男が怖くてたまらない。
こんな男たちに誘拐されたら、ニール様はどう思う? もし屈辱的なことをされたら? そんなことをされ生き恥を晒すくらいならいっそ・・・・いやいやいや。
「おとなしく観念しろ。その可愛らしい顔に傷を付けられたくないだろう?」
「ひっ!」
男の手には血の付いたナイフが握られており、その刃先が私の顔に向けられた。
怖い。誰か助けて! 助けてお父様! 助けてニール様!
「おい早くしろ! 逃げた女も捉えた今、こんな場所にいつまでもいる訳にはいかん。さっさとずらかるぞ!」
「ちっ! この俺に命令なんてしやがって、ムカつく野郎だ。お前が抵抗しようとするから俺が怒られちまったじゃないか!」
「いやっ! 近づかないで! 触らないで!」
「うるさい! さっさということ聞きやがれ! でないと酷い目に合わせるぞ!」
嘘だ。この男の言うことは信用できない。 おとなしくしても酷いことをされるのは間違いない。それよりも少しでも時間を稼げれば・・・・きっと誰かが助けに来てくれる。
今はそれを信じるしかない。
今、私にできること・・・時間稼ぎ・・・・少しでも時間を稼げればそれでいい。
私は祈るようにその力を使った。
「なっ! 何だこりゃあ! てめえ何をしやがった! うわっ!!」
この時の私には外の様子は分からなかった。
聴こえてくるのは怒号と悲鳴・・・・護衛の兵士さん、御者のおじさんはどうなったのでしょうか? 無事だと良いのですが・・・・怖い・・・怖い・・・体の震えが止まらない・・・・・助けて・・・助けて・・・ニール様。
しばらくすると外の喧騒が止み、馬車の扉が開かれた。
「だれ? ニール様?」
扉が開かれそこから見える人物はニール様・・・ではなく黒いフードを被った怪しい人物・・・・そんな・・・護衛の兵士さんたちはどうなったの? 考えたくない想像が私を襲ってくる。
「どなたが乗っているかと思えば、これはこれは、ご高名な伯爵令嬢様ではありませんか。こんな場所でお会いできるとは運がいい」
「あなたは誰です? 兵士の方々はどうなったのですか?」
「兵士ならお疲れのようなので、そこらでおねんねしてるぜ!」
「そっ・・そんな・・・・」
「へへっ、お前を攫えば伯爵家から、たんまりと身代金をせしめることができそうだな。という訳でお前にはおとなしくついてきてもらおうか」
「わ、私を誘拐するつもりですか?」
「おうさ、そのとおりだ! おとなしくしてくれれば乱暴なことはしねえよ」
目の前の怪しい人物は、私を攫って身代金を取ろうと考えているらしい。婚礼前の麗しい娘が賊に誘拐される。
変な噂を立てられ婚約を破棄されたくない貴族は大金を支払う。
よくある話だが大貴族ほど体裁を気にするもの・・・事を大きくして賊に誘拐された娘というレッテルを貼られるよりも、秘密裏にお金で解決できるなら大金を払ってでもそっちの方を選ぶだろう。
だけど・・・もし身代金が途方もない金額だったら? 誘拐された娘が抵抗したら? 誘拐犯が約束を守らなかったら?
誘拐され酷いことをされたた娘の末路は悲惨なものだと聞かされたことがある・・・たとえ身体の傷は治すことできても、心の傷は癒すことはできない。
私の貧素な体を見て、この怪しい人たちが欲情するか分からない。
分かりたくもないけれど・・・もしそうなったとしたら・・・ニール様との婚約はどうなるの? 優しいニール様のことだから婚約を破棄されることはないでしょうけど、周囲の目は? 夕方の王都の往来、目撃者は多いと思う。私が誘拐されたという話はすぐに広がるだろう。
「へへへっ、おとなしくしてろよ!」
いやらしそうな男が馬車の中に入ってこようとする。
その男は無精ひげを生やしたいかにもモテなさそうな男、その男がいやらしい笑みを浮かべ手を伸ばしてくる。
「いやっ! 触らないで!」
この男は心理的に受け付けない。誘拐されそうってのもあるかも知れないけど、この男が怖くてたまらない。
こんな男たちに誘拐されたら、ニール様はどう思う? もし屈辱的なことをされたら? そんなことをされ生き恥を晒すくらいならいっそ・・・・いやいやいや。
「おとなしく観念しろ。その可愛らしい顔に傷を付けられたくないだろう?」
「ひっ!」
男の手には血の付いたナイフが握られており、その刃先が私の顔に向けられた。
怖い。誰か助けて! 助けてお父様! 助けてニール様!
「おい早くしろ! 逃げた女も捉えた今、こんな場所にいつまでもいる訳にはいかん。さっさとずらかるぞ!」
「ちっ! この俺に命令なんてしやがって、ムカつく野郎だ。お前が抵抗しようとするから俺が怒られちまったじゃないか!」
「いやっ! 近づかないで! 触らないで!」
「うるさい! さっさということ聞きやがれ! でないと酷い目に合わせるぞ!」
嘘だ。この男の言うことは信用できない。 おとなしくしても酷いことをされるのは間違いない。それよりも少しでも時間を稼げれば・・・・きっと誰かが助けに来てくれる。
今はそれを信じるしかない。
今、私にできること・・・時間稼ぎ・・・・少しでも時間を稼げればそれでいい。
私は祈るようにその力を使った。
「なっ! 何だこりゃあ! てめえ何をしやがった! うわっ!!」
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