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第2章 魔術学園編
8話 明かされる過去
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「ロイズ……ナーダ……」
そして、そう告げた目の前の少女の名がアリス・ナーダ。同一の姓名ときたか。
おれとコイツは兄妹の関係なのか……? 銀髪と黒髪など相違点も多く、俺とアリスでは顔も特段似ていない。
俺は混乱した頭で続けざまに質問を繰り返した。
アリスは全て即答で答える。自信満々な顔つきからして嘘を言っているようには見えない。さらに、とんでも話が次々と彼女の口から飛び出してくる。
「兄? 魔王? 弟子?」
いづれのワードもピンとは来ないが、彼女の言葉を信じるならこのような事だ。
俺はロイズ・ナーダという名前で戦争孤児だったらしい。名付け親はイリス・ナーダ。海沿いの領地を治める魔王。
そして俺には一つ年上の兄がいるとのことだ。
俺と兄、目の前の少女アリス、加えてフィート・バンガルトと言う少年は、魔王イリスの元で弟子として育てられた。
「何か思い出した?」
顎に手を添えて考え込む俺を下方から、アリスはまん丸な目で覗き込む。
「悪いな。何も思い出せない」
「……そっか」
思い出せそうで思い出せないといった感じでもない。思考の迷路を手繰ろうにも、その入り口すら見つからない。視界ゼロの霧闇の中では動けない。
「それで、魔王イリスが殺されたのち、俺たちはバラバラになったんだよな?」
「そうよ。カイル…あんたの兄とフィートで意見が対立したのよ」
「なるほど。俺はカイルについていって、お前はフィートについていったということか」
「うん」
兄カイルは、師匠である魔王イリスの復讐を誓ったようだ。それについて行ったということは、俺も復讐に賛同した可能性がある。
無論、兄弟としてカイル側となった可能性も高いが。
「ねー、聞いてるの?」
「スマンスマン。なんだ?」
「だから何回も言ってるでしょ。私たちの邪魔をしにきたんじゃないのね、ってこよ?」
「お前たちの目的が何であるか知らないが、記憶も無いのにそんなことする訳ないだろ」
俺はただ、異世界生活をほのぼのと暮らしたいだけだ。加えてタームに心からの笑顔を取り戻させること。D組のクラスメイトを五人進級させること。当面はこの三点の目的しかない。
ロイズの頃の俺が、何の目的で単身ウィストニア王国の王都までやってきたのかは知らないが……。
「本当ね?」
俺の目をジーと見つめるアリス。
「本当だ」
念押しで答えた。
すると黒髪ロングのメイド少女はようやく笑顔となった。
「良かった~、あんたとフィートの闘いなんて、あたし見たくないもん」
フィート……か。
恐らく入学試験の時に会ったアイツの事だろう。栗色頭でクールぶっているいけすかねー野郎。恐ろしいほどの威圧感を放っていた。
「やっぱりアイツ強いのか?」
「当たり前じゃん……って、ロイズ記憶喪失だったね?」
「お前が知っている限り、どっちが強かった?」
答えいかんでは、おおいに修行に励まないといけなくなる。一見、平和な国だが何やらきな臭さも感じる。タームとほのぼの暮らすのにも、強さは絶対不可欠だ。
アリスは質問を飲み込んでから答えた。
「んー、あたしたちが一緒に暮らしていた三年前の話になるけど、勝敗記録は同点だったような?」
「……そうか。答えてくれてありがとうアリス」
「う、うん」
同点ときたか。ともなれば恐らく今戦えば──勝ち目は無さそうだ。魔力や魔素量をいったん横に置いておいたとして、体術、魔法知識、戦闘技術。これらは記憶が無い以上、もう一度鍛錬で積み上げる他ない。
最強などに興味はないが……。
「ねぇ……」
アリスは小さく呟いた。
彼女は手をモジモジとこまねいている。言葉に詰まっている様子だ。
「どうした? 俺の質問に答えてくれたんだから、言いたいことがあれば言えばいい。何でも答えるぞ?」
急にしおらしくなった少女の後押しをしてやった。
アリスはその言葉に決心したらしく、
「えーと、そのー……もしロイズが良かったらだけど、もう一度一緒に──」
アリスの話は、予期せぬ場外乱入者たちによって遮られた。
パンケーキ屋からぞろぞろとクラスメイトたちが出てくる。どうやら親睦会はお開きとなったようだ。
「悪い。続けてくれ」
「また今度にする……。じゃあね」
そう言ってアリスは俺の前から立ち去ったのだ。
そして、そう告げた目の前の少女の名がアリス・ナーダ。同一の姓名ときたか。
おれとコイツは兄妹の関係なのか……? 銀髪と黒髪など相違点も多く、俺とアリスでは顔も特段似ていない。
俺は混乱した頭で続けざまに質問を繰り返した。
アリスは全て即答で答える。自信満々な顔つきからして嘘を言っているようには見えない。さらに、とんでも話が次々と彼女の口から飛び出してくる。
「兄? 魔王? 弟子?」
いづれのワードもピンとは来ないが、彼女の言葉を信じるならこのような事だ。
俺はロイズ・ナーダという名前で戦争孤児だったらしい。名付け親はイリス・ナーダ。海沿いの領地を治める魔王。
そして俺には一つ年上の兄がいるとのことだ。
俺と兄、目の前の少女アリス、加えてフィート・バンガルトと言う少年は、魔王イリスの元で弟子として育てられた。
「何か思い出した?」
顎に手を添えて考え込む俺を下方から、アリスはまん丸な目で覗き込む。
「悪いな。何も思い出せない」
「……そっか」
思い出せそうで思い出せないといった感じでもない。思考の迷路を手繰ろうにも、その入り口すら見つからない。視界ゼロの霧闇の中では動けない。
「それで、魔王イリスが殺されたのち、俺たちはバラバラになったんだよな?」
「そうよ。カイル…あんたの兄とフィートで意見が対立したのよ」
「なるほど。俺はカイルについていって、お前はフィートについていったということか」
「うん」
兄カイルは、師匠である魔王イリスの復讐を誓ったようだ。それについて行ったということは、俺も復讐に賛同した可能性がある。
無論、兄弟としてカイル側となった可能性も高いが。
「ねー、聞いてるの?」
「スマンスマン。なんだ?」
「だから何回も言ってるでしょ。私たちの邪魔をしにきたんじゃないのね、ってこよ?」
「お前たちの目的が何であるか知らないが、記憶も無いのにそんなことする訳ないだろ」
俺はただ、異世界生活をほのぼのと暮らしたいだけだ。加えてタームに心からの笑顔を取り戻させること。D組のクラスメイトを五人進級させること。当面はこの三点の目的しかない。
ロイズの頃の俺が、何の目的で単身ウィストニア王国の王都までやってきたのかは知らないが……。
「本当ね?」
俺の目をジーと見つめるアリス。
「本当だ」
念押しで答えた。
すると黒髪ロングのメイド少女はようやく笑顔となった。
「良かった~、あんたとフィートの闘いなんて、あたし見たくないもん」
フィート……か。
恐らく入学試験の時に会ったアイツの事だろう。栗色頭でクールぶっているいけすかねー野郎。恐ろしいほどの威圧感を放っていた。
「やっぱりアイツ強いのか?」
「当たり前じゃん……って、ロイズ記憶喪失だったね?」
「お前が知っている限り、どっちが強かった?」
答えいかんでは、おおいに修行に励まないといけなくなる。一見、平和な国だが何やらきな臭さも感じる。タームとほのぼの暮らすのにも、強さは絶対不可欠だ。
アリスは質問を飲み込んでから答えた。
「んー、あたしたちが一緒に暮らしていた三年前の話になるけど、勝敗記録は同点だったような?」
「……そうか。答えてくれてありがとうアリス」
「う、うん」
同点ときたか。ともなれば恐らく今戦えば──勝ち目は無さそうだ。魔力や魔素量をいったん横に置いておいたとして、体術、魔法知識、戦闘技術。これらは記憶が無い以上、もう一度鍛錬で積み上げる他ない。
最強などに興味はないが……。
「ねぇ……」
アリスは小さく呟いた。
彼女は手をモジモジとこまねいている。言葉に詰まっている様子だ。
「どうした? 俺の質問に答えてくれたんだから、言いたいことがあれば言えばいい。何でも答えるぞ?」
急にしおらしくなった少女の後押しをしてやった。
アリスはその言葉に決心したらしく、
「えーと、そのー……もしロイズが良かったらだけど、もう一度一緒に──」
アリスの話は、予期せぬ場外乱入者たちによって遮られた。
パンケーキ屋からぞろぞろとクラスメイトたちが出てくる。どうやら親睦会はお開きとなったようだ。
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「また今度にする……。じゃあね」
そう言ってアリスは俺の前から立ち去ったのだ。
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