俺TUEEEの【転生魔術師】~ほのぼの暮らしながらも陰から仲間の復讐を支援します~

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第2章 魔術学園編

22話 当初から

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「……え!」
 
 マリアは驚きの声とともに、可憐で俊敏な動きをピタリととめた。

「そんな……全部躱していたはずなのに……?」

 マリアの的鏡は黒く変色している。
 そして────、

 俺はゆっくりとマリアの元に歩み寄り、背後から彼女の肩をポンっとついた。

「どうやら俺たちは退場のようだな」

 団長が退場となれば団員も同じく退場となるルール。
 団長と団員の的鏡は同調している。俺の的鏡も同じく黒々とくすんでいた。
 こちらへ振り向いた少女は悔しさからなのか、噛みしめた唇がほんのり赤みを帯びていた。

「あははは、これでまたD組の底辺たちを狩れたわね!」
「次のターゲットを探しに行くか」

 相手チームは見下したように嘲笑を交えながら、次のD組生徒エモノを狩るために目の前から立ち去った。

「おいっ、行くぞ」

 退場者となった俺はスタート地点に戻るべくマリアに声を掛ける。マリアは下を向いたまま動こうとしない。
 彼女は肩をプルプルと震わしている。負けず嫌いな性格も結構な事だが。

「聴こえてるのか? スタート地点に戻るぞ」
「────ないの?」
「なんだって?」
「悔しくないのって訊いているのよっ!」

 彼女は怒り心頭といった感じで俺の手を勢いよくはらいのけた。
 俺は平然と答える。「負けは負けだ」と。

「アイツら……D組以外のクラスは、最初から結託していたのよ!」

 マリアが言う通り、A組、B組、C組は同盟関係を結んでいたようだ。この特別試験を容易に切り抜けるためにD組のみを切り捨てると。

「こんなの鼻から勝ち目が無いじゃないの。卑怯だわ」
「……そうか?」
「何よ! あんなたはアイツらを肯定するの!」
「肯定するも何もルールに反していないからな」

 国同士の戦争を模したような試験内容。
 試験の核心は、いかに犠牲を最小限にして勝ち抜くかに尽きる。同盟関係を築くなど、念頭に置いておくべきことだ。

「でも……あなたはこれで退学なのよ!」

 事実、彼女の計算通りならそうなる。
 マリアは二つのスポット抑えて20Pを獲得している。狙撃退場によりチームポイントは奪われ、プライベートポイントを5P失ったが最終15P確保。試験クリアの基準は満たしている。

 一方、俺は土壇場でのスポット一つ確保と、一回の狙撃成功で15P確保していた事になる。退場によるマイナスを考慮すると、俺の所持するポイントは10P。
 退学を免れる規定に達していないことになる。

 マリアは唇を震わしながら視線を逸らした。
 責任を感じているのかもしれない。団長である自身が狙撃された事で──俺を退学に追い込んだと。

「やれやれ」

 俺は悔恨の情を抱いているだろう、らしくない彼女に水弾銃のトリガーに浮かぶ数値を視せた。

 トリガーの数値は────【チームポイント3P・プライベートポイント15P】

「上手くいったな」

 俺が笑いかけると、
 瞬前まで落ち込んだり、怒ったり、悔しがったりと忙しかった彼女はポカンと大きく口を開いたのだ。


 †
 †


「一体どうなってるのよ⁉︎」
「こらっ、唾を飛ばすなっ」

 団長マリアが得たクラスポイント2P。
 さらにマリアを狙撃した事によりプライベートポイントを5P。
 これを俺が回収せしめた。
 マリアが被弾した水弾────放った狙撃手は俺だ。

「……あなたが私を撃ったってこと?」
「A組とC組の混成チームに囲まれたあの状況を切り抜けるにはこれしか方法がなかったからな」

 無論、俺が本気でやれば彼らを全員退場にする事など容易かったのだが、それだと余りにも目立ち過ぎてしまう。

 俺は特別試験のルールを逆手に取ったのだ。
 ポイント増減条件にはこうあった。

【団長が狙撃された場合、クラスポイントは狙撃したチームに移る】と。

 つまり団長であるマリアが得たクラスポイント2Pは狙撃した俺へと移ったのだ。
 団長が退場となったことで、同じチームの団員である俺も退場となってしまったが、当初の目的は果たした。

 俺が掲げた特別試験の最低ライン──【俺を含めて5人分の試験クリア出来るポイントを確保したら直ぐに試験を離脱する】である。

 プライベートポイント15P有していれば、この試験では退学とならない。

 俺がマリアを撃ったことで、二人とも退場及び5Pマイナス。最終的に俺とマリアのプライベートポイントは同じく15P。
 加えて3人分の退学者を取り消せるクラスポイントを3P得ている。万一、ティアナを含めて他三人、俺が進級の手助けをすると決めている者たちが退学になっても取り消せるのだ。

 マリアが前線に出ることで稼いだ時間。俺が最後のスポットを抑えたところで、俺の当初からの目的は果たされていたのだ。
 
「悪かったなマリア。あのままだとお前のポイントも敵チームに奪われていたからな」
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