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第52話 病院にて
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「ふう~」
来栖を乗せたストレッチャーが手術室に入り、手術中の赤ランプが点灯するのを確認するなり、俺は近くの長椅子にへたり込んだ。
「とんだことになったな」
向かいの長椅子に座りながら、千弦が言った。
「まったくだぜ……」
「手を洗ってきたらどうだ?」
千弦に言われてじっと手を見る。
真っ赤だ。血でべっとりだ。
「そうする」
俺はため息を吐きながら立ち上がると、トイレを探した。
見るとトイレのサインは、すぐ近くにあった。
俺は歩き出し、トイレに向かった。
「へえー、そうなんだー」
ソルスの感情のこもっていない声が、病院のしんとした廊下に響き渡った。
誰としゃべってんだ?
俺が声のする方を見ると、ソルスが先ほど俺が放り投げた来栖の携帯電話を耳に当てていた。
「おい!まさかレベッカとまだ繋がっているのか!?」
俺が慌てて問いかけると、ソルスが呆けた顔でこくんとうなずいた。
「貸せ!」
俺は慌ててソルスに向かって右手を差し出した。
ソルスが嫌そうに顔をしかめる。
「携帯が血だらけになるよ」
俺は軽く舌打ちをすると、大して血で汚れていない左手を出した。
ソルスは仕方ないとばかりに携帯を差し出す。
俺はそれを受け取り、耳に当てた。
「おいレベッカ!お前が来栖に自殺するよう言ったのか?」
電話の向こうで、女の笑い声が聞こえた。
「あら、やっと名前を呼んでくれたのね。でも、またすぐお前って言ったわね」
「そんなことはどうだっていい。どうなんだ?お前が来栖に指示したのか?」
「さあ、知らないわ。わたしはなんにも知らない。ただ見ているだけ」
「嘘を吐け!お前が指示したに決まっている!」
「そんなことできるのかしら?自殺しろって誰かに言われて、はいわかりましたってすると思う?そんなの催眠術でも無理だと思うわよ」
「催眠術で無理なら、他のなんらかの方法でだ。違うか!」
「だから知らないってば。わたしは見ているだけだもの」
「来栖としゃべっただろ」
「世間話を少々」
そう言ってレベッカは呵々と笑った。
こいつは――普通じゃない。異常だ。それは間違いない。だが、わからない。こいつの正体は――
「お前、何者だ?」
俺の問いに、レベッカが急に黙り込んだ。
これは返答に窮しているのか。それとも迷っている?
しばらくしてレベッカがようやく答えた。
「貴方たちと、似た者同士かもね」
「何だと?」
似た者同士――俺たちと?異世界人や死神と似た者同士だと?
「また会いましょう。いつの日か、何処かで……ね」
レベッカは明るい声でそう言うと、電話を切った。
甲高い電子音が、俺の耳元で何度も鳴っている。
俺はあきらめて電話を下ろした。
そしてため息交じりに千弦に携帯を差し出す。
「切り方がわからない」
千弦はうなずきながら立ち上がり、俺の手から携帯を受け取ると、手慣れた様子で通話を切った。
「どういう会話だったんだ?」
千弦の問いに俺は被りを振った。
と、突然どたどたと複数人の大きな足音が、通路の向こうから聞こえてきた。
その正体はすぐにわかった。警察だ。騒ぎを聞きつけたのだろう、隣の警察署から私服の刑事と制服の警察官が六人ほどで駆けつけたようだった。
先頭のくたびれたスーツを着た男が、俺たちに向かって言う。
「ちょっと話をきかせてもらえるかな?」
来栖を乗せたストレッチャーが手術室に入り、手術中の赤ランプが点灯するのを確認するなり、俺は近くの長椅子にへたり込んだ。
「とんだことになったな」
向かいの長椅子に座りながら、千弦が言った。
「まったくだぜ……」
「手を洗ってきたらどうだ?」
千弦に言われてじっと手を見る。
真っ赤だ。血でべっとりだ。
「そうする」
俺はため息を吐きながら立ち上がると、トイレを探した。
見るとトイレのサインは、すぐ近くにあった。
俺は歩き出し、トイレに向かった。
「へえー、そうなんだー」
ソルスの感情のこもっていない声が、病院のしんとした廊下に響き渡った。
誰としゃべってんだ?
俺が声のする方を見ると、ソルスが先ほど俺が放り投げた来栖の携帯電話を耳に当てていた。
「おい!まさかレベッカとまだ繋がっているのか!?」
俺が慌てて問いかけると、ソルスが呆けた顔でこくんとうなずいた。
「貸せ!」
俺は慌ててソルスに向かって右手を差し出した。
ソルスが嫌そうに顔をしかめる。
「携帯が血だらけになるよ」
俺は軽く舌打ちをすると、大して血で汚れていない左手を出した。
ソルスは仕方ないとばかりに携帯を差し出す。
俺はそれを受け取り、耳に当てた。
「おいレベッカ!お前が来栖に自殺するよう言ったのか?」
電話の向こうで、女の笑い声が聞こえた。
「あら、やっと名前を呼んでくれたのね。でも、またすぐお前って言ったわね」
「そんなことはどうだっていい。どうなんだ?お前が来栖に指示したのか?」
「さあ、知らないわ。わたしはなんにも知らない。ただ見ているだけ」
「嘘を吐け!お前が指示したに決まっている!」
「そんなことできるのかしら?自殺しろって誰かに言われて、はいわかりましたってすると思う?そんなの催眠術でも無理だと思うわよ」
「催眠術で無理なら、他のなんらかの方法でだ。違うか!」
「だから知らないってば。わたしは見ているだけだもの」
「来栖としゃべっただろ」
「世間話を少々」
そう言ってレベッカは呵々と笑った。
こいつは――普通じゃない。異常だ。それは間違いない。だが、わからない。こいつの正体は――
「お前、何者だ?」
俺の問いに、レベッカが急に黙り込んだ。
これは返答に窮しているのか。それとも迷っている?
しばらくしてレベッカがようやく答えた。
「貴方たちと、似た者同士かもね」
「何だと?」
似た者同士――俺たちと?異世界人や死神と似た者同士だと?
「また会いましょう。いつの日か、何処かで……ね」
レベッカは明るい声でそう言うと、電話を切った。
甲高い電子音が、俺の耳元で何度も鳴っている。
俺はあきらめて電話を下ろした。
そしてため息交じりに千弦に携帯を差し出す。
「切り方がわからない」
千弦はうなずきながら立ち上がり、俺の手から携帯を受け取ると、手慣れた様子で通話を切った。
「どういう会話だったんだ?」
千弦の問いに俺は被りを振った。
と、突然どたどたと複数人の大きな足音が、通路の向こうから聞こえてきた。
その正体はすぐにわかった。警察だ。騒ぎを聞きつけたのだろう、隣の警察署から私服の刑事と制服の警察官が六人ほどで駆けつけたようだった。
先頭のくたびれたスーツを着た男が、俺たちに向かって言う。
「ちょっと話をきかせてもらえるかな?」
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