【完結】今日、君が傘を忘れた

天使の羽衣

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第三話 坂道

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 僕は宮坂の家がある坂道に差し掛かった。

 彼女もちょうど坂道を歩いていた。

 依然として彼女は傘を刺さずにびしょ濡れで歩いていた。

 なぜ、びしょ濡れで歩いて帰っているのか僕には理解ができなかった。

 僕は宮坂のいる場所まで走った。
 雨脚が強くなってくるが僕には関係ない。
 今は彼女ともっと喋りたいんだ。

 彼女のいる場所までつき、彼女の腕を掴んだ。

 「なんだー秋元くんか」
 
 振り返った宮坂は、少し驚いたように目を見開き、すぐに笑った。
 
「不審者に誘拐でもされるかと思ったよ」
 
 僕はどんな話をすればいいのか全くわからなかった。

 言葉が見つからずに口をモゴモゴしてると宮坂は言った。

「……君、思い出したんだね?昨日の紙切れのこと」

 僕は急に恥ずかしくなりうつむきながら頷いた。
 彼女は僕の手を掴んだ。


 「どう?ドキドキしてる?」


「もちろんしてるよ」

 僕はやっと言葉が出た。
 だが、彼女はニコッとした顔をしながら言った。

「恋人つなぎとかしちゃう?」

 僕のことをからかいながら言った。
 だが、僕はしてみたかった。

 彼女と恋人つなぎが――

「したい。僕だって君のこと好きなんだもん」

 僕の顔は自分ではわからない。
 だが、絶対に顔が真っ赤に染まっているに決まっている。
 彼女は少し恥ずかしくなりながらも……

「こう?」
 
 宮坂は、少し照れくさそうに指を絡めてきた。
 僕はその温もりに、言葉にならないくらい胸がいっぱいになった。
 
 人生で初めての恋人つなぎ。
 
 雨の中、僕はたしかに彼女の心に触れた気がした――。

 
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