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【異世界召喚ですか?】その5
ナトンが顔を上げ、手を挙げた。
「はい、ナトン君! ご質問ですか?」
「ヒロコ様は戦場を巡っている戦士なのですか?」
「ああ・・・セントウね、違います。銭湯というのはお金を払ってお風呂に入る施設のことです」
「お風呂?」
「お金を払って入る銭湯は、一度に10人以上が入れる大きなお風呂です。色んな種類のお風呂があって、各地の色々な銭湯を巡るのが私は好きなのです」
(まあ、本当は人数が基準じゃなくて、一人当たりの広さが基準なんだけどね)
黒縁メガネのイスマエルがまじめな顔をして挙手をした。
「はい、イスマエル君、どうぞ」
「色んな種類の風呂とは例えばどんな?」
「お湯が流れ落ちる滝があります」
『滝!?』
室内に不思議などよめきが起こる。
(ああ、御徒町の燕湯・・・もう行けないのかなぁ)
「他にはどのような?」
「蒸し風呂、ミルク風呂、七色風呂、電気、炭酸泉、ジェットバス、寝風呂、黒湯、どんぶり湯、薬湯、浴室の壁が水槽で魚が泳いでたり・・・楽しいんです。行くところ行くところ、みんな特色があって・・・」
ざわざわと男子達が興味を抱いたのか、跪きながらも前後左右で話し始めた。
「浴室の壁が水槽だと? なんて贅沢な」
「き・・・聞いたことないぞ?」
「いや、ヒロコ様の世界の話だからな」
金髪碧眼のマクシムが我慢しきれず、手を挙げた。
「はい、マクシム君! どうぞ」
「あの・・・ヒロコ様の世界では混浴が一般的なのですか?」
そこだよそこ! みたいな男子の盛り上がりが半端ない。
「いいえ、私の居た国では公共施設である銭湯は、すべて男女別に風呂場が設計されています」
(1791年「寛政の改革」で、ごわす・・・ま、山奥の無料の温泉は関係ないけど)
「ああ~、やっぱりぃ」というナトンの残念そうな溜め息が聞こえた。
(きゃぴキャラでもやはり、男の子だな!)
マテオGが、咳払いをし、全員に向かって声を出した。
「皆の者、聖女ヒロコ様はこちらの世界に来たばかりでお疲れである、手短に用件を伝えるのじゃ・・・マクシム、お主が言い出したのだぞ? ちゃんとヒロコ様に説明せえ」
マクシムは苦しそうな表情をして、跪いたまま視線を床に落とした。
「あの・・・マテオ様、皆さんに普通に立ち上がって貰えませんか?」
とりあえず、息苦しい感じの体勢を何とかして欲しかった。
「ヒロコ様・・・聖女様の前で頭を垂れるのは礼儀でして・・・」
「今は、公けの場ではないのでしょう? ずっとこのままの姿勢じゃ、みんな足が痺れちゃって、健康に悪いですよ」
「健康に悪い?」
マテオGが目を丸くした。
「・・・・・・わ、わかりました。ヒロコ様がそうおっしゃるなら・・・ホレ、皆の者、お許しが出たぞ! 立ち上がってヒロコ様に話しかけてよいぞ」
なんだか不思議そうな顔をして、男子達は体を起こし立ち上がった。
マテオGとナトン以外、全員背が高くて私は首が痛くなりそうだ。
(うん、やめればよかったかも)
「そう言えば、あの4人のGさんズ・・・じゃなくて召喚士様達はご体調いかがでした?」
「おおっ、一時間後にはすっかり回復して、通常の職務に戻れましたぞ!」
「良かったぁ」
あのGさんズ4人とも同時に倒れられたら、寝覚めが悪いと思っていたところだ。
「ヒロコ様は不思議ですな・・・自分を強制転移させた召喚士を心配するなど・・・」
「え、なんで? 目の前で苦しんでいる人がいるのに放っておけるワケないじゃない?」
「いや、そのう・・・」
マテオGの歯切れの悪い言葉に、マクシムが続けた。
「ヒロコ様、強制転移させた召喚士達を恨まないのですか?」
ハニーブロンドの長い前髪から覗く、澄んだ青空色の瞳が真っ直ぐと私を見つめた。
「え? だってそれが彼らの仕事だったんでしょう? きちんと業務を遂行した人を恨むのはお門違いだわ、大事なことは不愉快な思いをした、本当の原因追及でしょう」
ぽか~ん、と、全員が言葉を失った。
(あれ? なんか間違った事を言ったかな?)
「ぷはっ! あぁはっはっはっはっはっ!!」
豪快な笑い声をあげたのはソラルさまだった。
次に間入れず吹き出したのはナトンだ。
「ぷひぃっ! すっごいこの娘! 初めて会うタイプだわ!!」
ナトンが、右手でおなかを抑えつつ、左手でとりあえず口に手を当てて笑い声を上げ続けた。
「こりゃ! ナトン、失礼だぞ!?」
マクシムも顔をくしゃりとして笑い、イスマエルは口の端を歪めて我慢しているように見えた。
「え? え? え? 私って変?」
「そんなことは・・・」
マテオGが苦笑している。
「ああ、変かもしれないな?」
右側の斜め上から、低くて甘い声が降ってくる。
「ソラルさま、私、そんな変なこと言ったつもりは・・・」
「・・・・・・この聖女様は、幼くて、か弱くて、あわてんぼうで、優しくて、しかも我々の仕事に理解があるらしい」
(ソラルさまの少年のような笑顔サイコー! 腰が砕ける・・・)
イスマエルが、再び私の前に跪き、私の手の甲にそっとキスをした。
(えええええっ!)
「私は、ヒロコ様の“世話係”に選ばれて光栄です。あなたに忠誠を誓います。どんな時も、あなたのお力になりたいです」
「イスマエル、ヒロコは・・・“世話係”の意味がわかってないみたいだぞ?」
ソラルの言葉に、しゅん、と、イスマエルは眉尻を下げた。
「え、意味?」
マテオGが補足した。
「ヒロコ様、召喚した聖女の世話係とは・・・“この世界で一生あなたをお世話する任務”の事なのじゃ」
一生私を世話をするって事は、詰まる所、生涯の伴侶のようなものだ。
「そ・・・それを早く言ってよーーーーっ!」
(ああ、だから既婚者のソラルさまには“資格”がないって言ってたのね・・・)
イスマエルが召喚時に囁いた「チャンスはある」とは「離婚させれば良い」と言う意味だった。
(自分の父親を離婚させようとする息子ってどーよ?)
ナトンが次に私の前に立ち、右手を挙げて、親切にこう言った。
「あ、ちなみに世話係の候補はメイン含めて3人まで選べます。ってゆーか? ぶっちゃけぇ、ほぼ一生? 3人キープできるよ!」
そう言い終わると、すっと私の指先に、跪いたナトンが唇をつけた。
既に私の脳内は情報処理能力が追い付いていない。
「い、い、い、い、一生!? しかも3人!」
(重い! 重すぎる! 病んでる私にはそんな心の余裕はなーい!!)
はわわわわ、と、驚きすぎて震えが走っている私の前に、マクシムが駆け寄る。
「ずるいぞナトン! お前はまだヒロコ様の承認を頂いてないじゃないか!」
「しょ・・・承認って・・・」
「もう契約しちゃったもんね?」
耳元にシュッパっと、風がかすった。
「あ、本当だ」
ソラルさまが私の顔を覗いた。
「え? なに?」
「ヒロコ様! 俺は・・・西の宰相の聖女様より、あなたにお仕えしたいんです!」
背の高いマクシムは何故か屈んで、私の顔に金髪が触れる距離に顔を近づけた。
『あああああーーーっ!!』
マクシム以外の全員がドン引きして、一歩下がった。
耳をかまれた――――。
「ひゃうっ!」
変な声を出してしまった。
「貴様ぁ!! なんて事をっ」
インテリ眼鏡のイスマエルが、金髪美青年のマクシムを私から引きはがし、彼の胸倉を掴んだ。
今度は前髪にシュパっと何かが掠った。
「あ~あぁ・・・早すぎる展開じゃのぉ」
マテオGが難しい顔をしつつ、ため息をこぼした。
「え? なになに? なにが起きたの?」
「ヒロコ様・・・大変言いにくいのじゃが・・・」
「マテオG! 早く言って」
慌てすぎて、つい心の中のあだ名を言ってしまった。
「は~い、ヒロコ様、鏡みて?」
ナトンが室内にあった、銀細工の大きめの手鏡を私の顔の前に出した。
私の髪にいつの間にかメッシュが入っている。
鏡で自分の髪色を確認していたら、ナトンが補足した。
「右側の灰色のメッシュは、イスマエルの“忠誠の証”、その後ろの茶色のメッシュは僕の“敬愛の証”・・・で、問題の前髪に入っている金色のメッシュが・・・」
「え? これ魔法なの? 意味があるの?」
右側からソラルさまのショックな言葉が私を刺した。
「前髪のメッシュは“夫候補の証”だ」
「・・・え? なんですって? 夫候補って」
マクシムの胸倉を掴んだまま、イスマエルが私の方に顔を向けた。
「つまり、聖女ヒロコ様の婚約者はマクシムとなります・・・」
「う、うぎゃぁ~っ!! なんでじゃぁあぁあっ!?」
私の手から滑り落ちた銀の手鏡を、ソラルさまが長い腕で落下を防いだ。
さすが騎士! 動体視力もいいらしい。
「え~? そんなに嫌がらなくてもいいじゃん? 俺の婚約者、ヒ・ロ・コ!」
マクシムが余裕の笑みで、右手で口元を押さえて声を拡張した。
「イスマエル、仕方がない。やり方はどうであれ、決まり事じゃ。放してやれ“仮予約”であれ、マクシムはそれなりの権利を得た」
「くそ! いくらあちら側の聖女の世話係候補を断る手段とはいえ、強引すぎるぞ!」
イスマエルがスパン、と勢いよくマクシムの胸倉を放したので、ボタンの一つがどこかへと飛んでいった。
私の脳は既に情報過多になり、頭から煙が出るかと思えた。
「す・・・すみません、休ませて下さい・・・もう、今日のところは勘弁して・・・」
体が震え、指先が冷たくなっていく・・・何も考えたくない・・・夢なのに、なんでこんな体が重いのだろうか。
前に夢を見た時は、あんなに体が軽くて動き回れたのに、この夢の中でのだるさは、まるでいつもの鬱状態と変わらなかった。
(それとも私、本当に死んだのかな? おかしいな? じゃあこの夢は一体なんなのかな?)
「はい、ナトン君! ご質問ですか?」
「ヒロコ様は戦場を巡っている戦士なのですか?」
「ああ・・・セントウね、違います。銭湯というのはお金を払ってお風呂に入る施設のことです」
「お風呂?」
「お金を払って入る銭湯は、一度に10人以上が入れる大きなお風呂です。色んな種類のお風呂があって、各地の色々な銭湯を巡るのが私は好きなのです」
(まあ、本当は人数が基準じゃなくて、一人当たりの広さが基準なんだけどね)
黒縁メガネのイスマエルがまじめな顔をして挙手をした。
「はい、イスマエル君、どうぞ」
「色んな種類の風呂とは例えばどんな?」
「お湯が流れ落ちる滝があります」
『滝!?』
室内に不思議などよめきが起こる。
(ああ、御徒町の燕湯・・・もう行けないのかなぁ)
「他にはどのような?」
「蒸し風呂、ミルク風呂、七色風呂、電気、炭酸泉、ジェットバス、寝風呂、黒湯、どんぶり湯、薬湯、浴室の壁が水槽で魚が泳いでたり・・・楽しいんです。行くところ行くところ、みんな特色があって・・・」
ざわざわと男子達が興味を抱いたのか、跪きながらも前後左右で話し始めた。
「浴室の壁が水槽だと? なんて贅沢な」
「き・・・聞いたことないぞ?」
「いや、ヒロコ様の世界の話だからな」
金髪碧眼のマクシムが我慢しきれず、手を挙げた。
「はい、マクシム君! どうぞ」
「あの・・・ヒロコ様の世界では混浴が一般的なのですか?」
そこだよそこ! みたいな男子の盛り上がりが半端ない。
「いいえ、私の居た国では公共施設である銭湯は、すべて男女別に風呂場が設計されています」
(1791年「寛政の改革」で、ごわす・・・ま、山奥の無料の温泉は関係ないけど)
「ああ~、やっぱりぃ」というナトンの残念そうな溜め息が聞こえた。
(きゃぴキャラでもやはり、男の子だな!)
マテオGが、咳払いをし、全員に向かって声を出した。
「皆の者、聖女ヒロコ様はこちらの世界に来たばかりでお疲れである、手短に用件を伝えるのじゃ・・・マクシム、お主が言い出したのだぞ? ちゃんとヒロコ様に説明せえ」
マクシムは苦しそうな表情をして、跪いたまま視線を床に落とした。
「あの・・・マテオ様、皆さんに普通に立ち上がって貰えませんか?」
とりあえず、息苦しい感じの体勢を何とかして欲しかった。
「ヒロコ様・・・聖女様の前で頭を垂れるのは礼儀でして・・・」
「今は、公けの場ではないのでしょう? ずっとこのままの姿勢じゃ、みんな足が痺れちゃって、健康に悪いですよ」
「健康に悪い?」
マテオGが目を丸くした。
「・・・・・・わ、わかりました。ヒロコ様がそうおっしゃるなら・・・ホレ、皆の者、お許しが出たぞ! 立ち上がってヒロコ様に話しかけてよいぞ」
なんだか不思議そうな顔をして、男子達は体を起こし立ち上がった。
マテオGとナトン以外、全員背が高くて私は首が痛くなりそうだ。
(うん、やめればよかったかも)
「そう言えば、あの4人のGさんズ・・・じゃなくて召喚士様達はご体調いかがでした?」
「おおっ、一時間後にはすっかり回復して、通常の職務に戻れましたぞ!」
「良かったぁ」
あのGさんズ4人とも同時に倒れられたら、寝覚めが悪いと思っていたところだ。
「ヒロコ様は不思議ですな・・・自分を強制転移させた召喚士を心配するなど・・・」
「え、なんで? 目の前で苦しんでいる人がいるのに放っておけるワケないじゃない?」
「いや、そのう・・・」
マテオGの歯切れの悪い言葉に、マクシムが続けた。
「ヒロコ様、強制転移させた召喚士達を恨まないのですか?」
ハニーブロンドの長い前髪から覗く、澄んだ青空色の瞳が真っ直ぐと私を見つめた。
「え? だってそれが彼らの仕事だったんでしょう? きちんと業務を遂行した人を恨むのはお門違いだわ、大事なことは不愉快な思いをした、本当の原因追及でしょう」
ぽか~ん、と、全員が言葉を失った。
(あれ? なんか間違った事を言ったかな?)
「ぷはっ! あぁはっはっはっはっはっ!!」
豪快な笑い声をあげたのはソラルさまだった。
次に間入れず吹き出したのはナトンだ。
「ぷひぃっ! すっごいこの娘! 初めて会うタイプだわ!!」
ナトンが、右手でおなかを抑えつつ、左手でとりあえず口に手を当てて笑い声を上げ続けた。
「こりゃ! ナトン、失礼だぞ!?」
マクシムも顔をくしゃりとして笑い、イスマエルは口の端を歪めて我慢しているように見えた。
「え? え? え? 私って変?」
「そんなことは・・・」
マテオGが苦笑している。
「ああ、変かもしれないな?」
右側の斜め上から、低くて甘い声が降ってくる。
「ソラルさま、私、そんな変なこと言ったつもりは・・・」
「・・・・・・この聖女様は、幼くて、か弱くて、あわてんぼうで、優しくて、しかも我々の仕事に理解があるらしい」
(ソラルさまの少年のような笑顔サイコー! 腰が砕ける・・・)
イスマエルが、再び私の前に跪き、私の手の甲にそっとキスをした。
(えええええっ!)
「私は、ヒロコ様の“世話係”に選ばれて光栄です。あなたに忠誠を誓います。どんな時も、あなたのお力になりたいです」
「イスマエル、ヒロコは・・・“世話係”の意味がわかってないみたいだぞ?」
ソラルの言葉に、しゅん、と、イスマエルは眉尻を下げた。
「え、意味?」
マテオGが補足した。
「ヒロコ様、召喚した聖女の世話係とは・・・“この世界で一生あなたをお世話する任務”の事なのじゃ」
一生私を世話をするって事は、詰まる所、生涯の伴侶のようなものだ。
「そ・・・それを早く言ってよーーーーっ!」
(ああ、だから既婚者のソラルさまには“資格”がないって言ってたのね・・・)
イスマエルが召喚時に囁いた「チャンスはある」とは「離婚させれば良い」と言う意味だった。
(自分の父親を離婚させようとする息子ってどーよ?)
ナトンが次に私の前に立ち、右手を挙げて、親切にこう言った。
「あ、ちなみに世話係の候補はメイン含めて3人まで選べます。ってゆーか? ぶっちゃけぇ、ほぼ一生? 3人キープできるよ!」
そう言い終わると、すっと私の指先に、跪いたナトンが唇をつけた。
既に私の脳内は情報処理能力が追い付いていない。
「い、い、い、い、一生!? しかも3人!」
(重い! 重すぎる! 病んでる私にはそんな心の余裕はなーい!!)
はわわわわ、と、驚きすぎて震えが走っている私の前に、マクシムが駆け寄る。
「ずるいぞナトン! お前はまだヒロコ様の承認を頂いてないじゃないか!」
「しょ・・・承認って・・・」
「もう契約しちゃったもんね?」
耳元にシュッパっと、風がかすった。
「あ、本当だ」
ソラルさまが私の顔を覗いた。
「え? なに?」
「ヒロコ様! 俺は・・・西の宰相の聖女様より、あなたにお仕えしたいんです!」
背の高いマクシムは何故か屈んで、私の顔に金髪が触れる距離に顔を近づけた。
『あああああーーーっ!!』
マクシム以外の全員がドン引きして、一歩下がった。
耳をかまれた――――。
「ひゃうっ!」
変な声を出してしまった。
「貴様ぁ!! なんて事をっ」
インテリ眼鏡のイスマエルが、金髪美青年のマクシムを私から引きはがし、彼の胸倉を掴んだ。
今度は前髪にシュパっと何かが掠った。
「あ~あぁ・・・早すぎる展開じゃのぉ」
マテオGが難しい顔をしつつ、ため息をこぼした。
「え? なになに? なにが起きたの?」
「ヒロコ様・・・大変言いにくいのじゃが・・・」
「マテオG! 早く言って」
慌てすぎて、つい心の中のあだ名を言ってしまった。
「は~い、ヒロコ様、鏡みて?」
ナトンが室内にあった、銀細工の大きめの手鏡を私の顔の前に出した。
私の髪にいつの間にかメッシュが入っている。
鏡で自分の髪色を確認していたら、ナトンが補足した。
「右側の灰色のメッシュは、イスマエルの“忠誠の証”、その後ろの茶色のメッシュは僕の“敬愛の証”・・・で、問題の前髪に入っている金色のメッシュが・・・」
「え? これ魔法なの? 意味があるの?」
右側からソラルさまのショックな言葉が私を刺した。
「前髪のメッシュは“夫候補の証”だ」
「・・・え? なんですって? 夫候補って」
マクシムの胸倉を掴んだまま、イスマエルが私の方に顔を向けた。
「つまり、聖女ヒロコ様の婚約者はマクシムとなります・・・」
「う、うぎゃぁ~っ!! なんでじゃぁあぁあっ!?」
私の手から滑り落ちた銀の手鏡を、ソラルさまが長い腕で落下を防いだ。
さすが騎士! 動体視力もいいらしい。
「え~? そんなに嫌がらなくてもいいじゃん? 俺の婚約者、ヒ・ロ・コ!」
マクシムが余裕の笑みで、右手で口元を押さえて声を拡張した。
「イスマエル、仕方がない。やり方はどうであれ、決まり事じゃ。放してやれ“仮予約”であれ、マクシムはそれなりの権利を得た」
「くそ! いくらあちら側の聖女の世話係候補を断る手段とはいえ、強引すぎるぞ!」
イスマエルがスパン、と勢いよくマクシムの胸倉を放したので、ボタンの一つがどこかへと飛んでいった。
私の脳は既に情報過多になり、頭から煙が出るかと思えた。
「す・・・すみません、休ませて下さい・・・もう、今日のところは勘弁して・・・」
体が震え、指先が冷たくなっていく・・・何も考えたくない・・・夢なのに、なんでこんな体が重いのだろうか。
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